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流星学園  作者: 森宮寺ゆう
一学期『願いを叶えに』
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第15話 狂犬

(…明らかに身体に異変が起きていますね)

 由佐の全身の筋肉が目に見えて肥大化していく。そして、喉の奥から低い、トラのような唸り声を鳴らす。

「ヴヴヴヴ…ヴァウッ!!」

 由佐は顔を上げる。その目は野生そのもので、見ているだけで恐怖を感じてしまうほどだった。

「キャハハ、素晴らしい。その姿もまた美しいですよ」

 うりょむは賞賛の言葉を口に出しながらナイフを構えたと同時に、由佐も動き出す。

 由佐は飛びだしうりょむに向かって突っ込み、目にも留まらぬ速度でうりょむの横を通り過ぎていく。通り過ぎた数秒後、時間差でうりょむの腕から切り傷が浮かび上がる。

「ッ!」

 うりょむが由佐の並外れた身のこなしに驚いている暇なく、由佐は連撃を叩きこむ。

「ヴァゥ!」

 由佐はぐるぐるとうりょむの周りを回りながら両腕を振り回す。

 うりょむの腕に、脚に、顔に無数の引っ掻き傷ができる。由佐の行動に反応できず、ナイフで空を切る事しかできなかった。

「フフッ。強いですね」

 全身に数えきれないほどの傷を作っているというのに余裕そうなうりょむは両手のナイフを宙に投げる。

「私の異能を見せてあげますよ」

 うりょむはそう言うと、無を取り出し投げるそぶりを見せる。

「…?」

 由佐がコクリと首を傾げていると、由佐の肩に一本のナイフが突き刺さる。

「ヴゥヴッ!?」

不可視の凶器(アサシンナイフ)。私の異能は、触れた物体を数秒間だけ透過させる能力です。数秒間だけですが、幸い私は短期戦に向いていましてね、能力の時間はあまり気にならないのですが」

 うりょむが自身の能力説明を終えたと同時に由佐の両足に激痛が走る。由佐が痛みで唸り声をあげていると、脚に突き刺さったナイフが顕現する。さっきうりょむが宙に投げたナイフだろう。

「ヴヴゥッ」

 うりょむが新たなナイフを取り出し、攻撃に移ろうとすると同時に、由佐も刺さっているナイフを抜いて走り出す。

「アハッ。相変わらず速いですね。けど、私の力を見てしまった以上なかなか手を出せないでしょう」

 見えない攻撃を仕掛けてくる相手には手を出しづらい、うりょむはそう考えていた。しかし、由佐は止まることなくうりょむに突撃してくる。

(チッ。やはり私の読み通り…というか見れば分かります。理性を失っていますね。話が通じないとは厄介極まりないです)

 由佐は倒れるうりょむの上に乗り、うりょむの顔に大きなバッテン傷を作る。うりょむも負けじと反撃の一撃を放つ。

「ヴァアアア!」

 うりょむはナイフを由佐の頬に刺す。由佐が痛みで攻撃を中断した隙に乗っかる由佐を蹴り上げる。

「これはどうですか?見えぬ身体の狂気(ファントムアイ)

 うりょむの体が朧げになって消えていった。由佐は目の前から獲物が消えたことに驚き、周りをキョロキョロと見回す。

「ヴウゥ?」

 消えたうりょむに攻撃を当てようと、腕を振り回すが、やはり当たることは無かった。そのうえ透明になったうりょむからの攻撃を受けてしまう。

(フフフッ。こうなってしまえば私の勝ちです。野生の勘が働いていなくてよかったですよ。これなら本番でも確実に殺せます)

 心の中でほくそ笑むうりょむはナイフを構え直すと、由佐に近づいてトドメの一撃を放つ。

「ヴァァ!!」

 ナイフを振る瞬間に発生した、空を切る音でうりょむの位置を察知した由佐は体勢を低くすると、攻撃を避け、腕をガシッと掴む。

「くッ。さすがですね。しかし…」

 うりょむはスルリと腕を抜き、由佐から距離を取ろうとする。そんな中、上空から青い液体がダバーッと降り注ぎ、うりょむの体を染める。

「え…?」

 うりょむは唐突に降ってきた液体に目を向ける。由佐も同じように頭上をポカンと見上げる。そこには、青いペンキが大量に入った容器を持った転夜が木の上に立っていた。

「はは、私の事ノーマークで助かったよ」

「…何を、してる?何処から、ペンキを取り出し…?」

 うりょむが疑問を口にしている内に由佐が一足早く行動に移した。

(クッ、ペンキのせいで透過してようが透過してまいが位置がバレバレ…そしてこの距離では避けれない!)

 由佐は両手でうりょむの肩を掴むと、自身の口をうりょむの喉笛に近づける。

「ウヴヴァァオッ!!」

 由佐は躊躇なく喉を噛みちぎると、うりょむの体を振り回して大木に叩きつける。

「おお、攻撃方法エグゥ…」

 木の上から降りてきた転夜がぐったりと地面に座り込むうりょむを見てつぶやく。

「…ゥ。ああ。これでアタシの勝ちは確定した。大人しく話を聞いてくれない?」

 理性を失っていたハズの由佐は突然二足歩行でうりょむに近寄り、うりょむの視線に合わせるようにしゃがみ込む。

「うりょむちゃん。おねぇちゃんの事を知ってるの?」

 由佐の問いかけにうりょむはニヤリと笑みを浮かべる。

「フフッ。こんな喉をやられてる状態で話させますか。ま、いいでしょ。もちろん知ってますよ。えりかさんの事ですね?」

 その言葉を聞いた由佐は目の色を変え、うりょむの胸ぐらを掴み、声を荒げて詰め寄る。

「ねぇ!おねぇちゃんはどこに居るの!?教えてよ!」

「もちろん…知ってますよ。ただ、貴方は知らないほうがいいと思いますよ?」

「どういうこと!?知ってるってことは…おねぇちゃんは生きてるの!?」

「生きてる…とも言えますし、死んでいる…とも言えますね」

 由佐はたった一言で矛盾するうりょむをさらに問い詰める。

「それはどういう事?ねぇ!?」

 うりょむは余裕が無さそうな由佐を見て奇妙な笑い声を漏らす。

「イヒッ。このシュミレーションを終えた時にまた話しましょうか」

 うりょむはそう言いながら自身の手を顔の前まで持ってきて、見えない何かを握り潰す。

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