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流星学園  作者: 森宮寺ゆう
一学期『願いを叶えに』
12/15

第11話 選手交代

「ま、待ってくれっ!」

 拳銃をつきつけられた男は必死の命乞いを始める。

「安心しろ。別にここでは死ぬ訳じゃないらしいしな」

 男の言葉を適当に流しながら引き金に指をかける。

「違う!命乞いとかでは無いんだよ!名前を教えてくれ!いや、教えてください!」

「…はぁ?なんでだよ」

 あまりにも唐突に名前を訊かれた弦は、数秒間何を言っているのかが分からず、黙っていた。

「俺はあなたの強さに惹かれました!弟子にしてください」

「…なんのつもりで言ってんだ?」

 あまりにも突拍子のない言葉に弦がポカンとしていると男がそのまま話を続ける。

「俺が今まで沢山の人間と戦っていたけど、あんたほどのヤツは見たことがないんだ!」

 男は興奮した様子でだんだん早口になっていく。

「そ、そうか。俺は夢蔵弦だ」

「ありがとうございます。俺は神星夜人(じんせよと)と言います!」

「お、あぁ、えっと…よろしく」

 一通り叫び終えた星夜人が冷静になったようでつぶやくように言う。

「あ、っともう…殺していい、ですよ?」

 変な空気が流れる中、弦は拳銃を下げ、星夜人の手首をグイッと引っ張る。

「いや、いいよ。立て。なんか殺す気なくなったわ」

「ありがとうございます。師匠」

 立ち上がった星夜人は服についた砂ぼこりを払い、深い一礼をする。

「師匠をやめてくれ」

「いや、もう師匠は師匠なんで」

「…はぁ、そうか」

 これ以上の訂正は意味がないと判断した弦は諦めたようでそれを受け入れる。

「で、さっきから覗き見してんのは誰だ?出て来いよ」

 弦が拳銃を倒壊したビルの方へと向ける。

 ガレキの物陰がライフルを持った女性が姿を現す。

「七海…か。メイド服じゃないのか」

「初っ端それかよ。この空間に来たら制服に着替えさせられてた」

 制服姿の七海はガレキの向こう側に手を伸ばすと、七海に引っ張られた音音が顔をひょこっと出す。

「音音か。なんだ?」

 弦が首を傾げると、七海が微笑を浮かべながら弦に近づく。

「なんでもいいだろ、夢蔵。しっかし、道中でなに変なコントしてんだ?」

「コントじゃない。てか、二人はなんで隠れてたんだ?ケンカ売るタイミングでも探ってたのか?」

「そんなところかな」

 七海がそう言うと、驚いた表情で音音が背中をトンと小突く。

「七海さん。分かったると思いますけど、あまり暴れないでくださいよ?これは本気の戦場では無いので」

「大丈夫。少し殴り合いする程度だから」

「俺はまだやるとは言ってないぞ」

 心配そうにする音音にあどけない感じの笑顔見せながら、ライフルを地面に落とす。

「よーい。ドンだぜ」

 そんな叫び声と同時に七海の拳が眼前まで向かってくる。

「いきなりだな!この戦闘狂がっ!」

 弦はその攻撃をヒラリとかわすと、ピョンと後方へ下がる。

「ほれほれほれっ!」

 七海はすかさず、弦に接近して矢継ぎ早に攻撃を繰り出す。

(動きは機敏だが、一発一発は軽い)

 高速で降り注ぐ七海の打撃を耐えながら、反撃の隙をうかがう。

 しかし、七海の攻撃が止むことはなく、反撃ができそうでできないといった状況が続く。

「トッドメだ!」

 七海はポケットからナイフを取り出す。七海がポケットに手を入れた瞬間、弦は足払いをする。

「ッ!アブねぇ」

 倒れていく七海はナイフを持っていない方の手で体を支え、転倒を防ぐとその体勢のままナイフを振るう。

「その体勢から攻撃できんのかよ」

 追撃を与えようとした弦はナイフを恐れて後方に下がるが、立ち上がった七海が距離を詰められる。

 七海の動きに慣れてきたのか、さっきまで七海に押されていた弦が七海の腕を掴み動きを止める。

「お前、ナイフを持たない方が強いんじゃねぇのか?」

 七海の攻撃は当たれば致命傷になるだろうが、ナイフを持った瞬間、素手の時とは違い攻撃が大振りになっていた。

「隙をつくのが簡単だったぞ」

 弦はナイフを叩き落とし、上段蹴りを七海の頭にぶつける。

「イッタッ!」

 七海は一瞬耐えようとするが、即座に諦め、ゆっくりと倒れていく。

「あー、無理。私の負けだ。殺していいぞ」

 ここから立て直す気がない様子の七海が両手をあげる。

「しゃぁ!勝ちっ!さっすがですよ。師匠」

 固唾をのんでみていた星夜人がガッツポーズをしながら、弦の代わりに勝利宣言をする。

 弦は星夜人を横目にため息をつくと、トドメをさすために拳銃を七海の額にくっつける。しかし、なかなか引き金を引かない。

「…どーしたんだ?私の負けでいいぞ」

 弦の視界に一本の白い細い線が映る。弦の視線を追った七海も白い線の存在に気が付く。

「…糸?」

 弦がつぶやいた瞬間、白い糸が高速で動き出す。弦が動いたことを認識したころには既に目の前まで迫ってきていた。

「なっ!?師匠!?」

 糸が弦の顔を真っ二つに切り裂く。切り裂かれた弦の体に一瞬砂嵐のようなものが現れたと思えば、プツリとその場から消えた。

「…死んだのか?」

 七海がそうつぶやいた瞬間、体がバラバラになってしまった。その後に星夜人もついでとばかりに、あっけなくバラバラにされてしまった。

「…どちら様でしょうか」

 一人残った音音が周りに張り巡らされた糸に向かって話しかける。当たり前だが返事は返って来ない。

 そして、無数の糸が音音に襲いかかる。

「会話をする気はありませんか…」

 音音は人を簡単に切り裂くレベルの糸の上にのると、そのまま向かって来る糸をジャンプで避ける。

 さらに、襲いかかってくる糸を人差し指一本で引きちぎる。

「姿を出したらどうでしょうか?」

 糸を引きちぎった指からは血がポタリと出る程度で、ついさっき弦たちを斬り刻んだ糸と同じものとは思えない。

「そこに…いますよね?」

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