第二条 世界一熱い場所
馬路まんじ
「いやあ、馬路まんじと宮前葵。まあ何というか」
「大したこと?」
「なかったなあ」
案山子の問い掛けにチンポウは素直に応じる。しかし、そこだけで終わったらただの中傷だ。彼女らは毎回何かを叩く時も、絶対に何らかの理由を添える。そうしなければ人道から外れてしまうためだ。
「さて、何故そう思ったかだな。宮前葵の文章は硬すぎる。反して馬路まんじの文章は軟らかすぎる。この中庸でバランスを取っているのが」
「原」
「寛貴だ。何故原で区切るんだ。原だけだとよく分からんだろ。該当者多すぎて」
「いや、私達が原って言ったら」
「まあ確かに寛貴しかいないんだがな。それは一応理解しているが」
「でしょう?」
案山子は小さい胸を張る。チンポウは少し腹が立ったので
「手を伸ばせば届くんだ!」
「きゃっ」
と案山子の乳房を揉みしだく。
「いやあ、しかし案山子の空は楽しいなあ。この狭い会議室で私と案山子ちゃんだけだから、原寛貴の純然たる思考の海を泳ぎたい放題だ」
「水浴びも良いですが、さっきの話が途中ですよ、チンポウさん」
「ああ、そうだ。ええと、宮前葵のは硬すぎて退屈に感じたな。多分真面目なんだろう。逆に馬路まんじは普段何考えて生きているのか? と思うくらい馬鹿馬鹿しくふざけ倒していたな。自ら道化になりたがるタイプの創作者は貴重だ。プライドをゲームのチップにするというよりはプライドを売ってゲームソフト買っているような奴だな」
「つまりバギーみたいな?」
「いや、バギーのがまだ熱い部分がある。馬路にはアイツみたいな大志は抱けない。抱いても行動に移せない。アイツが創作界隈で四皇になどなれると思うか?」
「まあ難しいでしょうが、可能性としては」
「可能性の話をするなら、創作者全員があるぞ。炎炎に近いな。ヒロアカにまで達していない。ヒロアカは分かり易いが、炎炎は分かり辛いだろ? 馬路作品は炎炎以上に分かり辛い。分かり辛いを難解、イコール高度と捉える人もいるが、ドラゴンボールやデスノートなど、面白い作品ほど基本的な部分、骨組みが分かり易いんだ。しかし、ドラゴンボールやデスノートは別にレベルが低い訳ではないだろ。というか、それ以降ジャンプに傑作が産まれないから今ジャンプ泥船暗黒期に突入しているんだがな」
チンポウの熱弁に、案山子の身体も熱くなる。
「成る程。さすがチンポウさん。いやあ、チンポウさんの理論はいつ聞いても分かり易い!」
「ああ、私は面白い女だからな」
久し振りだったが如何だっただろうか。最後まで理解できたという人は恐らく頭が良い。頭が悪いと面白いものもつまらなく感じるものだ。しかし、つまらないものを書く人は頭が悪く、それをつまらないと理解できる人もまた頭が良いのだ。頭が良ければ理解の幅は広がるが、つまらないものはやはりつまらないのだから。
宮前葵