紅葉の消沈
次の更新は1か月後にぐらいになります。
「お前は何を考えている!」
書斎で、紅葉が説教を受けている。
「すいませんでした。」
説教をしているのは、紅葉の父、紅夜である。
「身内だったら良かったものの、他人だったら大問題になるかもしれないんだぞ。」
「・・・」
蒼生が病気なのに外に連れまわしてしまった。幸い夏カゼで、今は回復しているが、もっと酷い事になっていた可能性もある。
「なぜ、こんな事をした?」
「・・・」
「言い訳はないのか?」
"蒼生に財力を魅せつけて好かれたかった。"等と、言えるわけがない。
それに、自分でも馬鹿な事をしたと思う。勝負の事もあるが、男になって、変な焦燥感が心に生まれるようになった。そのせいもある。
「婚約者にプレゼントを、と思っただけです。」
「化粧品だったか。」
「何か?」
「お前は一度自分が良いと思えば、そこに突き進む癖がある。今回の事も、自分がそうしたいというのを相手に押し付けただけではないのか?」
「・・・」
「蒼生君の気持ちを考えたことは?」
「・・・」
そんなのいつも考えている。
「今回の事で、向こうから婚約を一旦、白紙に戻してはどうか?という申し出があった。」
「なっ!」
「厳密には美鈴さんが言っている。弟の蒼馬も解消に反対はしていない。」
『美鈴叔母さんが?』
「身内からも、今の時代には合わないから、これを機に廃止したらどうか?という声もある。」
『さんざん束縛しておいて、今さら自由などと・・』
「今回の事をおいておいても、もうしきたりの束縛は受けない。なら当人達の自由に任せるべきではないかとな。」
『勝手な言い分だ。』
「私としては、もう暫くは様子を見ようと考えていた。だが、紅葉が解消しても良いというなら、申し出を受けても良い。」
「それは・・・。」
「お前は婚約する時に反対していたな。」
「あの時とは状況が違います。」
「今は反対していないと?」
「そうです。」
「プレゼントを送るという事は、お前なりに思うところもあるのだろう。」
思うも何も、最初から私は蒼生ラブだ。
「蒼生はその事について、何と言っているのですか?」
怖いが聞かないといけない。蒼生は家の方針には逆らわない。恐らく、婚約に反対の立場だろう。
「蒼生君は反対だそうだ。」
蒼生と灰斗が並んでいる姿が頭をよぎる。生きたまま全身を焼かれるような苦しみだ。
「そうですか・・・」
分かっていたが、事実を突きつけられるとキツイ。口の中にすっぱいものが込み上げ、涙が出そうになる。
「珍しい事もあるものだ。」
「珍しい?」
「あの子が自分の意見をはっきり言うのがな。」
自分の将来の事だ、別に親に反発するわけでもないのだから、蒼生でもきちんと言うだろう。
「わかりました。」
「確認するが、お前も反対という事でいいのか?」
今の状況で、蒼生が反対している以上、解消は既定路線だろう。それで、蒼生が幸せになれるなら・・・。
ふと、勝負の事が頭をよぎる。
「3カ月だけ待ってください。」
「時間が必要という事か?」
「はい。」
「そうだな、結論を急ぐ必要もないだろう。」
私がいくら足掻いたって、無駄かもしれない。でも、足掻かなかったらもっと後悔するだろう。簡単にあきらめれるほど、私は聞き分けは良くない。
『3カ月だけ、私の我儘に』
紅葉が書斎から出ていく。
「しかし、蒼生君が婚約の解消に反対するとはなぁ。」
最後の呟きは、紅葉には聞こえていなかった。
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やる気が出ます。