表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/50

前言撤回 2

「私は、国内にあるいくつもの貴族の中のたかが1人だ。キラは異世界より召喚されし聖女。どちらが貴重かと言われたら後者に決まっている。より貴重な方を大事にするべきだ、反対意見があるなら言ってくれ」



 これは反対意見を本当に言っても許される流れだろうか?

 

 今まで会話からすると、リヒト様は理屈で物事を解釈している印象を受ける。つまり、私が彼の理屈を上回る返事をすれば納得してもらえる可能性が高いということ。


 ならば……と考え口を開く。



「客人は家主を蔑ろにしてまで寛ぐべきかと言われたら、私は違うと思います。特に私は行く当てもなくリヒト様に保護してもらったようなもの。こんな状態では私もリヒト様も寛げないですし、ここは私が違う部屋を自ら掃除して使うべきかと」



 うん。ごく当たり前の事を述べただけだが、これできっと納得してもらえる気がする!

 


「分かった。ならば私もこの部屋で一緒に寛ぐから、君も気にせずに寛ぐといい」

「なんでその結論になるのよ!?」



 まさかの展開に、思わず全力でツッコミを入れてしまった。

 


 しかしリヒト様は本当に寛ぐ気のようで、同じくソファーに腰掛ける。しかも場所は私の真横だ。

 そしてポケットから手帳とペンを出し、ソファーの前にあるテーブルに広げた。



「では始めようか。まず指は……5本ずつ。両手ともにあり異常なしと。爪の形は……うん、問題ない。次は腕だ、見せてくれ」

「……は?」



 私を見ながら何やら手帳にメモを取っている。この国の文字が読めないので何を書いているのかは分からないが、きっと今ぶつぶつと呟いた内容だろう。


 っていうか、次は腕? どういう事?

 


「何だその視線は。寛ぐといえば自分の好きな事をする……つまり、調べ物をする時間だろう」

「はあ……あの、それで何故私を観察することになるのか聞いても?」



 趣味と時間の使い方は人それぞれだからひとまず置いておくとして。


 ……何故私を観察し始めたのかが理解できない。


 

「君は異世界から来た聖女だ。言葉を交わすことに問題がないといえども、その身体構造が我々と同じなのかは調べないと分からない。だから、次は腕だ」



 思わず絶句した。



 価値観の近い素敵な人だと思っていたけど……ちょっと、いやかなり変な人だったかもしれない。

 スラリと背が高くて格好良くて真面目そうで……でもその外観からは想像もしなかった……とんでもない中身。

 


 黙ったまま固まっていると、横から伸びてきた腕に押されるような形で倒された。

 背中が柔らかなソファーに当たり、ほんの少しだけ体がバウンドする。そしてそんな私を覆うかのようにリヒト様の体が迫ってくるので、私の心臓までバウンド……いや、心臓は飛び跳ね続けている。



「目と髪の色は黒。耳も尖ってないな、妖精の類では無い、と。そして腕は……」

 


 押し倒されたまま髪や耳を触られ、腕を掴まれて服の袖が捲られる。


「ほくろがあるだけで、普通の腕か。きちんと2本あるし、色も肌色だ」

「あ、当たり前です! 私はムカデのような多足類じゃないんですよ!?」



 まさか私の腕が2本以上あるように見えていたわけでは無いだろうし、思わずツッコミを入れずにはいられなかった。

 


「タソクルイ? 何だその言葉は。私が分かるように説明を求む」

「足が沢山ある節足動物で」

「セッソクドウブツが分からない」

「……虫です」



 もう下手な事は言えない。これで無脊椎動物がどうとかいう説明をすると話が終わらなくなる。この世界で学術的な話はしては駄目だ。

 勉強が悪とされるこの国の一般人から偏見の目で見られるだけでなく、この伯爵様から地獄の果てまで追求されてしまう!

 


「手帳に書き残しておくから、後でどのような虫か詳しく説明するように。では続いて服を脱いで身体をチェックさせてもらおうか」


「……もう、いい加減にしてーッ!?」


いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ