表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/148

12.決戦の日

 翌日。上鳴(うわなき)は、また用事があると神凪(かなぎ)に告げて。ついでに今日が()()だと伝えると、渋々といった調子で了承してくれたので、早速あの男……戸破(ひばり)を探して尾行する。


 もちろん、今回は情報収集の為の尾行ではない。影に隠れて追いかける彼の右手には、白い鉄製の杖が握られていた。


 比良坂の道具を手にしたあの男を倒し、道具を取り返す。そして、こちらの落ち度で巻き込んでしまった『ファンタジー』な世界から引き剥がす。今日は神凪にも告げた通り、その決戦の日となるだろう。


 今日もまた、立入禁止のグラウンドへと向かうその男。躊躇なく、黒い空間へと足を踏み入れるとやはり、スッ――とその姿が消えていく。


 ……今頃、彼は()()()()()()()()()()()()


 それもそのはず。何故なら上鳴は、昨日――比良坂(ひらさか)から《虚無世界行き鉄杖(ニューディメンサー)》を受け取った後、試運転がてら道具を隠しているであろう空間へと入り、目に付く道具、その全てを回収しておいたからだ。


 だが、それで解決とはいかなかった。戸破が持っているであろう鉄杖や、銀色のレイピア、ハンドガンだったり、彼の知っている道具がいくつか見当たらなかったのだ。


 おそらく、普段使いしている道具はまた別の場所にでも隠しているのか、常に携帯しているのか。いずれにせよ、争いの発生しない理想的な解決には至らなかった。


 なので、ここであの男を追い詰め、残りの道具の場所を聞き出す。……そこまでしてやっと、この一件は解決となる。


「さて、そろそろ頃合いか」


 上鳴もまた、立入禁止を示す黄色と黒のテープを乗り越えて。自分と相手以外、他には誰もいないであろう戦場へと向かう覚悟を決めると、あの空間へと繋がる黒い物質に飛び込んだ。



 ***



 いつも通り、まだ試せていない道具の試用のために黒い空間へとやってきた戸破祐介(ひばり ゆうすけ)だったが、目の前に広がる光景へ疑問を抱いていた。


「……昨日まであったはずの道具が、ない?」


 有用と判断し、よく使う道具は、別の場所へとしまってあるのでそちらの方は無事であるが……問題はそこではない。


「つまり、僕以外にこの空間を見つけた人間がいる? まさか。こんな場所に飛び込もうとする奴がいてたまるか。僕のようにたまたま足を滑らせて落ちたとかならまだしも」


 今では当たり前のようにここへと入り浸っている彼でさえ、立入禁止となっているグラウンドに奇妙な落し物があって、つい気になって見に行った――なんてキッカケがなければ、この場所の存在を知る事さえなかっただろう。


「という事は、この場所の事を知ったうえで? チッ、僕とした事が。誰だか知らないが、尾行でもされていたのか。何せ、この学校には昔も今も敵しかいないんだ、もっと周囲に気を使っておくべきだったか……」


 と、そこまで考えたところで。彼の頭上から、突然確かな『衝撃』が落ちてくる。小柄な彼の身体が、その一撃によって虚空の空間を飛ばされて舞った。


 だん、だん、だんっ! と転がり倒れる彼に向けて、一人の男の声が放たれる。


「……この前は散々な目に遭わせてくれたようだけど、今回はそうはいかない。()()()()()()()()()()()()()ッ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ