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1.力とは人を、立場を変える

「僕さあ。今日、ゲーセン寄ろうと思ってんだけど。……分かってるよね?」

「ちっ、てンめええッ! 三軍のクソが調子に乗りやがっt――」

「おっと、僕に逆らってもいいのかな?」


 校則なんて知ったこっちゃない、それぞれ別の派手な髪色に染めた、体格の良い不良三人組。見るからにスクールカーストの頂点に君臨しているであろう、そんな集団のうちの一人、赤髪の男の怒声がピタリと止んだ。


 向かい合うのは、彼らとは何もかもが対照的な、小柄で弱々しい、根暗そうな男。彼らの怒声を止めたのもまさしく彼だった。


 人を見た目で判断してはいけないとは言うが、どこからどう見ても立場が逆転しているようにしか見えない。


 だが、その理由は驚くほどに単純。小柄な彼の右手には、白いハンドガンが握られていたからだった。


「……チッ、持ってけよ。クソが」


 三人が泣く泣くといった風に、財布から紙幣を取り出すと、やつ当たるように床に叩き付けてその場を去って行ってしまう。


 普通なら、あの見るからにチャチな外装をした白いハンドガンをひと目見ても、ただのオモチャか、ちょっと良い値段のするエアガンか何かだろうと思うはず。


 しかし、あの不良集団は知っている。あれは音速をも超えた銃弾――いわゆる『ソニックブーム』を引き起こせる、実弾を放てる本物の拳銃なんかよりも、さらに危険な武器である事を。


 あの白いハンドガンを彼が手にするまではやはり、あの集団と弱々しい少年、互いの立場は逆だった。日常的にカツアゲされていたのはスクールカースト底辺にいた彼の方だったはずだ。


 だが、いつの日か。彼はたまたま『力』を手に入れてしまった。その日から、彼と不良集団、その立場は逆転したのだった。


 彼は、不良集団が去り際に床へと投げ落としていったお金を拾い集めながら、ふつふつと黒い感情が湧き上がってくるかのように笑う。


「フッ、くくくくくくっ! 今まで散々僕の事をコケにしてくれたんだ、当然の報いだよ。とりあえずは散々奪われた金。そして最後には身も心も、何もかもを潰して、この僕を敵に回した事を後悔させてやる」


 彼が手にする白いハンドガン。それだけではない、他にも様々な力を持つ不思議な道具を手に入れた。


 手にしたきっかけは、ほんの些細な出来事で。しかし、その些細な出来事が、有象無象のさらに下、底辺で肩身の狭い思いで生きてきた彼の人生を変えたのだ。


 彼を変えた道具を見つめながら、彼は興奮した様子で口を開く。


「いい……いいね……、やっぱり『力』を持つ者が正義なんだよ、この世界は。道具があれば、僕だってこの世界の『主人公』なんだッ! へへ、はははははははハハハハハハハハ――ぶごおおおおおッ!?」


 道具を手にして、底辺から主人公へと成り上がった男。そんな彼の、高らかな笑い声を止めたのは――また別の誰かが放った拳だった。


 顔面を思いっきり殴り飛ばした後に、突如現れた一人の男は続けて。


「……()()()()()()()()()()()()?」

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