1.ある部の存続に危険信号
外もすっかり暖かくなり、四月。高校の入学式も終えて、あちこちで部活動の勧誘が始まった。
より多くの部員を獲得すべく、新入生の争奪戦で色々と大変な事になっているシーズンなのだが……一方、その争奪戦に参加していない。いや、参加する事さえ諦めてしまった部があるらしい。
「してして、蓬さん? このままじゃ新入生が誰ひとり入らずに、今年いっぱいでこの『オカルト研究部』の歴史に終止符を打ってしまうんですけどね?」
「……櫻。去年、全力で勧誘を頑張った結果、どうだっけ? ちなみに私は諦めた」
その結果は、今現在の部員が三年生二人だけという現状が物語っている。
「……ははっ、で、ですよねぇー。それに、部活説明会の時だって、ウチらの話を真面目に聞いてる人、ほとんどいなかった気がするし」
しまいには今年の部活動説明会。一応二人も前に出て、簡単な紹介をしたのだが……『錬金術』『魔法少女』という単語を出した途端、会場がざわざわとしだして、まるでお笑いでもしているかのようなノリになってしまったのが記憶に新しい。
つまるところ、大失敗に終わってしまったのだった。説明会というスタートダッシュを切るチャンスを棒に振ってしまった以上は、もう新入部員には期待できないだろう。
「ま、蓬がムリ言って立ち上げた部活だし、蓬がいいって言うならウチもいいんだけどさ。でも、いざこの部が無くなっちゃうと思うと、ちょっと寂しいなー」
「その気持ちは分からなくもないけど。でも、錬金術とか言っても誰も信じないで目もくれないし。櫻が魔法少女に変身しても、ただのコスプレにしか見えないし」
「うぐっ、みんなに送られた痛々しい視線を思い出したら、お、お腹が痛くなってきたっ……」
オカルト研究部の部員二名は共に高校三年生。彼女らが卒業するまで、誰もこの部に入らなければ、自動的にこの部は廃部となってしまうのだ。
誰もいないので当然ではあるのだが、代々とその歴史が続いていく事もなく、学校の歴史の中にひっそりと埋もれていくだけというのは、やっぱりちょっと寂しいなとも思ってしまう。
「まあ、仕方ないよ。錬金術とか魔法少女とか、一体誰が信じるんだって話」
「そうそう。ウチらみたいな」
言いかけた、その時だった。
確かに、この部室の扉をノックする音が響いた事を二人は絶対に聞き逃さない。直後、部室の扉はガラリと開かれる。
「し、失礼しますっ! ここに錬金術師がいるって聞いて来たのですが……」
まるで獲物を前にした獣のように、二人はせっかくやってきた新入部員候補を逃さまいと、マシンガンのようにその口を開く。
「キミ、もしかしてこの部が気になって!? はいこれ、入部届! 名前書くだけでいいから、ね? ああ、ペンがないならウチの貸すからっ!」
「私がその、錬金術師だけど……どう? 調合ならいくらでも見せてあげるし、作ってほしい物があればいくらでも作るけど、入部してみないかい?」
部の未来を憂う魔法少女と、諦めたと言いつつも心の奥底では新入部員を諦めきれていなかった錬金術師。インパクト抜群な二人の猛攻を直に受けた、その新入部員候補は――。
「ひっ、ひいいいいいいいっっ!?」
あまりにグイグイ来る二人に対して、ただでさえ慣れない環境で緊張していて、しかも人見知りな一面もあるせいか、その新入生はつい大声を上げながら全力ダッシュで逃げ出してしまうのだった。
「あ、ちょっ、に、逃げないでええぇぇっ!!」
「や、やりすぎた……」
久しぶりどころか、初めて興味を持ってくれた新入生が現れて、ついテンションが上がってしまったのだが――この部が廃部の危機に瀕している原因、その一端がこのインパクト抜群な二人であることは今更言うまでもないだろう。




