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2.空港での再会

(よもぎ)先輩、(さくら)先輩っ!」

「皆様、お久しぶりですわね?」


 隠祇(おぎ)島の空港の中で、飛行機から降りてきた二人を出迎えたのは――黒髪ショートに様々な装飾が施されたローブを纏う女性と、金髪金眼と長いツインテールが特徴の、膝丈まであるコートを羽織った女性だった。


「おお、(ふう)にセリッサ。元気にしてたかい?」

「久しぶりーっ! セリッサは三年前にここで会ったきりだし、楓も旅に出てからは一度も会ってなかったっけ……」

「ええ、ワタクシは定期的にここへと通っておりましたが……お二人に会える機会がなく、心配しておりましたの」

「ま、アプリで色々やり取りはしてたし……ね?」

「実際にお会いするのと、メッセージや電話でのやり取りは別物ですから」


 それはそう、と、久々の電波越しではない再会に会話を弾ませる。


「というか、もっと心配なのは楓だよ。二年近く、ずっと誰とも会わずに旅を続けてたんでしょ?」

「え? まあ……でも、間倉(まくら)さんよりはマシだよ。スマホでいつでもやり取りできるんだし……」

「人を棚にあげて――と言いたい所だけど、あの人は本当に……、一方的に手紙を送り付けてくるだけだからなあ。住所不定だから返事もできない癖に、頑なにガラケーすら持たないし」


 それに比べれば、時々音信不通になるもののメッセージアプリと電話で相互のやり取りが出来る比良坂の方が幾分かはマシだろう、と七枝(ななえ)は納得させられそうになったが――隣の許斐(このみ)が口を出す。


「それでもウチはまだ反対なんだよ? 女の子一人で世界を旅する、しかもこのご時世になんて、あまりに危なかっかしいし……」

「まあ、わたしも旅を続けるうえで成長してる……はず……だから……」


 と、まるでお母さんのような過保護っぷりを披露する許斐だったが、それも仕方のない事だろう。


 そう。比良坂は高校卒業後、大先輩の錬金術師、間倉魅能(まくら みのう)に憧れて、彼女もまた一人で世界を旅して周るようになったのだ。


 間倉はもう、出会った時からそういう人だったのでともかくとして……比良坂はといえば、元々ただの常識人(注:オカルト研究部比)だ。


 それに、時代もよろしくない。世界の身近な所に潜んでいた『ファンタジー』を受け入れる選択をした日本、アメリカといった国々ならまだしも、その他の国ではかつてヨーロッパで起こった『魔女狩り』のような風潮になっていた。


 端的に言えば、一般人とファンタジーの対立だ。


 一般人からのファンタジーに対する第一印象が()()()()なのだから、ある程度は仕方のない事なのだろうが……今後数十年はこういった流れが収まる事はないだろうと言われている。


 故に、今の時代をあちこち歩いて回るのはかなり危険ではあるのだが、そこは比良坂の常識外れな錬金術とか色々で上手くやっているのであろうことは、二年もそんな生活を続けて五体満足で、ここに現れたことが証明していた。


「ところで、間倉先生は? てっきり一緒じゃないかと思ってたけど」

「それが、この島にいるかどうかも分からなくて……。招待はされているはずなので、先に一人でお城の方に向かっているのかもしれないですけどね」

「そっか。本当に、あの人は……」


 つくづく、連絡手段くらい用意してくれと嘆きたくなるが、それが間倉魅能という女性なのだから仕方がないと自分に納得させておく。


「それじゃ、ウチらはウチらで、城の方に向かっちゃおっか?」

「そうですわね。ワタクシの力で探そうと思えば探せるでしょうけど、いくら間倉さんであっても、こんな大事な日をすっぽかしたり、遅刻するような人ではないでしょうから」


 過去を視られる探偵が、本気で血眼になって探しさえすれば、どうにか見つけられるとは思うが……セリッサの言う通り、そうはしなくともいずれ会えるだろう。


 四人は空港を出て、目的地である隠祇島の中心部にそびえ立つ『城』へと向かい始めた。

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