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16.天庭からの帰還

 上鳴(うわなき)神凪(かなぎ)の二人は、階段を一段ずつ丁寧に降りている暇もなく、そのまま地上に向けて飛び立った。


 そのついでに、神凪は《天庭》へと続く階段を一発ぶん殴り、バラバラに崩す。


 神凪の背中から生えた、真紅色の翼で勢いを殺しながらも何とか元の世界の地上へと降り立った二人は――。


「……逃げ切った、かしら」

「だといいけど。麗音(れおん)が階段も壊してくれたし、こっちの世界にまで追ってこないと信じたいけど」


 上鳴と神凪は、互いに顔を見合わせてひとまず安堵する。依然として、《神の子》が暴れてはいるが――少なくとも、レクトーラとかいう天使を相手にするよりはずっとマシだ。


御削(みそぐ)くん、神凪さん! ……その、結果は……?」


 そんな二人の元へ、錬金術師の少女――比良坂楓(ひらさか ふう)が駆け寄ってくる。

 

「《天地導管(ネヴェンゲート)》なら、御削がちゃんと壊してくれたわよ」

「ただ、せっかく作ってくれた《堕天の鎌(ベンテローダー)》を向こうに置いてきてしまって……ごめん」


 できることなら、七枝(ななえ)と比良坂、堕天使が協力して作ってくれたあの鎌も一緒に持ち帰りたかったが……レクトーラを相手にしながら天界に繋がる門を壊しつつ、この世界まで戻ってくるにはあの方法しか思いつかなかったのだ。


「ううん、二人とも無事に戻ってきただけで十分だから。それに、《天地導管》を壊せたなら、あの鎌ももう用済みだし……」

 

 とは言うが、せっかくの道具を……という気持ちは晴れない。幸い、あの鎌に課せられた最大の役目を果たす瞬間は確かに、彼の目で見届けたのだが。


「でも、これで《神の子》が倒せるようになったってこと……だよね?」

「そうね。あの堕天使が話した通りに事が進めば、だけど」


 あの金色は、天界から生命力、破壊力などを必要な分だけ供給している。その総量は無尽蔵で、どれだけダメージを与えようと即座に回復されてしまうし、どれだけ物を壊そうとまた次の対象を破壊し始める。


 だが、その供給源を断った今なら、無敵――厳密には即時即効の回復だが――でもなければ、破壊力も落ちるはず。


 この騒動の収束も、あとは時間の問題。……そう思った矢先だった。


 ……ググググググググググググググググググググググググググゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!


 静かに、それでいて力強い揺れが、この世界に走る。


「な、なに……っ!?」

「地震か? いや」


 地震かとも思ったが、違う。地震大国である日本に住む、上鳴の感覚がそれを否定した。揺れているのは地面ではなく――。


()()()()()()()()()()()()!?」


 次第に揺れは強くなっていき、最後に。――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!! と雷にも似た、しかし大きさは比にならない激しい音と共に。


 一面に広がる青空の一部が、文字通り裂けたのだった。


 裂け目から、神々しい光を放ちながら降りてきたのは、上鳴と神凪は予想しつつも、しかし信じたくはない。深青のショートヘアに、中性的な見た目をした――レクトーラ・フィオール・ネーベラインという天使の姿だった。

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