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14.天庭に落ちる雷撃

 螺旋階段を上がり続けて、やがて雲の中を突っ切って。


 それからも果てしない高さまで伸びる階段を上がりきったその先には、巨大な球状のカプセルに、荘厳な大地の一部を閉じ込めた――そんな場所へと繋がっていた。


 地球上にはもうどこを探しても残っていないであろう、まだ一切人の手が入っていない、自然だけで構成された草原――その一角を切り取ったようなその場所で、上鳴(うわなき)神凪(かなぎ)の二人は。


「ここが《天庭》かしら? 素敵な場所だとは思うけど……状況が状況だし、ちゃっちゃと終わらせないと」

「そうだな。《天地導管(ネヴェンゲート)》とやらをこの鎌で壊して、元の世界に帰るだけの簡単なお仕事だけど」


 急ぎでなければ、ここに椅子とテーブルを持ってきて、コーヒーや紅茶でも嗜んだらお洒落で、二人の会話もきっと弾むだろうが……。


 この《天庭》に来た理由は彼の言う通り、天界との繋がりを断ち切り、金色の破壊者たちの無尽蔵な力の供給源を潰すこと。


「あっ、御削(みそぐ)! あれじゃない?」


 神凪が指差した方向には、西洋のお城にでも置いてありそうな、金属と宝石で豪勢に彩られた姿見。


 近付いて見ると、鏡にはどこか、別の世界が映し出されている。……恐らくは天界、だろう。他にそれらしい物は見当たらない。


「こいつをぶっ壊しちまえば、全部解決――とはいかないにせよ、解決に大きく近付けるんだよな」

「ええ。さ、御削。ひと思いに壊しちゃいなさい!」


 言われなくとも、といった勢いで。上鳴は、右手で握る《堕天の鎌(ベンテローダー)》に、全身全霊の力を込めて一撃、天界の入口に続くその姿見へと向けて振るう。


 鎌を握る右手に、何やら硬い感触が走る。最初は《天地導管》を切り裂こうとした反動だろう、そう思った。


「……御削、避けてっ!」


 神凪に言われるがまま、後ろへ一步下がった――その刹那。


 ――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!


 轟音と共に、さっきまで上鳴が立っていた場所も、《天地導管》をも巻き込んだ、赤紫色の雷撃が降り注ぐ。


 雷撃が降り止み、そこに立っていたのは――深海のような深い青のショートヘアに、体型や顔立ちからは男女どちらかの判断が付かない中性的な見た目。


 白いスーツのようなフォーマルな服装に身を包み、その背中からはやはりと言うべきか……大きく翼が広げられていた。


「これは『ツァトエル』の。確かにこれならば、《天地導管》が壊されてもおかしくはないですが……確かにあの優秀だった彼が噛んでいるとはいえ、人の手でこれ程のモノを生み出してしまうとは興味深い」


 淡々と言葉を続ける中性的な天使は、その声に感情など一切こもらない、あまりの無機質さに二人は不気味さを覚えつつも。


「……アンタも天使、よね? 大方、アタシたちが天界との繋がりを壊そうって知って、慌てて駆けつけたんだろうけど」

「ともかく、俺たちの邪魔をしようってなら、容赦はしない」


 だが、対する中性的な天使の返答は、予想の正反対の答えだった。


「ご安心を。こちらも、ここまで不安定な世界を『神族化』しようとは既に考えていません。貴方がたの世界との繋がりはあまりに危険であり、断とうと考えるのはこちらも同じです」


 言葉通りに意味を受け取るならば――目の前の天使も、二人と目的は同じ――なのだろうか?

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