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10.隠祇島での翌日

 客人用なのか予備の布団はあったが、流石に五人も迎えられる用意などしているはずもなく、二つの布団と比良坂が念のために持ってきていた寝袋を使って眠りにつき。


 なんだかんだで夜が明けて、翌日。


 布団を片付けるところから始まり、朝食をとって各々シャワーやハミガキといった朝のあれこれを済ませて、ほんのひと息つきながらも――セリッサの隠れ家を燃やした犯人を突き止めに行くべく、今日の予定を立てていたのだが。


「じゃあ、まずはセリッサさんの家に向かって、昨日、魔力について話を聞いてから改めて何かしら見えるようになったかを確認する。それで駄目なら、幸いここはファンタジーの集まる街なんだし、さらに聞き込みを続ける。……という方針で良いかな」


 七枝(ななえ)の言葉に、一同肯定の返事をする。……ただ一人を除いて。


「……セリッサさん、大丈夫かい? ぼーっとしているようだけど」

「……えっ? ああ、だ、大丈夫ですわよ?」


 ハッとした彼女が、慌ててそう返すが――横から、セリッサのおでこに触れる手があった。


「……やっぱり熱があるみたい。うん、今日はゆっくり休まないとだね」


 拒否する間もなくセリッサへと触れた魔法少女、許斐(このみ)は、その手に伝わる確かな熱を感じながらも言う。だが、そんな彼女は多少無理な笑顔を作りながら。


「へ? いえ、休んでいる暇なんてありませんわ。それに、この程度の風邪、ワタクシにはどうってことありませんから!」


 と、強がっている彼女の姿が、どこからどう見ても辛そうであった。


「……流石にこの状態で歩き回るなんて、私とて見過ごせないんだけど……」


 仮に逆の立場であれば、一人で勝手に行ってしまいそうな間倉でさえもこう言っている。しかし、セリッサはさらに人一倍、自分を曲げることない――そんな人間だ。


「いえ、誰が何と言おうと行きますわよっ! せっかく真実に近づく手がかりが見つかろうとしているのです、このまま黙って休んでいるなんて、できるハズが――」


 そう言うセリッサの言葉が急に止まる。その直後だった。


 ――ドシンッ! と鈍い音を立てて――その場で彼女が意識を失い、倒れてしまった。


「ちょっ、セリッサさん!?」

「とりあえず急いで病院に連れて行かないと。間倉先生、病院の場所は……」

「診療所なら知っているわよ。私も一回、お腹を壊したときお世話になったんだけど、凄腕の『治癒術師』がいるから、下手な病院よりは安心できると思うけれど……」


 身近にそんな診療所があるなんて、流石はファンタジーという存在が集まる街だなあと関心しながらも、いつの間にか魔法少女姿へと変身していた許斐が、倒れたセリッサを軽々と抱きかかえて。


 救急車を呼ぶという発想に至らないのは、竜の翼や魔法で空を飛んだり、錬金術の道具やらで常人よりも速く移動ができてしまうが故のご愛嬌というものだろう。


「よし、行こう。間倉さん、案内をお願い!」

「ええ、分かったわぁ!」


 間倉の案内で、一同は急いで治癒術師がいるという診療所へと向かう。

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