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2.名探偵との出会い

「ええ、ええ。やっと食い付いてきてくれましたね? 皆さんのご想像通り、ワタクシ、過去が視えるのですよ。……まあ、そう何でもかんでも視えるような、便利なシロモノではありませんけどね」

「……というと?」

「先ほども言いましたが、触れられる物や人物、場所の過去しか視られないうえに、その物の過去に映った中で、ワタクシが知らない物は黒い影となって映ってしまいます。せいぜい形、大きさ程度しか視ることができないのですよ」


 金髪ツインテールの探偵、セリッサ・エストコルトは語る。


 例えば、殺人事件の起こった場所でその力を使うとする。犯人がセリッサの知っている人物であれば、その姿がはっきりと見えるものの、知らない人物であればそこに誰かがいたという所までは分かっても、それがどんな姿や特徴をしているかまでは分からない。


 だが、その制約があったとしても十二分に便利な力ではある。


 犯人候補を予め絞っておき、その人物像を記憶したうえで再び力を使って姿が見えるようになれば犯人を簡単に確定させられるうえに、その足取りやどこで何をしていたかまで筒抜けという事になる。……話を聞いただけでも、凄いとしか言いようのない、そんな能力だ。


「へえ、すごいなぁ。探偵としての頭脳と、その過去視の能力があれば、どんな事件も一瞬で解決できちゃうんだろうなぁ」

「ま、このワタクシにかかれば、解決できない事件なんて存在しませんのよ。おーっほっほっほ!」

「それで、実はウチら、人を探しに隠祇(おぎ)島へ向かってるんだけど、手がかりが全くってくらいにはなくて……」

「あら、あらあら? これは何やら事件の予感がしますわね。ええ、ええ。話くらいなら、聞いて差し上げても構いませんわよ?」

「本当!? 実は――」


 チョロいな――なんて言葉を許斐はそっと、心の奥にしまっておくのだった。



 ***



「ってことがあって、名探偵のセリッサさんの力があれば見つけられるかもしれないなー、なんて……」

「ふむふむ、それではるばる日本から? ……っもう、仕方がありませんわね。人探しなんて、このワタクシに掛かれば朝飯前ですもの。ちゃちゃっと探してあげますわよ。おーっほっほっほっ!」

「やった! セリッサさん、ありがとう!」


 事実に若干の脚色を加えた、許斐(このみ)の話を聞いたその探偵は、人を探しにはるばるここまでやってきたことに対する熱意に、感動の表情を浮かべて言う。


 もちろん嘘ではないのだが、少々話を盛って大げさに話す許斐へと向けられた三人の視線には、どこか冷たい物が混ざっている。まさか普段から、私達が気づいてないだけで色々と盛られた話をされているんじゃ――なんて。


 とにかく。過去視という力を扱う、しかも探偵である彼女が力を貸してくれるとなれば、上鳴(うわなき)を探す手がかりがほぼ揃っていない今、あまりにも心強いのは確かだ。


「ああ、見えてきましたわよ! あれが隠祇島ですのっ」


 と、そうこうしている間にも。船は変わらず隠祇島へと向かっていたらしく、遠くに島の影が見えてくる。……だが、想像していたものとは違った光景に、思わず四人は息を呑む。


「あ、あれが……?」

「そ、想像以上に栄えてる……わね」


 見えてきたのは、確かに島――ではあるのだが、その全域に高層ビルが立ち並び、それでも飽き足らずに海の上にまで建物が建っている始末。


 ……一言で表すならば、とにかくメチャクチャに発展していた。


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