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19.いざ、隠祇島へ

 神凪麗音(かなぎ れおん)とオカルト研究部のメンバーを合わせた四人は、昨日の今日で電車に揺られ、住宅街ばかりが広がる稗槻(ひえづき)市から都会の方に向けて大移動をしていた。


 彼女らの持っている大荷物から分かる通り、今日が『隠祇(おぎ)島』に向けて出発する日なのだった。


 まずはアメリカへと飛行機で向かう為に、空港までやってきた。搭乗するまでのあれこれを済ませ、予約した席へと座る。


 ちょうどよく中央、四人並びの席を一列確保できたので、誰かが離ればなれになることはなかった。


 国内ならともかく、日本からアメリカまでとなればかなり長時間のフライトになるので、一人だけ違う列の席に――となれば少々悲しい事になっていたかもしれない。


「なんだか、去年の修学旅行を思い出すなあ」

「確かに飛行機には乗ったけど、距離が違いすぎる」

「アタシは修学旅行も欠席したから、飛行機に乗るのって、覚えてる限りじゃ初めてなのよね。小さい頃に一度乗ったらしいけど、流石に覚えてないし」


 と、さらっと衝撃的な発言をしていく神凪に、思わず左隣の比良坂(ひらさか)が。


「えっ? 神凪先輩、修学旅行いかなかったんですか?」

「え? だって、御削(みそぐ)もいないし、他に友達だっていないのに、行っても楽しくないでしょ? それに、あの時は御削を探すので精一杯だったし」

「まあ、行かない人も一定数居るし、もし(さくら)が行かないなら、私も行かなかったと思うし……」


 七枝(ななえ)のフォローも虚しく、何故か微妙な空気感になってしまったが……そんな雰囲気を仕切り直すかのように、機内へ離陸のアナウンスが流れだす。


 間もなく。ゆっくりと、アメリカ行きの飛行機が動きはじめた。



 ***



「うへええ……、こ、腰が割れる……」

「そんな櫻に、ここで残念なお知らせだけど。これから乗り換えてまたしばらくは飛行機だよ」


 一〇時間ほど飛行機で飛んだ先にて、腰に手を当てて苦悶の表情を浮かべる許斐(このみ)に向けて、トドメを刺すかのごとく七枝が言う。


「家族にお土産でも買っていきたいくらいだけど……」

「行きで荷物を増やしちゃダメよ。御削を連れて、必ず帰るんだから。お土産はその時にでも買えばいいわ」


 一方の比良坂は、当然ながら日本とは風情の違うお土産屋をあちこち眺めては目をキラキラと輝かせている。


 物珍しいのは当然で、神凪も多少なりとも気になりはするが、すぐに乗り換えの便へ乗らなくてはいけないので、空港内を回っている暇などどこにもない。


 当然ながら、ベンチで大胆にもぶっ倒れている許斐だけではなく、他の三人も疲労困憊ではあるが……次の便はもう既に予約済みなので仕方がない。


 動く気力もない許斐を七枝が無理やり引きずりながら、今度はバミューダ諸島行きの飛行機の手続きへと足を進める。



 ***



 バミューダ諸島に到着した各々は、長きに渡るフライトであちこち痛み、少し休みたい所ではあったが……『隠祇島』に行けると手紙に書かれていたツアーの予約もすぐに入れていた。


 この場の全員、海外旅行の経験なんてなかったが故に、予定段階ではここまで大変な旅になるとは予想できなかったのだ。


 そのせいで一刻も早く隠神島に向かおうと、キツキツなスケジュールになってしまった訳で、帰りこそは余裕を持ったスケジュールで帰国しようと各々心に決める。


 市内のバスで、ツアーの開始地点である港まで向かうと、他の参加者らしき面々の姿もあった。


「……この人たちも、隠祇島に?」

「どうだろう。とてもじゃないけど、『条件』を満たしている人たちには見えないけど」


 七枝の言う条件とは、『特異な能力、知識を有している』というものだった。隠神島へ入る為に満たしている必要がある事柄だ。


 能力で言えば、神凪の《竜の血脈(ドラゴン・ブラッド)》による身体強化や飛行に、許斐の魔法少女による力が挙げられる(実際に条件を満たしているかはまだ分からないが)。知識で言えば、七枝と比良坂の『錬金術』があるだろう。


 だが、同じクルーズ船に乗るであろう他の面々は、ただの観光客……少々お金持ちそうには見えるが、特徴といえばその程度。


「このツアー自体、本当にただの観光客向けのツアーに見えるけど」

「でも、確かにこのツアーで合ってるんだよね?」


 バミューダトライアングルと呼ばれている、船や飛行機が忽然と姿を消す――なんてオカルトが出回っていて、その知名度を逆手に取った、日帰りのクルージングツアーだった。


 このツアーに参加することで、『条件』を満たしている場合は隠祇島へと向かう事ができると、七枝の先生――間倉から届いた手紙には記されていた。


 七枝の先生ともあろう人物が、そんな下らない嘘を書くとも思えないが……どこか半信半疑になりつつも四人はそのクルーズ船へと乗り込んでいくのだった。

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