厄災少女エルノア
そんな表情も束の間、彼女はすぐにまた儚げな、どこか悲しげな表情に戻ってしまった。
「申し遅れました、私は...エルノア=グランフォルドと申します。先刻は助けていただき、ありがとうございました」
「あぁ〜...あれはただの憂さ晴らしなんだ、気にしないでくれ。俺はリアス=アルフィン。リアスと呼んでくれ」
「かしこまりました、リアス様。では私のこともセルノアと...」
「エルノア...うーん長いな、ノアでいいか?」
「お好きな呼び名で呼んでいただいて大丈夫ですよ」
「助かるよ。俺は天性のめんどくさがり屋でな」
「いえいえ。ところで失礼かと存じますが...先ほどは、どうして命を絶たれようと?」
「あぁ、まあ気になるよな。でもきっと、聞いたら笑っちまうぜ」
「笑うだなんて、そんな失礼なことは決して致しません!」
会ってから一番声を張り上げている彼女の優しさを感じると同時に、彼女になら事実を包み隠さず伝えたいと思えた。
「わ、わかったわかった。話すよ」
今日起きたこと、自分が無才であることを話した。
「そんな...あなたのような方が...。この世界は残酷ですね。私も産まれてこの方、幾度となく才能値の存在を恨んできました」
「君も才能に苦しめられてきたのか?こんな訳の分からない範囲の氷魔法が使えるのに無才なのか?」
「...いいえ、その逆です。強すぎる才能の代償として魔法を使うことを禁じられております。私は魔法をこんなにも愛しているというのに...いけません、話しこんでしまいましたね。先ほどの魔法に反応して新たな魔物が来る前に街へ戻りましょう。その...もう少し生きてみたくなったとおっしゃっていましたが、お変わりありませんか?」
「ああ、今は大丈夫だ。せっかく救ってもらった命だし、やりたいことをやって、それで死にたくなったらまた死ぬことにするよ」
「あなたは...死ぬことが許されているのですね...」
消え入りそうな声で発されたその言葉はうまく聞き取れなかった。
「え?なんて言ったんだ?」
「いえ、なんでもありません。さあ、いきましょう!」
そう言い手を差し出す彼女は間もなく消える泡のような儚さを身に纏っていた。
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