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番外編:魔法使いの師弟

師弟のお風呂事情

作者: 夢崗

「師匠。……師匠〜⁉︎」

 そこそこの声量で何度か呼び、ノックもしたが返事はない。よし、これは不可抗力ということで。

「入りますからね‼︎」

 最終通告は虚しく脱衣所に響いた。無論、師匠からの返事はない。仕方なくリオンは風呂場の扉を勢いよく開け放つ。思っていた通り、師は浴槽の中でコックリコックリと船を漕いでいた。

「またですか⁈」

「んん……? うおっ、なにしてんだお前⁈」

「あなたが風呂で寝こけるから起こしにきたんでしょうが‼︎」


 確かにここ、西の城の管轄区域は水の精霊が統べていることもあり、水資源が豊富だ。水質の良さも国内随一、湯浴みは美肌にも良いと聞く。だからといって、極端な長風呂は体に毒だ。溺れでもしたらどうするつもりなんだ。

「だいたいあなたは極端なんですよ! 三日間書庫にこもっていたかと思えば、今度は風呂に三時間って、どう考えても体に悪すぎます」

「お前が短すぎるんだ、せっかく湯を張ってるのにほとんど浸かってないだろう」

「僕は長湯が苦手なんですよ。養父母の家はシャワーだけでしたし……ともかく、三時間は長すぎです。ロゼッタだって『一時間も入れば長風呂だ』って話してましたし」

 このやり取りの最中も極力リオンはクロウの方を見ないように顔を背けていた。好意を抱いているからこそ、裸を直視する勇気がリオンにはない。むしろいくら本人にその気がないとはいえ、告白してきた相手の前で裸であることに平然としている師が信じられないくらいだ。

「髪と体洗ったんですか?」

「まだ」

「じゃあさっさと洗って、上がってください」

「ハイハイ」

 風呂場から出たリオンが扉を閉めるや否や、浴槽から出たのであろう大きな水音がした。リオンは慌てて脱衣所を後にする。すぐにクロウが脱衣所に出てくるわけではないとわかっているものの、扉一枚隔てた向こうで無防備な姿をしていることをできるだけ考えないようにしたかった。

 そうしてようやく風呂から上がった師匠がまた椅子で船を漕ぎ出したので、リオンはタオルで水気を拭いてやったあとに風魔法でパパッと乾かしてやるのだった。

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