終わりの始まり。新たな始まり。
彼女を解ったつもりでいた
僕には彼女がいた。でも彼女が分からない。出会ったのは高二の春だ。一目惚れというか、一目見た時から僕の心を奪っていったというか、一言では無理みたいだ。
「あなたのこと今は好きじゃないの。だからまた好きになってからにしよ。」
なんでこんなことになったんだ。ほんと意味が分からない。
〈十分前〉
「最近忙しくて全然会えてなかったね。」
この時の僕は自分がどんなことを仕出かしたのか、彼女がどんな感情を抱いていたのか何も考えていなかった。
僕、この物語の主人公こと神田はじめと言います。バレー部、ヲタク、童貞、頭は中の下。顔も中の下。特にこれと言って特徴もなし。そんな僕にも彼女がいた。
【椎名りん】
彼女は透き通った人間だ。穢れのない、とても真っ白な。
でも、
でも、
でも。
尋常なほど人に関心がない。そっけない。そんなレベルではないのだ。そして気分屋。気まぐれが多い。
そんな彼女にひかれ、告白をし、振られるのを覚悟していたが、
彼女は・・
あっさりとOKしてきた。ただただうれしかった。
その時までは幸せだった。その時までは。
「そうだったね。全然会えてなかったね。」
普段どうりの会話が続く。
「また今度どっか遊びに行かない?」
「ごめんなさい。」
え、なんか用事でもあんのかな?それとも遠征ばっか行ってて、かまってあげられなかったからかな?ツンデレさんになっちゃったのかな。
なんて深く考えず、なんなら陽気な気分だったのかふざける余裕まであった。
「あなたのこと今は好きじゃないの。だからまた好きになってからにしよ。」
「え」
目の前が真っ暗になっていく。めまいってやつか。つかれているのか。幻聴だよな。んなわけないよな。
「最近思ったの。なぜあなたのことが好きなのか、どこが好きなのか分からないの。倦怠期じゃないの。冷めてしまったってやつ?」
呆気なく俺の恋が終わってしまったと思っていた。
「な、、、、、なんで」
こんな情けない言葉、声しか出なかった。
「でも、付き合ったままでいて欲しいの。」
「え、、、、、、、」
もう何言っているか分からなかった。
「また君のことを好きになったらまた・・・」
そう言って彼女は去っていく。
この場のことは僕には到底理解が出来なかった。この先どしていいのかわからない。何をしたらいいんだ?
俺はどうにもこうにもなにか行動しないといけない。
こんなこと言われても
どんだけ素っ気なくても
僕はやっぱり彼女の不可思議な雰囲気に惹かれていた。
言葉をもって教えて、言葉通して気づかせて。君という人物を。
これから彼女と僕の
新しいとても不思議な関係が始まる。