勇者探し
ゴブリン騒動から一日が経ち、俺達はローナの町を離れて、ある場所へと向かっていた。ちなみに昨日の騒動の後、すぐに町を離れたのでお礼などは何も貰っていない...いや、別に構わないんだけども、なんかすっきりしない。
そんなこんなで朝が来て、俺とシェミーは草原にいる魔物を倒しながら進んでいた。
「言っとくけどあんたは何をしようと勇者にはなれないからね。布の服が勇者になんてなれるわけないでしょ。立場を弁えなさい。」
シェミーが釘を刺すように言う。まあ、昨日は自分でも結構調子に乗ってたのは事実ではあるからな...
「うるさいなー、わかってるつーの、そんなことは。で、一体どこに行く気なんだよ?もう少し町でゆっくりしたかったのに...」
「さっきも言ったでしょ。勇者を探して魔王討伐を本格的に始めるって話。」
そう、俺達は勇者を探す旅へと出ていた。なんとか五体満足になって自由に体が動けるようになったので、移動自体はとくに問題がなくなったのだが...
「ていうか、どういうことだよ?なんでいきなり魔王討伐を本格的に始めなきゃならないんだ?それに、お前もなんかやけに焦ってるような気がするんだけど?」
とはいえ、異世界に来たからには魔王を倒すのは至極当然の行動ではあるのだけれど、服状態が続いてそんなことを考える暇もなかっ4のだけれども。
「昨日のことがあればね...そもそもこの世界を...オルセア大陸を支配する魔王ゾルダークはつい最近討伐されているんだけどね。」
え、魔王ってもう死んでんの?じゃあ俺達の冒険の意味って最初からなくね?
「そう、そのはずなんだけど...昨日みたいに魔物が自ら町に入り込んで人間を襲うなんてめったにあり得ないわ。」
「確かにその通りではあるな。あんなことが頻繁に続いていれば、町一つ崩壊してもおかしくないし...」
昨日のゴブリンが、一体感を持って行動していたのは確かに気になるしな。まるで誰かに命令されたみたいな感じだった。
「ならば考えられることは二つよ。魔王が何らかの手段で復活したか、もしくは魔王に代わる誰かがいるかってとこね。」
「ふーん、ん?でも、じゃあどうしてお前が焦るんだ?魔王の復活がお前にとって都合でも悪いのか?」
「詳しくは言えないけどそんなところね。ただ一つだけ言えることは、私には命に賭けて守らなければならない使命があるってこと。」
使命?そんなもん抱えていたのか、こいつ...ただのくそ生意気な妖精ではなかったのか...
「もっともあんたと出会ったのは、完全な誤算だけどね。」
うわっ、ムカつく!そこはお世辞でも良いこと言っておけよ...
「で、勇者を探すにしてもどこにいんだよ?もしかして当てずっぽうで探すのか?」
下手な鉄砲も数打てば当たるなんて言うが、流石に無茶だとも思うが...
「それには心配及ばないわ。さっきも言ったでしょ?あんたは勇者になれないって。」
「いや、わかっとるわ!重々承知しとるから!」
くやしいけど、主人公に選ばれなかったのはやっぱりショックなんだよなぁ...
「まあつまり、勇者は別の誰かがなるってこと。」
.....?なる?いるのではなく、なる?
「そうよ。勇者はもうこの世界にはいないわ。つまり、これから新たな勇者が生まれるってわけよ。」
「勇者がいない?これから生まれるだと?」
「そう、そしてあの村こそ始まりにして、歴代勇者が生まれたとされるシーバ村よ。」
シェミーが指を指した方向には、確かに小さな村が見えた。いかにもRPGの最初に出てきそうな感じの古風な感じだった。
「なるほどな、あれが勇者の故郷ってわけね。いよいよ本格的に冒険らしくなってきたじゃねーか。」
こうして、俺達は勇者の村へと足を踏み入れた。