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罪斬り桜  作者: 仂静瑛祐
8/16

第壱ノ罪

どーも、瑛祐です。

ラストスパートです。

早速本編をどーぞ!


-前回のあらすじ-

舞の人生は志保に支えられてきた。だから志保に感謝の気持ちを伝え、最後の歩みを進める。

 -救済-

  夕方5時を過ぎても夏前のこの時期には太陽が出て明るい。店や木の陰を歩く、ロープと小型ライトの入ったビニール袋を手に紅葉山(くれはやま)へ向かう女の子がいた。

 紅葉山は標高400mほどの紅葉市(くれはし)のシンボルとも言える山だ。中腹部に滝があり、そこは山の麓から少し歩くが比較的行きやすいので紅葉市の住民のよく行くスポットの1つとなっている。

 彼女は歩きながら人生を振り返った。そう、『神田 舞』の人生を。


 1時間程で山の麓に着き、そこからまた1時間程で例の滝に着く。が、彼女の目的地はそこではない。滝までの道の半分程度進んだ所で2つのルートがある。1つは道形に進むゆったりコースと、もう1つは斜面を木で作った簡単な階段を登るハードコース。彼女はハードコースを行き、人目の無い所で更に道を外れどんどん山を登って行った。

 中々良い場所もなく、もう道に外れて1時間程歩いただろうか。陽も沈み、辺りも暗くなっていく。彼女は袋の中のライトを取り出し、更に登り続ける。

 少しして大きな広葉樹1本と鉄塔がある開けた平地に出た。彼女は後ろを振り返るとそこには家や店の街明かりが綺麗に見えた。

「紅葉山にもこんな場所があったんだ。・・・志保と観に行きたかったなぁ」

 舞は広葉樹に近づいた。

「よし、ここにしよ」


 大きな広葉樹。身体能力の高い舞ですら登るのは一苦労だ。ライトを口に咥えロープを持って太い枝に登り、座った。

「まさか、死ぬ前にこんな運動をするとはね」

 さっさか準備を始める。ライトを口に咥えたままロープを枝に縛り付ける。

「気をつけないとどうせ死ぬなら綺麗な景色を眺めながらがいいよね。足が滑って転落死なんて嫌だから」

 しっかりとロープを枝に縛ったのを確認し、ロープの先端を自分の首に巻いて、これもしっかり結ぶ。

「長い様で短い人生だったかな。ありがとう、志保。・・・あれっ、なんで今更・・・」

 舞の頬に涙が伝う。その涙を拭い飛び降りる。

「さよなら、志保」


「まぁぁぁいぃぃぃぃ!!!!」

「志保っ!?」

 ぶっ飛んできた志保が舞をしっかり抱きしめ着陸する。

「どうしてここに!?」

「バカなことしないでよぉぉ」

 ぐしゃぐしゃに泣きながら志保は叫ぶ。

「あぶねぇ。まじ危なかった。超ギリギリ」

 ため息をついたのは月明かりによく映える桜色のショートヘアに日本刀らしきものを持つ人だった。

  ◼︎◼︎◼︎

 2時間前。

「これって大丈夫なのぉぉぉぉぉ」

 多少なりとも浮遊感はあるのだろう。志保は叫んだ。窓から家を出るとき桜にお姫様抱っこをされ、刹那的にドキッとしたが家、マンション、電柱を跳び跳び行き、そんな感情はどこかへ消えていった。

「もちろん大丈夫だ。桜は重量を自在に変えられる。桜の所有物、つまり君の総重量も。だからちょっとしたアトラクションだと思い給へ」

「そんな事より舞ちゃんはどこへ行った?」

「彼女の家には置き手紙しかなかった。家で自殺しないなら場所は限られるんじゃないか?」

「そーだなー、やっぱり・・・」

「「「山!」」」

 桜、小雪、志保の声がハモる。

「紅葉山へ急ぐぞ」


「問題は山のどこにいるかだな」

 取り敢えず滝まで来たが舞の姿が見つからない。

「舞なら・・・人目につかない場所を選ぶと思う。うーん、あっ、あの鉄塔から探さない?こんなに人間離れした事やってんだから目だっていいんでしょ?早く行こ!」

「了解」

 桜にとって鉄塔へ行く事は訳ない。ものの数秒で鉄塔へ辿り着き、上の方でしがみついて辺りを見回す。

「ねぇ、あっちの方でなんか一瞬光った気がしたんだけど?」

 スマホを使い、暗くて何も見えないながらも懸命に探していた志保が1つ奥にある鉄塔の方へ指差した。

「どれどれ〜・・・見つけた!って、やばい、時間がない」

 そう言い、桜は志保のお腹周りを左腕でしっかり固定し志保の態勢を地面と垂直に、自分は地面と平行にする。

「今から舞の所へぶっ飛ぶ。志保、しっかり受け止めろ」

「えっ・・・わかった」

「行くぞっっっ」

 桜は鉄塔を力強く蹴り、舞の方へ一直線に飛んだ。


「間一髪ってとこか。サンキューな雪」

「あの程度のロープ、簡単に斬れる」

 志保は舞をしっかりと抱き捕まえた。あの速度でいけばそのまま首が絞まって結果死んでいただろうが、桜は飛んですぐ小雪を抜刀し、舞のを捕まえると同時にロープを斬ったのだ。舞の首をすり抜けて。

「あなたは一体誰ですか?」

 手に持ってきた日本刀を鞘に収める月明かりに照らされた桜色の髪に青い着物。月と共に彼女の目に映ったその人は人間とは思えないほどの美しさだった。

「俺は桜。志保ちゃんの依頼で君を助けに来た」

 手短にこれまでの事を話した。

「なるほど。そういう事ですか。なら、助けなくたって良かったのに。私はもう奪われるのはうんざりなの。もう、あんな思いはしたくないの・・・」

 俯く舞に桜は

「一つ質問だ。何故奪われるのだ?」

「それは、、私が勉強できないから、、志望大学に行けないから・・・」

「何故そこに行きたい?」

「それは、お父さんとお母さんに・・・」

 そう言って舞は言葉を詰まらせた。

「君は本当はどうしたい?」

「私は・・・私は、ただ・・・志保と一緒にいたいっ」

 また涙を流してそう訴えた。

「なら、そうすればいいじゃないか。」

「えっ?」

 かけられた桜の言葉に舞は唖然とする。

「君の人生だ。高みを目指すならそうすれば良いし、妥協するなら妥協すれば良い。周りの意見を聞くのも良いけど、最後に決めて行動するのは舞、君自身だ。君は君がしたい事をすれば良い。もし、君が道を外れそうになったら志保が君を引き止める。だから、君のその自殺したいって感情は・・・」

 抜刀し、舞の胸の辺りを一筋斬る。

「必要ない」

「もうっ、、二度と、こんな事、しないでねっ」

 大泣きしながら志保は舞に抱きついた。

「分かった、もう離れないよ」

 舞も泣きながら志保を受け止めた。

「なぁ、雪」

「あぁ」

「ここからが本番だぞ」


今回もお読みいただきありがとうございます!

1週間お疲れ様です。

第壱ノ罪が次で最終回となります。

最後まで楽しんでくださいね!

では、今日はこのあたりで。

皆さんの人生に幸あれ!

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