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すべての愛に花束を  作者: 雪鶴
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素敵な花屋に恋した不良少年

高校に通う道中に小さな花屋がある。

この花屋の娘が隣のクラスの女子。

学校が終わるとすぐに家に帰り店の手伝いをしているような真面目な奴だ。

不良という枠組みに入れられた俺とあいつは、住む世界が違うため関わったことなど一切なかった。

なのに…


俺はあいつに恋をした。


初めはそんなことありえないと思い、恋をした自分を疑った。

しかし、学校では気付かぬうちに目で追っている自分がいる。

授業中も家でもふとした時にあいつの笑顔が頭をよぎる。

そんな事が何度も何度も続いていくうちに、俺はあいつの事が好きであるという事実を受け止めなければならなくなった。


きっかけは、花屋で仕事をしている姿を学校帰りに目撃した時だ。



《6月15日》

いつも通り花屋の前を通り過ぎようとした時だった。

ガッシャーン!

花屋の中から何かを倒した音がした。

通りながら店の中を除くと、あいつの足元には水溜りが出来ており、割れたガラス片と花が散らばっていた。

俺はそれを見てなんとなく察した。

花瓶を落としたのだと。

関係の無い俺はそこを立ち去ろうとしたが、あいつの行動を見て咄嗟に声をかけてしまった。

「馬鹿かお前!ガラスに素手で触んな!」

驚いた顔でこちらを見るあいつ。

やってしまった。

そう思ったが、声をかけてしまったからには逃げることも出来ないためそのまま店内へ入る。

「動くな。危ないだろ。箒どこだ。」

「え…ほ、箒はそこの棚の中…」

「分かった。お前は絶対動くな。」

俺は箒を持ってくると、足元のガラス片を全て取り除いた。

「これで動けるだろ。じゃ、俺は帰るから。」

その瞬間だった。

「ありがとう!隣のクラスのレイくんだよね?本当にありがとう!」

営業中の笑顔とは違った可愛い笑顔を見せたこいつに俺はその場を去ることが出来なくなった。

「何で、俺の名前…」

「有名だから知ってるよ〜!でも、知らなかったなぁ。レイくんって凄く優しいんだね!」

「いや…」

「本当に本当にありがとう!」

このままここにいては行けないと思った俺は、即座にその場から逃げ出した。


《6月16日》

次の日の帰りの事だった。

「レイくん、ちょっと待って!」

花屋を通り過ぎた時、後ろから声をかけられた。

振り向くと立っていたのはあいつだった。

「…何?」

「渡したいものがあるの!」

そう言うと、俺のもとへ走ってきた。

「はい、これ!」

「これ…」

渡されたのは小さくて可愛い色とりどりの花束だった。

「昨日のお礼だよ!」

「お礼って…俺大したことしてないんだけど…」

「レイくんからしたらそうかもしれないけれど、私は凄く助かったの。昨日からお礼しなきゃって思って。私にはこんなことしか出来ないけど、受け取ってほしいな。」

笑顔でそう言うこいつ。

返すべきか貰うべきか迷っていた時、俺の目に入ったのは小さなメッセージカードだった。

そこには『レイくんへ 助けてくれてありがとう ハナより』と書かれていた。

それを見た俺は、返すべきでは無いと思った。

「…ありがとう。」

「いいえ!」

俺は花束を持って家へ帰った。



その日から彼女と俺は関わる機会が増えて行った。


《12月24日》

俺は彼女に告白すると決めた。

しかし、実らない恋であることは分かっていた。

昨日花屋の前を通り過ぎた時偶然見てしまったのだ。

彼女が老紳士に、今まで1度も見たことがないような可愛らしく素敵な笑顔を向けていた所を。

俺には向けられたことがない笑顔だった。

老紳士に恋をしていることは無いと、そう家に帰って何度も考えた。

でも、彼女が老紳士に恋をしていないにしろ、俺は彼女のあの笑顔を見たことがないことは事実である。

だからこそ、俺は相手にされないことくらい分かっていた。

しかし、このまま想いを伝えずに卒業してしまうのも嫌だった俺は、クリスマスイブのこの日を選んで告白することにした。


「いらっしゃいませ〜!あ!レイくん!どうしたの?」

「…花束を買いに。」

「花束?」

「あぁ。…花って自分で選んでいいの?」

「え?あ、うん!選んでいいんだよ!」

「分かった。選んだら言う。」

「はーい!」

俺は色とりどりの可愛い花を選んだ。

「これで。」

「わぁ〜!選ぶの上手だね!凄く可愛い!」

「ありがとう。」

「そうそう、花束のラッピングなんだけど、色どれにする?」

俺は包装紙とリボンのどちらも白を選んだ。

なぜなら、彼女はとても綺麗な白い髪だったから。

数分後、彼女は出来上がった花束を持ってきた。

「きっと、この花束をもらう人は幸せだと思うな〜。」

「…どうして?」

「だって…花を選んでいる時も、ラッピングの色を選んでいる時も、レイくん凄く優しい顔をしてたから。レイくんの想いがしっかり詰まった花束だと思うから。」

そう言う彼女の顔を見て俺は決心がついた。

今しかない。

花束を受け取った俺は彼女の目をしっかりと見つめた。

彼女は不思議そうな表情を浮かべている。

俺は彼女に花束を渡した。

「これ、お前にやる。」

「え?」

叶わないことは十分承知の上だけれど、後悔したくないから…伝えさせてほしい。

「俺は、ハナのことが…」

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