通り雨
通り雨が降ってきた。
雨宿りようと思って非難した先に、一人の少女がいた。
変に近づいて変質者扱いされても困ると思い、距離は置いておいた。
しかし、少女の方からこちらに近づいてきた。
「おっちゃん、傘持ってへんけ?」
なんだか気さくに話しかけてきた。
「あぁ、だからこうやって雨宿りしてんねん」
「うちと一緒やな」
そう言って少女は笑った。
この光景を周りに見られたらどう思われるだろう、と思ったが、無視するのも感じが悪いなと思った。
「じゃあ、なんかやって時間潰そー」
「なんかって?」
「動かんで出来て、道具もいらん遊びやな」
「しりとりとか?」
「ええなあ。じゃあうちからでいい?」
そう言ってしりとりが始まった。
二十代後半の男性が、小学生くらいの少女としりとりをしている光景。
誰か来る前に早く雨がやまないかなと思っていた。
そんなことを考えていると。
「おっちゃんの番やで?」と少女は言った。
「ごめん、次なんやったっけ?」
「ちゃんと聞いとけよー。なんか、考えてたん?」
「いや、何してんやろうって思って」
「しりとりやで?」
「いや、それはわかってるけどさ。見知らぬ女の子としりとりしてるこの状況がな」
「そんなん別に考えんでいいやん。雨が止むまで時間潰せればええんやから」
「大人になったらな、世間体とか気になるねん」
「世間体?」
「こんな状況君の親にでも見られたら、俺が不審者やと思われてしまうねん」
「そんなんうちが説明したら済む話やん」
「それができへん状況もあるねん」
「大人ってめんどくさいな。おもんなくないん?そんなんで」
「まあ大人になったらわかるよ」
「うちはそんな大人になりたないわ」
「俺も子供のころはそう思ってたけどなあ。色んなルールとか倫理に縛られて生きるしかないねん」
「そんなもん自分次第やろ。他人にこう思われるかもとか、そんなん考えてもしゃーないやん。やりたいようにやって他人に変と思われても、自分が間違ってないと思ったらそれでええやん」
「それで誰からも相手にされんようになっても?」
「しゃーないやん。それが自分なんやから」
そう言って彼女は笑った。
気が付くと雨は止んでいた。
「雨やんだな。じゃあな、おっちゃん。いい時間潰しになったわ」
そう言って少女は去っていった。
あんまり色々考えすぎる必要も無いのかなと思えた。