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beautiful curse 美しい呪い

作者: かじた

 僕は電話の音で起きた。 目を開け、 時計の方に目を向けた。 長い針は7という数字を指していた。 朝か?昨日は大学の飲み会で、 二日酔い気味だった。 こんな朝になんだ?しつこい電話だ。 まだ鳴ってる。 重たい体を持ち上げ、 電話を片手にソファーに腰かけた。 「もしもし、 大村です」 「大村信司さんですか?」 「はい」 

警察から電話がかかってきた。 用件は10年前に行方不明になった妹が見つかったという話だった。 遺体は死体安置所に保管されていますと知らされた。 僕は怖かった。 妹に会うことが、 思い出したくない記憶が蘇る。 昔の…故郷と共に。  


  beautiful curse

 

 死体安置所につき、 警察が迎えに来てくれた。 「こんにちは」 「こんにちは」 「大村信司さんですね?」 「はい」 「妹さんはこちらです」 警察は道を案内をしてくれた。 「妹さんの遺体はキレイに見つかったんですよ」 「そうなんですか」 「遺族としてもよかったんじゃないんですかね」 「…」 「大村さん着きました。 ここです。 ごゆっくり。」 僕は目を疑った。 妹の遺体は10年前と何ら変わっていなかった。 あの頃の妹が、 ただ寝ているだけのように見えた。 「妹さん、 寝てるようですね。 神様が遺族のために妹さんを守ったんでしょうね」 「ええ。 神は妹の味方をしたんでしょう」 僕は妹の遺体をみて、 はっきりとあの頃を思い出した。 僕は妹の事が嫌いだったんだ。

 あの寒い冬の12月のことだった。 当時、僕は小学4年生で妹は小学2年生だった。母と僕、 妹の3人で暮らしていた。 父は僕が小さい時に事故で亡くなったそうだ。あまり裕福とはいえなかった。 「お兄ちゃん待ってー」 「何してんだ置いてくぞ」 僕達が住んでいた場所は田舎で見渡す限り田んぼだらけだった。 「ただいまー」 「ただいま」 「お帰りなさい。 「お芋さん食べる?」 「食べる食べる」 「こら! 信司手を洗って来なさい。」 「はーい」 「美香ちゃんはちゃんと帰ったら手洗いしてるよ。 あなただけよ。 何度言ってもなおらないのは」 そう、 妹の名前は美香という名前だった。 妹は何でもできて、 何でも言いつけを守る子だった。 「偉いねー美香ちゃん」 「ママ、 テストで100点取ったの」 「すごいじゃない美香」 いつも褒められるのは妹だった。 「おい! そのオモチャ俺のだぞ!」

僕は妹が持っていたオモチャを強引に取った。 「お兄ちゃん少しだけ貸して、 ねぇお兄ちゃん」 「信司! あんたお兄ちゃんでしょ。 貸してやりなさい」 いつも怒られるのは僕だった。 そんな毎日が嫌で、 「あいつがいなければ」 と妹を憎んだ。 そんなある日、 友達と近くの山奥で鬼ごっこして、遊んでいた。 すると妹が入れて?と言い寄ってきた。 僕は嫌だったが友達は歓迎したのだ。 「信司の妹?かわいい」 「なんだよ信司入れてあげろよ」 しょうがなく、 妹を入れ遊ぶことにした。 夕方になり、 みんなは帰ってしまった。 僕も帰ろうとしたが妹がいる事に気づいた。 僕は一緒に帰りたくなかったのだ。 僕はあることを考えた。 「美香、 俺たち二人だけで鬼ごっこをしよう」 「うん、 いいよ! どっちが鬼やる?」 「最初はお前がやれ」 「分かった」 聞き分けのいい奴だ。 「10秒数えろよ」 「うん」

 「初めていいぞ」 「1、 2、 3」 僕は走った。 家に向かって、 妹の声少しずつ小さくなり、 聞こえなくなった。 いままでの恨みだ!

一人で帰れ。 僕は泣いて帰って来るだろうと思った。 しかし、 妹は帰って来なかった。 母は心配して、 警察を呼び探し回った。 僕はこんな騒動になるとは思っていなかった。 慌てて山の方に向かった。しかし、 暗すぎて何も見えなかった。 僕は思った。 あの時、 夕日がこの山を照らしていたから安全な道で帰れたのだと。 「はっ! くっ」 怖くなった。 風の音が山の唸り声に聞こえた。 「うわーっ」 走って家に戻った。 一日たっても見つからなかった。警察は人数を増やし、 大捜索になった。 その間、 警察にその時何をしていたかをよく聞かれた。 僕は友達と遊び終わって妹と一緒に帰っていたらいなくなっていたと話した。 その後、 美香は学校でいじめられていた事を知った。。 だからあの時僕達と一緒に遊ぼなんて言ったのか友達がいないから僕の元に…。 母はショックを受けていた。 母は毎日泣いてばかりいた。僕のせいだなんて言えなかった。 母はあの日以来僕のことを片時も目を離さなかった。 「あなたまでいなくなったら私は…」 そう言いながら僕を抱き締め泣いていた。 僕の心は罪悪感でいっぱいだった。 僕も母と共に泣いていたが流す涙の意味は違かった。 母さんごめんよ。 それから7年が経ち、 僕が高校2年生の時に母は病死した。 今では一人になった僕だが妹にあんなことをした罰だと思って生きている。 

 「美香、 美香はどこで見つかったんですか?」 「美香さんは古い井戸の中で、 もう使われていない井戸でして少し湿気があるぐらいの暗い場所だったそうです。 それに美香さんはブルーシートに包まれていました。 死因は窒息死らしいです。」 「そうだったんですか。 ありがとうございます」 「いえいえ、 見つかってよかったです。

これからは事故と殺しの両方の線で捜査していく方針です。 美香さんに何があったのか分かり次第報告していきますね」 「事故」 僕はそっと呟くように言った。 「はい?何か言いましたか?」 僕は美香に何があったのか分かった気がした。 妹は僕を探そうと山の中を探し、 ブルーシートで隠された井戸を見つけた。 妹はブルーシートの中は僕だと思ったのだろう。 近寄りブルーシートをめくったがそれは井戸だった。妹はその井戸を覗きこもうと顔を井戸の中にそれで足を滑らし落ちた。 その際にシートが妹の体を覆い被さった。 それで窒息死。  「いや何でもないです」 「そうですか。 ……検視官や我々警察達、 死亡解剖する人も言ってました。 こんなに美しく残ってる遺体を見たのは初めてだと言っていました。 本当に奇跡だと私は思います」 「凄いですね美香は」 「本当に凄いです」 

      死んでもなお

     美香は褒められた。          妹が……憎い     

 

 end

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