上鳴 雷羅
何か手応えを感じ、恐る恐る目を開けて見ると女性が離れた所で横たわっている。
「あれ!?
えっ、あっ、だ、大丈夫?」
痛みがあるのか、苦しそうにゆっくりと体を起こすと片膝をついたまま私に顔を向けた。
「ぐっ。
……何、その力……。
貴女は一体……誰?」
「私!?
誰と言われても……。
私は火野神楽よ。
神の力を持つものらしいけど、まだ覚醒してないって言われたし……」
「……これが引き際……。
パンザム!
撤退……するわよ」
「はぁ?
まだやれる……って、おい!
エルフォーリア!!
くそっ!
しゃあねぇかっ」
パンザムと呼ばれた金髪の女性が跳躍すると、エルフォーリアの隣に着地し、手を引っ張ると肩を貸して立たせる。
「あいつにやられたのか?
何者だい、あいつは」
「詳しくは……帰ったら。
反逆者の方舟の仲間も……すぐに来る。
今が引き際……」
「ちっ!!」
パンザムが大きな舌打ちをすると、その場から姿を消した。
「なんなの。
また瞬間移動?
……ふぅぅぅ」
「助かったわ。
あなた戦ってたけど、あたしの仲間?」
「そうなるのかな。
私はリアークの火野神楽。
あなたも?」
「やっぱりそうなんだ!
あたしもリアークだよ。
上鳴雷羅。
立派な高校一年生!」
命を削った後だというのにどこからその元気は来るのか、腰に手を当て胸を反らしている。
「なら、私と一緒なのね。
よろしく、上鳴さん」
「そんなそんな、よそよそしいの止めてよ。
同級生なら『さん』付けとか良いって。
神楽ちゃんっ」
「え、ああ、そうね。
雷羅……ちゃん」
「ぎこちなぁい……。
まぁ、その内慣れるわよね。
……ところでさ、一人で来たの?」
「……っ!
あっ、友姫さん!?」
目の前のことに夢中過ぎて、すっかり友姫さんと一緒だったのを忘れていた。
が、その人の姿は見渡す限り見えなかった。
「えっ?
友姫姉と来たの?
ってことは、イルミナから?」
「そう、だけど……。
一体どこに――」
言いながら元の来たの道へと戻ろうとした矢先、複数の声と足音が聞こえてくる。
「神楽ちゃん、待って!」
雷羅が素早く私の前に出ると、音のする方へ銃を構える様に指先を向けた。
そして、路地から姿を現した複数の人影を見るとその手を下ろし、両手を腰に当てる。
「……たくっ。
先生じゃん。
遅いっての」
「先生?」
「そ、学校の先生。
今更よね、全く」
二人の男性と一人の女性、それに友姫さんが私達の姿を見つけると、笑顔を見せながら歩み寄ってきた。
「二人共無事で良かったわ」
「良かったじゃないわよ、友姫姉。
援護が遅いって」
「そんなこと言ってもなぁ、上鳴。
これでも急いだ方なんだぞ」
タンクトップの男性が頭を掻きながら申し訳なさそうに話すが、雷羅は納得がいっていないようだった。
「ぶっちゃけ、今の相手はヤバかったな。
神楽ちゃんが居たから凌げたって感じ」
「詳しい報告はイルミナに戻って聞きましょう。
何より二人が無事だったんですから。
さぁ、結界が消える前に行きましょう」
友姫さんが間を取り持ち促すと、眼鏡をかけた優しそうな教師が私達と肩を組み瞬間移動の準備に入った。