半女神
音のした方へ路地を曲がり、隣の大きな道路へ出ると学生服を着た女性が一人と派手な服装の女性二人が対峙していた。
「友姫さん!
私行くわ!!」
どっちがどっちでも、とにかく止めさせたい想いで間に割って入ると両手を広げ互いに顔を向けた。
「こんなところで止めなさいよっ!」
「はぁん!?
あんた誰だい!」
金髪の濃い化粧をした女性が私を睨みつけ、荒れた口調で言い放つ。
「あなた、危ないわよ!
……って、向こう側じゃないの?」
「はぁ?
あたいらは、こんなやつ知らねえよ」
「どっちだって良いじゃない!!
こんな場所でやり合ってるのが間違いだって言ってるだけよ!」
思いの丈を叫ぶが伝わっていないのか、どちらも緊張を解いたようには見えない。
「分かんねぇのか?
ここは結界の中!
こいつをあっさり殺れば結界の外に被害なんてねぇん、だよ!!」
言い終わるか終わらないかの所で姿を消したかと思ったが、人間とは思えない跳躍力で私を飛び越えると、制服女子へ槍の形をした光を降り下ろす。
「その程度っ!!」
女子は一言叫ぶと、前方へ飛び込むように転がり光の槍を避ける。
しかし次の瞬間、女子は腕を伸ばして指を向けると稲妻の様なものが飛び出し、金髪の女性へ一直線に走った。
「ふぉりゃあ!」
身を翻しながら槍を稲妻に当てると方向が変わり、お店の壁を砕いていた。
私の心臓が大きく鼓動していたが、二人が無事だったことに少し安堵を覚える。
「止めなさいってのっ!
ーーちょっと!
あなたもよ、動かないで」
後ろからヒールで歩く音が聞こえたのに気づき、もう一人にも強く言うが歩みを止めることがなかった。
「君は……どっちの味方?
神の世界に……逆らう気?」
静かに話す女性から一切の感情が感じられず、その目は私を見据えたままだった。
「いいから止まってよ!
神の世界とかよく分からないし、私は戦いたくないのよ!」
「止まって……あげる。
……だから……君はどっち?」
「えっ?
あぁ、リアークよ。
だけど、そんなことより街への被害の為にーー」
女性は私の言葉に目を見開き、両手から短い剣の様な光を出した。
「トリアゼロ……神の世界に逆らうリアークは……排除する」
「えぇっ!?
あー、もぉ!!」
言わなければ良かったと思ったが、こうなってしまっては身を守るしか手はないと、炎の剣を想像し、私は掌から出た炎を両手で握った。
「やはり……能力があったのね」
「どうしても戦わなきゃなの!?」
「さぁ……神の名において……裁きを下すわ。
ーー死んで!!」
叫びと共に数十歩先から飛び、私に二つの光が向かってくる。
あまりの急なことに驚き、目を瞑りながらがむしゃらに炎を振った。