正義感
イルミナの室内が警報と赤い光によって緊張感が張り詰める。
「結界反応です!
場所はΔ、EW地区です!」
「バカな!
いくら結界を張ったといえ、シガイセンをやるつもりか!?」
飛び交う専門用語に戸惑い涙ながらに友姫さんへ振り向くと、険しい顔を一変させ笑顔に戻った。
「紫外線じゃなく、街の中で戦う`市街戦`のことよ。
結界があるから能力者以外は誰もいないし気づかないけど、強すぎる力は本来の場所に影響を及ぼすの。
突風だったり火事や地震のようにね」
「それじゃあ、頻発してる地震とか異常気象とかって……」
「そう。
半分以上は自然現象だけど、残りは戦いの痕跡ってところかしら」
そんなことって……。
それによって罪のない人達が巻き込まれていることに、背筋の凍る想いがした。
「今すぐ止めなきゃ!
ダメだよ、そんなこと!!」
「分かってますよ、ミス火野。
被害は無いに越したことはありません。
近い場所ですのでこちらからも数名向かわせますが、先に行ってみますか?
ミス火野」
私が行ったところでと思うが、それでも何か出来るならとゆっくりと頷いた。
「では、ミス藤凱。
よろしく頼みますね」
「分かりました。
神楽さん、私の肩に手を乗せて頂いても良いですか?」
「肩に?
こう、で良いかしら」
行くと言いつつ肩に手を乗せる意味が分からず友姫さんの顔を覗き込むと、目を閉じ集中しているようだった。
「ある程度近くの場所であれば結界を感じとることが出来るのですよ、ミス火野。
ただ、覚醒していなければ感じませんがね」
そうなのかと感心していると、友姫さんが振り向き微笑みを浮かべた。
「行きますよ、神楽さん。
しっかり掴まってください」
そう言った矢先、停電が起きたかのように目の前が真っ暗になり次の瞬間には景色が変わっていた。
「えっ!?
街の中!?」
「着きましたよ。
ここのどこかで戦っていると思います」
「はへ?
ここのどこかでって――瞬間移動したってこと!?
ホントにっ!?」
一瞬で景色が変わるなんて有り得ない。
これまでのことを踏まえると不思議ではないとはいえ、最早アニメや映画の世界と言って過言ではなくなってきた。
「そうですよ、結界の中です。
条件付きですが瞬間移動も可能なんですよ。
さあ、リアークの仲間を助けにいきましょう。
結界は大きくないはずですから」
のっぺりとした灰色の空とそよ風、人も車もいない道路が異世界にいる現実だと物語っている。
音のない世界にある商店街は寂しさよりも不気味さを醸し出し、見た目は綺麗な建物でも廃墟の様な感じさえさせる。
そんな結界の中を見回しながら少し歩くと、硝子の割れた様な音が近くで響いた。
「あっちね!」
騒音のない中で響き渡る音は美しく、誰かがいるという安心感を生み出してくれる。
それと共に、命のやりとりが行われている危機感も感じられずにはいられなかった。