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女子高生カグラのラグナロク戦記~日本編  作者: 七海玲也
第一章 プロローグ
3/15

命預ける場所

 長いこと車に揺られ登ったり降りたりを繰り返していると、ようやく開けた平地に辿り着いた。


「長旅、ご苦労様でした。

 今日はもう日も長くないので宿舎に案内しますね。

 明日、校舎の見学にしましょう。

 夏休みで生徒も多くないですが、色々見て回りましょう」


 友姫(ゆき)さんの言う校舎というのは、目の前にそびえ立つ欧州(ヨーロッパ)で見られる古代建造物の様な、とても学校に見えない建物の事を言っているようだ。

 二人の後に続き車を降りて着いて行くと、校舎の隣にある、これまた日本ではあまり見かけない欧州風味(ヨーロッパテイスト)満載な大きな建物に入って行く。

 清掃の行き届いた綺麗な屋内には廊下を挟んで幾つもの扉に番号札(ナンバープレート)が付けられている。


「友姫さん。

 もしかして、ここは学生寮ってことかしら?

 沢山あるけど、そんなに生徒がいるの?」


「ええ、そうですよ。

 全国から来ていますから。

 (ただ)し、選ばれた能力者ばかりですけどね」


「選ばれた?

 どう選ばれたの?」


 学力で測る進学校や、運動能力の結果で選ぶ特待生とは選ぶ基準が違うように思った。


「神の力ですからね、選び方は特殊ですよ。

 まずは未覚醒であること。

 それから、強い波動――所謂(いわゆる)、匂いを感じること。

 この二つが揃って初めてここに来ます」


 私が連れて来られた意味が少し分かった気がした。

 東城都の事務所で行われた催眠術のようなもの、あれが覚醒を促す儀式的なもので、普通であればそこで覚醒してこんな山奥まで連れて来られることもないのだろう。


「だから私は連れて来られたってことね」


「そういうことです。

 ここには学校の他に宿舎と研究棟があるので、神楽さんは学校ではなく研究棟に用があるんです」


「研究?

 神の力についてってこと?」


「今まではね。

 もう大部分は解明されているから、研究というよりも覚醒させる場所と訓練施設を併用としているのが正しいんだけど」


 既に戦いが始まり、私はその中枢にいるのだと思わされる言葉だが、それに関しては一切実感が湧いてこなかった。

 だからこそ階段を上りながら、私の半信半疑の気持ちをぶつけざるを得なかった。


「ふーん。

 私にそんな力があったとしても、実際に戦う事なんて出来るかしら」


「大丈夫ですよ。

 その為の施設ですし、学校でもあるんですから」


「ん?

 学校って、今は夏休みだから来れたけど……」


「そうですね。

 覚醒もまだですし本当に強い力なのか分からないですけど、確認出来たら転校しましょうか。

 手続きならすぐ出来ますし」


 笑顔のままビックリ発言をする友姫さんを二度見するが、それですら表情を変えないことに少し驚いた。


「いやいやいやいや。

 手続き云々じゃなくて、私の気持ちと親の気持ちだってあるでしょ、転校ってなるとさ。

 そりゃ、リアークには力になれるなら所属するとは言ったけど」


「確かにそうですね。

 ご両親の気持ちは一番に尊重しますけど、色々な待遇面に関しては破格なものになってますし、教育もしっかりとしているとご案内はしますよ。

 近くても遠くても親元を離れ子を預かる現場では、子供の命を預かることに変わりないんですからね」


 近年多発している事件や事故を踏まえ、場面は違えど命を預かることに変わりはないと言っているのだろう。

 そういった意味では私も少し安心するが、しかしだ。


「そんな急に言われても、そんな大それたことを二つ返事で応えられないわ」


「分かってますよ。

 まだ夏休みだって半分以上残っているでしょ?

 その間に気持ちの整理をつけて貰えたらいいんですから。

 ……さあ、ここです。

 今日はここで休んで下さい。

 来客室(ゲストルーム)ですので残ってる生徒も来ませんし、何かあれば備え付けの電話を使って貰えればいいので」


 友姫さんが鍵を開け通された部屋は、調度品も置かれたホテルと見間違うくらいの一室だった。

 感動やら不安やら沢山の気持ちが入り交じる中、友姫さんと巧斗に挨拶を済ませ扉を閉めた。

 部屋に一人残された私はぶつぶつと愚痴を溢したが、それすらも空間に邪魔をされ、気持ちを落ち着けようとテレビを点けるとシャワーを浴びる準備を始めた。


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