ラグナロク開戦
過ぎ去りし日々はあっという間で転入してから色々あったが、運動会も終わり残るは学期末のテストに備えるだけにあったのだが。
「本日集まってもらったのは、重大なお知らせがあったからです」
朝になると全ての生徒が巨大な体育館に集められ、校長ではなくイルミナ長官のベルトリッヒが挨拶を始めている。
「単刀直入に言いますと、北地道がOOOの手に落ちました。
ともすれば、この地に攻め込んで来るのも時間の問題になります」
長官の言葉に体育館はどよめきが広がり、私もクラスメイトと視線を合わせるしか出来なかった。
「ですので、この学校をイルミナ東北の拠点にし、日本の人々を守りたいと考えています。
神々の選びし者だけが住まう世界、それを阻止しなければ我らの未来、親しい者の未来は失ってしまいます。
……あなた達は我らの希望であり力でもあります。
その命を削ることは本望ではありませんが、今を守らなければ未来がないのも事実。
そこで、力ある生徒を選出し途上の生徒は別地区にある学校へ避難して頂こうと考えてます。
では、教室に戻り先生方から詳しく説明を受けて下さい」
戸惑いの声が収まらない中、各々が教室へと重い足取りを向けた。
000は、神々と選ばれた人々だけの世界を創ろうとしていると私は教わり、選ばれなかった者と歯向かう者は存在を消されるのだと。
そんな世界はあってはならないと思い、私は反逆者の方舟と道を共にすることを選んだのだ。
「皆さん、席に着きましたか?
では、用紙を配り詳しく説明します」
先生が教壇に立つと、今まで飛び交っていた不安の声はぴたりと止んだ。
「名前のない生徒は力ある生徒とし、後程この場所に留まるかを聞きたいと思っています。
名前のある生徒は隣に書いてある学校に編入し、更なる力を身に付けて貰いたいと思います」
同学年の生徒が名がズラリと並ぶ中に、私の名前は……無かった。
「あの、先生!
私、覚醒してないのに名前がない……んですけど……」
「そのことですが、覚醒していない生徒は優先的に選びました。
特に戦闘経験のある五名は出来るならば残って欲しいと考えています。
それと、選定基準に関しては戦闘経験と戦闘技術、特殊能力を考慮した上で選んだので異議のないように」
未覚醒は私と雷羅、その他に生徒会長だとは知っているが他の二名に関しては聞いていない。
「では、今日はこれでお終いです。
授業はありませんが、部屋の片付けなどをお願いします。
名前の無かった生徒は進路指導室に。
それと、火野さんはこのあと生徒会室にお願いします」
戦争のない日本に産まれ平和だった日々が一変したのだと、個人の戦いとは違う情勢に巻き込まれた私の胸中は不安でいっぱいになっていた。