新生活
爽やかな秋風に紅の木々は躍り、私は新たな生活を踏み出した。
「東城都から来ました、火野神楽です。
これから一緒に過ごすことになりますので、宜しくお願いします」
あれから地元の友達と遊びつつ色々と考えてみた。
命の危険とは無縁な彼女らが自然災害と思われている事象に襲われたり、いつしか能力に目覚め戦うことを強いられたらと。
遊べば遊ぶほどに悲しみと守りたい気持ちに晒され、遂には両親に転校について相談した結果、転入初日を迎えることになった。
「では、火野さん。
あちらの席に着いてください」
一つ空いてる席に着き、何事もなく授業を終えると私の周りには人だかりが出来ていた。
「ねぇねぇ!
火野さんって、どんな能力?」
「火野さんの神名って何?」
「火野さん、火野さん……」
「ちょっ、ちょっと待って!
一つずつ話すから、待って!」
あまりの質問責めに若干引きぎみになってしまうが、これからのことを考えると無下にも出来なかった。
「はぁぁぁぁ。
休み時間の度にあれじゃあ参っちゃうわ」
全ての授業が終わると直ぐに隣のクラスに行き、雷羅の手を取り校舎を後にした。
「仕方ないってぇ。
転校してきたら、みんなそんなもんだから。
能力が使える=異端児扱いされて来たんだからさ、仲間意識が強くなるってもんなの」
「雷羅もそうだった?」
「あたし?
あたしの時はもっと酷かったよ。
何せ、覚醒していない神の力を持つ者が中学生で来るって広まってたみたいだからねぇ」
「やっぱり、大体は覚醒してるってことなのね。
で、どうやってやり過ごしたの?」
「ん?
ぶちギレた。
って言っても、先生が直ぐに止めに入って、お互いが謝ることで理解を深めたって感じかな」
上鳴雷羅。
短めの髪と猫目という見た目から活発そうに思えるが、運動少女や不良といった類いとはまた違う感じを受ける。
そんな雷羅は私と違うタイプなのに、何故かお互いが気に入っていた。
「雷羅はさ、部活とかはしないんだ」
「やってもいいんだけどさ、かったるい感じがしちゃって。
生き死にのやり取りしてるんだから、好きなことに時間を使いたいなと思ったらねぇ。
だから、部活なんかより買い物行って好きな服を見たり、美味しいもの食べたりしてんだよね」
「そっか、そうだよね。
私達は普通の女子高生じゃないんだもんね……。
あっ、また談話室で待ってるから」
そうして新たな生活の始まりが終わりを迎え、これから過ごして行く事への気持ちも固まりつつあった。