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第二世界


「異世界であるはずなのに、同じ言語。 もちろん私は、君よりも早くその事実を知ったわけだから、君のようには驚かなかった。 けれど、人見啓人、君はさぞ驚いただろう? 君は最初、ここを異世界だとは認識しなかったはずだ。 どこか遠くの、見知らぬ土地……。 そう、考えたのではないか?」


 家守恭介の言う通りだ。 俺は、『扉』を通じてこの世界に初めて来た時、この世界を異世界だと認識しなかった。

 しかし、恭介と出会い、色々な話を聞くうちに、この世界が俺のいた世界とは別の世界であることを理解するようになっていた。

 

「ああ。 最初はそうだった。 何せ、言葉が普通に通じるんだ。 この世界の言語……日本語や英語を始めとする様々な言語は、俺の世界でも使われていた。 それが日本国の言葉だとか、そんな風には捉えていなかったけどな。 古くから伝えられた言葉として、使われていたんだ」

「ほう……。 それは興味深い」

「言語だけじゃない。 文化や風習も、似通っている部分が随所に見受けられた。 食事も。 自然も。 動物も。 世界は違えど、世界を構成する要素はそう大きく違ったものではなかったんだ」


 だから、俺はこの世界に思っていたよりも早く馴染むことができた。

 

「……俺は最初、この世界が俺のいた世界から言語やら様々なものを取り入れたと思ったんだ。 現に、第一世界と第二世界を繋ぐ『扉』があるんだ。 大昔にも同じようなことがあって、誰かが第二世界から第一世界へ色々な技術、文化、知識などを輸入したんだと考えたんだ。 ……でも、それは違かった」

「ほう……。 やはり、気づいたのか。 人見啓人。 君は本当に賢い青年だ。 実に素晴らしい」


 この男に褒められてもまったく嬉しくないから不思議だ。 とにかく、話を続けよう。

 

「気づいたきっかけは、本当にふざけたものだったよ。 ……たまたまやってみようと思った、オンラインゲーム。 大人気のMMORPG、セカンドワールドストーリー。 このゲームをプレイして、俺は気づいたんだ」 

 

 セカンドワールドストーリー。 略して、セカスト。 勇人の姉、鎌桐祈里かまきりいのりもプレイしていた、人気のネトゲだ。


「啓人……? 何を、言って……」


 急にネトゲの話をし始める俺に、戸惑う桃子。 俺だって、本当に馬鹿げていると思う。

 

「セカンドワールドストーリーの世界観は……どこか俺のいた世界に似ていた。 いや、あまりにも似すぎていたんだ。 もちろん、地名なんかは異なっているし、大陸の形にも微妙に差異があったけど、俺のいた世界の面影がそこにはあったんだ。 偶然とは言えない。 本当に、質の悪い冗談だと思ったよ」

「……本当、なの……?」

「本当だよ。 一度俺は、こう考えた。 このゲームは、第二世界を模して作られた世界観を持つ、ゲームだと。 このゲーム制作者が、第二世界を知っていて、第二世界を参考にセカンドワールドストーリーというゲームを作ったのだと」

「ほう……。 確かに、そう考えるのが第二世界の住人である君にとっては自然だ」


 そう。 まさか、思うはずがない。 けれど……。

 

「……でも、違うんだな。 この世界――第一世界の歴史を学べば学ぶほど、どれだけ第二世界の歴史があやふやで、どこかおかしいことに俺は気づいていった。 自身の使う言語が、昔から伝えられていた程度の理解しかないんだもんな。 そしてそれに、多くの人たちは疑問を持たなかった。 俺のいた世界は、色々なものがうまく繋がらない。 第二世界は、どこかおかしいんだ」

「ほうほう……。 やはり君は聡明だ。 素晴らしい、素晴らしいぞ、人見啓人……。 君は、君が認めたくないであろう一つの解答に辿り着いたというわけだ」    


 認めたくない、ある真実。 それは、

 

「……逆、なんだろ。 俺のいた世界が、セカンドワールドストーリーを元にして創られた、世界なんだろ……?」


 第二世界。 

 この世界――第一世界の住人が便宜上、俺たちのいた世界を第二世界と呼称していた。

 第二世界の住人である俺からすれば、この世界が第二だと言いたくなる。

 けれど、彼らは間違っていなかった。 俺のいた世界は、第二世界と呼ぶに相応しい世界でしかなかった。

 

「その通り。 君のいた世界は、この世界の住人によって創られた世界だ。 全くもって、馬鹿げた話だろう?」


 作られた、世界。 第二世界は……。 俺のいた、世界は……。 あまりにも馬鹿げた世界だった。

     

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