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犯人特定までの軌跡(前半)

 

「まず、事件について軽くおさらいをしておくか。 っても、犯人特定に関係のある部分だけな」

 

 勇人が事件について話し始める。 昼休みの教室はそれなりに騒がしいが、ある程度騒がしい方がこういう話はしやすい。

 

「最初の事件が起きたのは、今年三月末の夜。 それから一週間も経たない内に二人目、三人目と被害者が出て大騒ぎになったわけだがよ、その三人目の被害者が重要だったんだ」

「犯人特定の鍵だったのか?」

「そういうこった。 三人目の被害者、平松孝之ひらまつたかゆき四十二歳会社員男性。 勤務先はS社。 IT関係の会社らしい。 I県H市内の公園にて、遺体で発見。 遺体の状態は……」

「……ストップ。 遺体の状態とかは話さなくていいぞ。 一応昼飯時だし、五木もあんまり聞きたくないだろう」

「そ、そうですね……。 グロいのは苦手です」

 

 たはは、と苦笑いをする五木。 

 遺体というワードを聞き、何か想像してしまったのだろうか。 顔色が少し悪くなっている。

 

「おっと、俺としたことがその辺りの配慮が足りてなかったか。 まあ、遺体の状態なんて今回はどうでもいいか。 続き、いくぞ」

 

 と言って、話を続ける勇人。 勇人は結構、こういう話をするのが好きだったりするのかもしれない。 随分とノリノリだ。

 

「次に、今年四月の中旬頃犠牲になった、五人目の被害者、花田勇介はなだゆうすけ二十四歳会社員男性。 遺体はY県Y市内の国道沿いにある、人通りの少ないトンネルの中で発見。 この花田勇介って被害者が、高校卒業までA県H市内に住んでいて、A県H市内の中学校、高校に通っていた過去を持つわけよ」


 教室の黒板前に集まっているグループが何やら賑やかそうだ。 見てみると、トランプで遊んでいるようだった。

 賑やかにトランプで遊んでいる人たちがいる中、俺たち三人は盛り上がるには不謹慎な話題に触れているという。 

 

 一つの教室内にいる生徒たちそれぞれに、それぞれの昼の過ごし方があるといっても、これにはなんだか落差を感じてしまう。 

 

「で、次の事件が起きたのは、四月下旬の夜。 六人目の被害者、大江達也おおえたつや三十七歳会社員男性。 I県M市内某所の駐車場にて、遺体で発見。 勤務先はA社。 A社も三人目の被害者の勤務先同様、IT関係の会社らしい」

 

 連続で話し続けて口の中が渇いたのか、お茶を飲もうとする勇人。 

 だが、すぐにペットボトルの中身がないことに気づき、仕方なく乾いた口のままで話し続ける。

 

「まあ、ここまでは遺体の状態がありえないものだったり、事件現場がすべて東北の方だったとかそのくらいの共通点しか見つからなかったわけだけどよ」

「九人目の被害者で結構な手がかりがあったんだよな」

「ああ。 五月下旬の夜。 九人目の被害者、高山優希たかやまゆうき二十四歳会社員男性。 遺体はM県S市内の被害者の自宅であるマンションの一室で発見。 何より注目すべきは……」

「……五人目の被害者、花田勇介さんと同じく高校卒業までA県H市内に住んでいて、花田さんと同じ中学、高校に通っていて、更には同じ学年で同じクラスで友人関係にあったってこと……ですよね」

 

 ずっと聞いているだけだった五木が、勇人に代わって続きを述べる。 

 五人目と九人目の被害者の共通点。 

 同じ学校出身。 

 これは、この事件の重要なポイントだ。

 

「そういうわけよ。 五木さんの言う通りに、花田勇介と高山優希は友人関係。 こうなると、被害者が無差別に選ばれているわけじゃないと誰でも思うよな」

「そうだな。 数十人規模ならまだしも、たった十一人の被害者の中から友人関係にある人物がいたとなると、偶然とは言い難いな」

「……その通りだけどよ、人見はサラッと恐ろしいことを言うよな。 数十人規模も殺されるような殺人事件が発生してたまるかよ」

「まあ、起きそうにないからこそ言える例え話ってことで……」

 

 言われて気づく。 

 確かに俺の言い方は、人の命を軽視した言い方だった。 たった十一人って言い方もよろしくない。

 勇人も五木も、さほど何とも思っていないのかもしれないが、発言には気をつけなければ。

 

「とまあ、事件について軽くおさらいが終わったところで、ここからが今回の話のメインな。 犯人がどうして特定されたのか。 たぶん人見も五木さんも知っているように、つい最近――ちょうど十人目と十一人目の被害者が出た日の夜。 匿名掲示板にある画像がアップロードされたわけよ」

「……花田勇介さんと高山優希さんの母校である高校の、卒業アルバム。 クラス紹介のページですね」

  

 五木もここまでは知っているようだ。 俺もここまでは知っているし。 桃子経由だが。

 

「そうそう。 その画像がネット上の各所に拡散され、この中に犯人がいると騒がれ、犯人探しみたいなのが始まったわけだがよ。 なんで同じクラスに犯人がいると思われたか、実は知らない人も多いんじゃねーか?」

「言われてみれば、確かに……」

 

 中学、高校と同じだった花田勇介と高山優希。 

 二人を知っている人物が犯人だとして、なぜ高校三年生の時のクラスメイトに限定されたのだろうか。

 

 単に、アップロードされた画像が、高校三年の時のだったからなのか。 アップロードされた画像が、中学の時の卒業アルバムであったのなら、そこから犯人が探されたのだろうか。 

 

 これは桃子からではなくニュースを見て知ったことだが、高校一年と二年では、花田と高山は違うクラスだったという。 

 だが、中学では二年、三年と花田と高山は同じクラスだったらしい。 中学の時の同級生が犯人である可能性も高いはずだ。 


 いや、待てよ……。 

 花田と高山と同じ中学、高校の生徒が他にいないとも思えない。 中学まで遡れば、更に犯人候補を絞れるわけだ。

 

「わたし、ネットで見たことがあります……。 花田勇介さんと高山優希さんは、中学、高校と結構問題のある生徒だったって。 高校三年の時も酷かったらしく、元同級生だと思われる人物がネット上で色々暴露してたみたいです……」

「酷かったっていうのは、周りに危害を加えていたとか? ……イジメとかかな」

「……そうです。 酷いイジメを受けていた生徒がいたらしく、その生徒が犯人なんじゃないかって。 その生徒が誰なのかまでは書かれていませんでしたが、きっと元同級生はみんなわかっているんだと思います」


 同じ教室で一年間。 わからないはずがない。 


「なんだ、五木さん結構知ってるじゃん。 その通りでよ、元同級生たちは花田と高山に恨みのある人物を知っている状態だった。 でも、その人物が殺人犯であると断言できる材料はなかったんだ。 人を殺すような人には見えなかったってのもあるだろうし、当時殺すならまだしも、高校卒業から五年以上も後だしな」

「それもそうだな……」

「あいつが今頃になって高山と花田を殺すか? って思ったんだろーな。 二人を良く思っていなかった人物なら他にもいないわけじゃねーだろうし」

  

 だけど、犯人である可能性が高いのは変わらず、といったところだろう。 

 そもそも人を殺すように見えるか見えないかなんて、そこらの人にわかるのだろうか。

 

「で、結局特定された犯人は、その人物だったってオチだろ?」

「……おいおい。 答えを先に言わせるなよ? まあ、そうなんだけどな。 ネット上である指摘があってだな。 そこから発展して、元同級生がSNS上である事実を書き込んでしまうわけだ」

 

 まさかの正解。

 

「ある指摘……ですか? それは、一体……?」

 

 最初はそこまで聞き入ってなかった五木が、今ではすっかり聞き入っているようで、勇人に続きを促している。

 

「そのある指摘ってのはな、花田と高山が同じ中学、高校だったように、他にも二人と同じ中学、高校に通っていた生徒がいるんじゃないかって指摘でな。 もしそんな生徒がいるとして、二人と高校三年の時に同じクラスメイトだったとしたら……」

「より、花田と高山に関係ある人物だということになるな。 付き合いが長いほど、芽生える感情も色々だろうし」


 それこそ、イジメたイジメられたの関係のみならず。 仲良く遊んでいたような関係でさえ、その中には明るい感情だけがあるわけではないだろう。


「そーいうわけよ。 そんな指摘を見てあることに気づいたのか、高三の時被害者二人と同じクラスだった人物が、SNS上でつい書き込んでしまうわけだ。 A君が花田と高山と同じ中学だったって」

「A君ってのが、元同級生たちが知っている、花田と高山にイジメられていた生徒だったのか」

「そう。 俺はあえて名前は伏せておくけどよ、元同級生の子がSNS上で、A君が花田と高山の二人と同じ中学出身で、高三の時に二人にイジメられていたという情報に加え、A君のフルネームを晒したんだ。 その元同級生の子はすぐに自分の発言を削除してアカウントに鍵をかけたみたいだけど、既にスクリーンショットを撮られてるし、もう無かったことにはできない状態になっている、というわけよ」

「ここまでくると、もうそのイジメられていた子――A君以上に犯人である可能性が高い人はいないって流れになりますよね」

 

 中学の時から評判のよろしくない花田と高山の二人だ。 高校三年の時だけイジメていたと考えるよりは、中学からずっと……と考えた方が良いだろう。

 

 そう考えると、中学高校と長きに渡りイジメを受けていたそのA君とやらは二人に対して強い恨みを抱いているに違いない。

 

 それこそ、殺したいと思うほどの。


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