生き方
五木の住むマンションからしばらく歩いたところに、川がある。
街を半分に割くよう流れるその川には、昼間、犬の散歩をしに来る人や、ジョギングをしに来る人がいる。
けれど、今の時間帯は誰もおらず、聞こえるのは、流水音に虫やカエルの鳴き声のみ。
引きこもり生活を満喫していた頃、俺はよく、一人でこの川まで夜の散歩をしに来ていた。
ただフラフラと歩くだけで、まったく運動をしないよりはマシというレベルの日課だったが、あれはあれで良いものだった。 川のせせらぎを聞きながら歩いていると、随分と落ち着いた気持ちになれたものだ。
それは、五木と共に歩いている今も同じだ。 一人で歩こうが、二人で歩こうが、この耳に届く川の流れる音は変わらない。
「五木、聞きたいことがあるんだ」
「聞きたいこと……?」
嫌われるかもしれないだとか、そんな恐れはもうなかった。
五木からどう思われようが構わないということではない。 例え俺を嫌うようなことになっても、それがそのまま続くとは思わないからだ。
「前にも一度聞いたことなんだけど、やっぱり気になってさ。 五木、一日だけ学校休んだろ? その理由が知りたいんだ。 教えて欲しい」
「……どうして、知りたいんですか?」
「気になるからじゃ、ダメか?」
「そんなに、気になりますか?」
「ああ、気になる。 隠しごとをされると、かえって気になるものだろ?」
「それはそうですけど……。 別に、隠し事ってわけでもないんです。 ただ、わざわざ人に言うようなものでもないと思って……」
「人に言うようなものでもない? それは、どういう――」
「祖父が、死んだんです」
「………………」
五木の祖父が死んだ。
人はいつか死ぬわけだし、今この瞬間にも死んでいる人はいるだろう。 だから、人が死んだからといって、特別驚くこともない。
……なんてことは思わなかった。
俺は、例え俺と直接関わりのない人の死であっても、ああ、死んだんですかそうですかと受け流せるほど冷めた死生観を持っているわけではない。
それは、この世界よりも死が日常的だった第二世界にいた時から変わらない。
多くの死を見てきたからといって、人の死に対して何とも思わなくなるなんてことは決してなかったのだ。
「だから、わたしは学校を休んだんです。 忌引ってやつですね。 欠席扱いにはならないので、無遅刻無欠席のままみたいですよ」
あくまで明るく振る舞おうとする五木。 五木は、祖父の死を担任教師以外には伝えなかった。 きっと、変に気を使われるのが嫌だったとか、色々と複雑な理由があるのだろう。
けれど、そうやって悲しいことを一人で抱え込んで生きていくのは、自分自身を余計傷つけることになる。
人は、自分が思っているほど強くないのだから。 その傷に耐えられるようで、耐えられない。
「……それは、辛かったな」
「はい……。 でも、祖父が近いうちに死んでしまうことは、予めわかっていたんです」
「わかっていた?」
「はい。 祖父は数年前に脚を悪くしてから身体が不自由になり、介護が必要な状態になっていたんです。 わたし、動けなくなった人があんなに早く衰えていくだなんて、知りませんでした」
「………………」
「そんな祖父に会うため、祖父の家へ行った時、祖父はまだ、わたしが誰なのかわかっていました。 寝たきりで、食事もほとんど食べられなくなってて、トイレへ行くのに他人の助けが必要でも……。 わたしのことを、ちゃんと覚えていたんです」
そう話す五木の声は、震えていた。 心の奥深くにしまい込んでいたはずの感情が、言葉と共に吐き出されていく。
「それからしばらくして、祖父は入院しました。 祖父は、口から食べ物を食べられなくなっていたんです。 人見君は、胃ろうって知っていますか?」
「胃ろう……? 知らないな」
「口から食事を摂ることのできない人が、直接、胃に栄養を入れるために、胃に穴を開けるんです。 その穴のことを、胃ろうって言うんだそうです。 祖父は、その胃ろうを作る手術を受けたんです」
「……だから、入院を……」
「わたし、他にも色んなことを知りました。 寝たきりになると、床ずれが起きるんです。 床ずれというのは、体重で皮膚が長時間圧迫され、血流が悪くなって、皮膚が赤くなったり爛れたりすることなんですけど……。 悪化すると、骨に近いところの組織まで壊死してしまうんです。 寝返りがうてないだけでそんなことになっちゃうなんて、信じられませんよね」
五木は、まるで自らの感情に押し潰されないよう、淡々と事実だけを述べて気を紛らわそうとしているように見えた。
「後、わたしの祖父は鼻からチューブを入れられて、痰の吸引なんかもされてました。 自分の力で痰が出せないからだそうです。 たまたま、吸引しているところを見る機会があったんですが、とても苦しそうで見ていられなくて、目をそらしてしまいました。 ……ちなみに、祖父の死因は肺炎でした。 寝たきりになった高齢者は、肺炎になって死ぬことが多いそうです。 肺炎って、日本人の死因の第三位なんですよ。 わたし、知りませんでした」
「…………五木」
「言い忘れてましたが、祖父というのは、母方の祖父のことです。 それでですね、わたしが痰の吸引を見たことからもわかると思いますが、つい先月、入院している祖父に会いに行ったんですよ。 祖父は……わたしのことなんて、覚えていませんでした。 それどころか、母のことだって、祖母のことだって、忘れていたんです。 寝たきりになると、脳への刺激が少なくなって、認知症になりやすくなると聞いたことはありましたが、正直、ショックでした」
辛いのは五木のはずなのに。
これ以上話を聞くのが辛くなっている、俺がいた。
「わたしは、祖父とあまり会話をした記憶がありません。 それでも、祖父の家へ遊びに行った時には、ただ孫娘というだけのわたしに対して、優しい笑顔を見せてくれました。 そんな祖父が、わたしも母も祖母も……自分自身のことさえも忘れて、目の前にいたわたしたちに向けて放った言葉は、何だと思いますか?」
「………………」
「殺してくれ、ですよ。 祖父は、認知症になって、何もかも忘れても、自分が今、死にたいくらいに辛い状態だってことは、わかっていたんです」
俺は、耳を塞ぎたくなった。
どうしてこんな仕打ちを五木が受けなければならないのだろう。 かけがえのない家族が自ら死を望むほどに苦しんでいる様を見せられて、五木や五木の母は、何を思ったのか。
想像するだけで、胸が苦しくなる。
「人見君……。 祖父は……幸せだったんでしょうか? わたしの何倍も長い時間を生きてきて、辛いこともたくさん乗り越えてきて……。 それなのに、最期は自分が何者かも忘れて、病院で苦しみながら死んだんですよ? 最後の最後に残ったものが、自ら死を望むほどの苦痛だなんて……」
五木の祖父の死は、理想的な死とは言えないだろう。
他人どころか、自分が何者なのかさえも忘れ、死ぬ。
過去を失い、現在に苦しみ、未来にも希望はない。
約束されているのは、ただ冷たく寂しい死のみ。
「……わたし、もう、嫌なんです」
俺が問いに答える前に、五木がまた話し始める。 溢れ出す感情が、五木に沈黙を許さない。
「結局わたしは、祖父の期待に応えられませんでした。 わたしが期待に応えられないまま、祖父は死んでしましました」
「期待に応えるって……」
「人見君にだいぶ前に言われましたが、わたし、人に対して消極的なんですよ。 例え、相手が家族であっても。 だから、祖父にとってわたしは、あまり良い孫娘とは言えなかったんだろうと思います」
「……どうしてそう言えるんだ?」
「だって、わたしは……。 祖父と、もっと色んなことを話して、一緒に笑いあったりするべきだったのに、それを……してこなかった」
「………………」
やはり、五木紗羽はこういう人間なのか。
「わたしと祖父の関係は……。 街なんかを歩いていて見かける孫と祖父母の関係とは、違いました。 わたしはいつも、どこかよそよそしくて。 黙り込んでいて、物置みたいな存在で……」
思い描く理想の自分と、現実の自分。
その差にいつも、五木は苦しんでいるんだ。
生きていて関わっていく一人ひとりに対し、自分はどうあるべきか。
それを想像し、けれど実現できず。
その苦い経験を積み重ねてきた五木が辿り着いた答え。
それこそが、人との関わりに消極的な姿勢。
他者への好意どころか、嫌悪する感情さえも抑え込んで。
自分の心に、嘘をついているんだ。
「……わたしは、いつもそうです。 いつだって、思うように人と接することができないんです」
五木は、泣いていた。
けれどまだ、涙だけ。
感情を溶かし込んだ雫を瞳から零しながらも、その表情を大きく崩さぬよう、耐えている。
「人と関わるってことは、いつかその人と別れることでもありますよね……? わたしと祖父のように、死によって別れることもあります。 互いに生きていても、二度と会わない人だっているかもしれません」
でも、それも長くは持たないだろう。
「その別れの度に、後悔するのは……もう、嫌なんです……! わたし、人と関わっていくのが、怖い……。 失望されたまま、終わらせたくないんです……!」
五木の表情は、その強い感情に抗えない。
何故なら、俺は知っているから。
五木が今まで俺に見せてくれた、様々な表情。
それは確かに、五木の心を表してきていたのだから。
「わたし、変、ですよね……? こんなこと、いちいち考える必要もないようなことなのに。 でも、わたしは……こういう人間なんです。 周りの人たちのように器用には生きていけない、不器用な人間なんです」
「……五木」
立ち止まり、言葉を発する。
今、俺は何を言うべきなのか。
それはもう、決まっていた。
「俺さ、五木を見ていて辛いなって思う時が、結構あるんだ」
「え……? どうして、ですか……?」
俺がそれらしいことを言って、五木の悩みを解決することも可能かもしれないけれど――。
俺がすべきは、そんなことじゃない。 俺の本心を、ただ伝えればいいんだ。
「だって五木は、優しすぎるから……。 それが五木の処世術だってわかってはいるけどさ、それでも見ていて辛いんだよ」
もっと自己中心的に生きてもいいだろと、何度も思った。
「五木がどんなに優しくても、五木以外の多くの人間はそうじゃない。 優しくないどころか、他人にどこまでも酷いことが出来る人間だっているんだ。 世の中さ、辛いことや苦しいことや上手くいかないことがあまりにも多すぎて……。 みんながみんな、他人に優しくできる余裕なんて持っていないんだ」
それなのに――。
「それなのに五木は、いつだって他人に優しくあろうとする。 期待に応えようとする。 理想を現実にしようとする。 そりゃ、そんな生き方を続けていれば、人と関わるのが嫌になって当然だ。 五木も自覚しているように、その不器用な生き方さえやめてしまえば、五木はもっと楽に人と関わって生きていくことができるんだよ」
「……わかってます、わかっているんです。 でもわたしには、それができないから――」
もっと楽に生きろと口で言うのは簡単だ。
他人じゃなくて、もっと自分に優しくしろと言ってやることだって、容易い。
しかし、そう簡単に人は今までの生き方を変えることはできない。 だからこそ苦悩するんだ。
「ああ、知ってるよ。 五木は今までの生き方を変えられない。 いや、変える必要なんてないんだ」
「…………………………?」
生き方を変えられない人はそのまま苦悩し続けるのか?
世の中に生き辛さを感じながら、日々を過ごしていく他ないのか?
……そんなことはないと、俺は思う。
「簡単なことだったんだ。 五木の生き方を否定するんじゃない。 その生き方を肯定したままでも良い。 五木のその優しさは、間違ってなんかいないんだから」
少なくとも俺は、五木の生き方に救われているのだから。
「もちろん、五木の優しさに対して何とも思わない人はいる。 それどころか、冷たい反応をする人だっていると思う。 でも、気づいてくれる人は気づいてくれるから――。 五木に救われる人は、絶対にいるんだよ。 他でもない、この俺だって」
「人見君が……?」
「ああ、そうだ。 心の中では感謝していても、わかりやすく感謝してくれる人は少ないかもしれない。 だから、そいつらの分まで俺がわかりやすく、何度だって感謝してやるよ」
俺が言うべきは、生き方を変えろだなんてことじゃない。
「その気持ちはとても嬉しいですけど……。 そうやって人見君に優しくされればされるほど、苦しくなるんです……。 どうしたらいいか、わからなくなるんです……!」
「……今みたいに、苦しいって伝えてくれればいいんだよ。 そうすれば、少なくとも俺は、その気持ちに堂々と向き合うことができる。 その苦しさを和らげようと行動することだってできるんだ」
何の為に、他人がいるのか。
明確に分けられた自己と他者。 異なる思考を持つ存在。 永遠に、一つになることはできない。
だからこそ、他者は大きな助けとなる。 別個の存在だからこそ、新しい道を切り拓くことができる。
「だから五木は生き方を変えるんじゃなくて、気づくだけで良かったんだ。 五木のことを、ちゃんと見てくれている人たちに」
「わたしのことを、ちゃんと見てくれている人……?」
「一応言っておくと、俺だけじゃないからな。 五木が気づかないだけで、五木のことをちゃんと見てくれている人はたくさんいる。 桃子や蟻塚、勇人はもちろん、もしかすると先生や同じクラスの何人かだって見てくれているかもしれない。 けれど、みんなが見ているだけの状態から一歩踏み出すのは、難しい。 何故ならみんなもどうしたらいいかわからないからだ。 五木の心が読めるわけじゃない。 自分が五木に何が出来るかなんてわからない。 もし、その行為で余計傷つけることになったらどうしよう。 ……様々な葛藤から、みんな勇気を出せずにいるんだ」
勇気を出すことは難しい。
それは、助けを求める側も、助ける側も同じことだ。 そう簡単に勇気が出せるのなら、苦労はしない。
「じゃあ、どうすればみんなが一歩踏み出せるのか。 どんなきっかけがあればいいのか。 それに俺は、答えることができない。 俺はさ、きっかけなんてものは、案外後からあれがきっかけだったなと気づくようなものなんだと思ってる。 だから――」
俺が提案できることは、ただ一つ。
「五木は、五木をちゃんと見てくれている人たちと共に生きていけばいいんだよ。 互いが互いの心に踏み込むきっかけなんかも、全部そこから始まると思うんだ」
共に生きる。
いきなり五木を救うヒーローが都合よく現れるだなんてロマンチックな展開が起きることは、まずありえない。
他者を拒み、一人で生きている限り、誰も救おうとしてはくれないのだ。 何より、救いを求めているはずの本人が救わせようとしていないのだから。
「……人見君。 それって、結局は生き方を変えることになるんじゃないですか……?」
「結果的にはそうなるのかもしれない。 でもその変化は、五木が自分に嘘をついて無理に作り上げるものじゃない。 他人の存在によって、自然に作られていく変化だ。 だいたい人の生き方なんてものは、永遠に固定化されたものではないだろ? 一人では変えられなくても、自分以外の誰かとなら簡単に変えられる。 そんなことがあったって、おかしくない」
この提案こそが、俺の本心だ。
五木が今生きることに苦しんでいて。
それを変えたくても自分で変えることができないと言うのなら。
俺が、変えてしまえばいい――。
「だから、五木……。 今度は俺の番なんだよ。 五木には全く自覚がないのかもしれないけど、他の誰でもないこの俺が、五木たちによって生き方を変えることができたんだ。 だったら、今度は俺が、五木の生き方を変える番だろ?」
俺はもう、見ているだけでは我慢できない。 見ているだけの状態から一歩前へ踏み出すきっかけを、もう手に入れてしまっているのだから。
「…………そんな都合の良いことがあっても、いいんですか……?」
束の間の空白の後、五木が俺に言葉を返す。
その顔に映る表情は、嬉しいのか悲しいのか判然としない。 困惑がまだ、強く残っている。
「いいんだよ。 別に、都合の良いことでもないって。 前も言ったけど、今の俺と五木の関係を作り上げたのは、俺だけじゃないんだ。 俺と五木が共に作り上げたんだよ」
その困惑を晴らす為に、言葉を吐き出す。 不思議なことに、悲しくもないのに俺の瞳は潤んでいた。
「それだけじゃない――。 五木が気づかないだけで、五木は他にも作ってるんだ。 五木が他人に向けた優しさは、その全てが全て無駄になっているわけじゃないんだよ。 五木が思っている以上に、五木の築き上げてきた人との絆は温かくて、優しいものなんだ」
五木がそのことに気づくのはもっと後かもしれないけど……。
いつか、五木にもわかる日が訪れる。
「……本当にそうなのだとしたら、何だか不思議です。 わたしの知らない間に、わたしは人見君の生き方を変えていたんですね」
「そういうこった。 ……ほらな、人間関係なんてたいしたことないだろ?」
「……そうですね。 今はわたし、その言葉を否定する気にはなれないです――」
そう言って五木は、今まで我慢していた分全てを放出するように号泣した。
泣き顔を俺に見られたくないのか、その顔を俺の胸に押し当てながら、泣いた。
五木の涙は地に落ちることなく、俺の服に染み込んでいった。
それからしばらくして、ようやく五木が落ち着いてきた時。
「――――ッ――――!?」
ゾクリと、頭頂部から全身を貫くような感覚に襲われた。
この感覚は……。 俺が仕掛けた設置魔術によるものだ。 その設置魔術が、魔術を探知した感覚だ。
よりによって、こんなタイミングで……!
「……人見君?」
俺の異変に気づき、ついさっきまで俺の胸に押し当てていたその顔を上に向け、俺の表情を伺う五木。
「……………………」
探知した魔術反応。 それは、ネアレスのものではない。
俺の知らない、誰か……。 そして、その近くには、蕭条さんと鬼山さんの反応を微かに感じる。
知らない誰かは魔術会の人間ではないだろう。 予め、この辺りに来ないよう、桃子を通して伝えてある。
迷っている暇はない。
俺は、設置魔術による攻撃を開始する。
「………………!?」
一体何が起きたのか。 俺が設置魔術による攻撃を開始して、僅か数秒後。
俺の設置魔術が、消えた……? 探知できなくなっている。 俺とつながっていない。
まさか……魔術無効化か?
だとすると、俺が侵入者に気づけなかったのも、魔術無効化によるもの……?
……早く、現場に急がなければ。
「……何か、あったんですか?」
「え……?」
でも、五木は……? このまま一人にするわけにもいかない。
何より、俺が戦う必要があるのなら、設置魔術を解く必要がある。
そうすると、ネアレスの気配を追うことが不可能になる。
五木がネアレスに狙われていないとも限らない。 ネアレスは恐らく、俺の人間関係をある程度知っている。
まず桃子たちに連絡してから……。
五木も、連れていくしかない。
(……ちょうどいい機会じゃないか)
そうだ。 もう、伝えてしまおう。
ここまで仲良くなってしまったんだ。 これ以上隠し続けるのは、誰よりも俺が辛い。
「……五木。 唐突だけど、今から俺は、ある場所まで急いで行かなきゃいけないことになった」
「ある場所……ですか?」
「そこはとても危険なところかもしれない。 本当は五木を連れて行きたくない。 目を逸らしたくなるようなものを見せることになるのかもしれない。 けれど……」
以前、桃子と俺が陥ったような間違いを再現したくない。 ここは、しっかり伝えるんだ。
「ここで、後悔するような選択はしたくない。 だから、一緒に来てくれるか?」
「…………はい!」
こうして俺は、五木と共に鬼山さんたちのいる場所へと向かうことにした。




