そんなのありか04
「ふぃ~、酷い目にあったぁっすぅっ」
「オメェがぁっ、そいつを言うのかぁ?」
後輩の呟きに、思わず額に青筋が…な。
結局、件の騒ぎで週末の休みは消し飛んでしまった。
いや…巻き込まれたのは…主任、係長、課長、部長、役員、社長、会長もだが…親会社の重役と社長も巻き込まれての騒動だったてぇ訳だ。
そもそも大林財団ってぇのは我が社の関連会社以外の他社にも出資している財団であり、日本も含め他国の企業にも大きな影響力を持っている財団なのだとか。
架橋やユダヤ筋などにも親戚が…って、他国の財閥系組織とも懇ろな…ってさ。
いや、いやいやいや…なに、それ…話が…ねぇっ。
普通は、余り知られることは無い内情らしく、我が社のトップ連中も詳しくは知らなかった内情なのだとか。
親会社の大会議室へと呼び出されて話を聞いた時、全員の顔色が変わり…つまり、さっ、蒼くなって冷や汗、ダラダラってな。
本来は平の俺や後輩が混ざる筈の無い会議なのだが…当事者としての事情徴収がなぁ。
いや、これって…絶対にぃっ、俺は巻き込まれてっだろーがよぉぅぃ!
「何で、俺が呼ばれるんすかねぇ?」って首を捻っていた後輩…いや…絶対にテメェのせいだかんなぁっ!
まぁ、ことの経緯を説明したところ、個人趣味で作ったカレーの評論を個人的にオープンサイトへ書き込んだだけって判断をな。
ま、まぁよぅ…普通は、その判断で良いんだけれども…さっ。
流石に大林財団の一員である大林 真様に失礼があっちぁっなぁぁぁんめぇぃがよぉぃ。
ましてや、俺っちの小汚ねぇボロアパートへご招待なんざぁ、トンでも無い話ってことにな。
いや…小汚いボロアパートって…まぁ、異論は…クソッ!
んでなっ、結局は俺がカレーを振舞う事になっていた今週の役員会なんだが…場所を替えることにな。
会社の大会議室からホテルのフロア貸切に。
参加者は親会社の役員、社長や顧問と我が社の社長と役員数名。
無論、大林 真様の参加も打診っとなるらしいな。
ま、それが眼目って感じになっちまったから、当然だわな。
そして部長も参加となっちまった様で…そら、俺のカレーを某テレビ局の料理コンテストへ申し込ませる段取りを付けた張本人だかんねぇぃ、そらぁ、仕方あんめぇぃよっ。
でっ、取り敢えずは俺がホテルの厨房を借りてカレーを作るってぇ話に落ち着いた訳で…一旦はお開きとなり開放されたのだがなぁ…
俺は自宅に戻って身支度や泊まりの準備などをな。
現在は、その為の帰宅中って訳だ。
………後輩は完全開放らしい…な。
なんだか。モヤッと…むぅ~むっ、なんか…納得できねぇぃぜっ!
そんな後輩も途中の駅にて下車。
ヤツは帰宅して身支度を整えてから会社だな。
「今から仕事っすかぁ~…有給、ダメっすかねぇ?」
取り敢えず、「ふ・ざ・け・ん・なっ!」って頭を叩いておいたよ、全く…
でな、家に帰って支度した後、指定されたホテルへと。
って…老舗の高級ホテルってヤツ、だ、ねぇっ。
流石にプライベートで使用できるレベルのホテルじゃない。
格が違うっうかね格調高いてぇかよぉぃ。
っか…さぁ、本当にぃっ、俺が此処のホテルの厨房で素人料理カレーの調理を?
手の平にもジワァ~って汗が…額からもよぅ。
じょ、冗談…だ、よ、なぁっ。
萎縮して戸惑ってると…ホテル側から人が現れてな。
「矢鷹 優様でしょうか」って声を掛けて来た訳よ、これが。
「んっ?ああ、そうだが…あんたは?」
思わず、な。
「これは失礼致しました。
私は、当ホテルの総支配人である藤堂 弘明と申します。
大林様より矢鷹様を丁寧に持て成し、調理補助の協力を行うように要請されております。
当ホテルの総料理長が調理補助を行ないますので、どうぞ、良しなにお願い申し上げます」
げぇっ!老舗高級ホテルの総料理長が俺の調理補助、だっ、とぉっ!
マジかぁぁぁぁっ!
「いやいやいやいやいやぁっ!
俺は趣味で作ったカレーを何故か作って提供する嵌めになっちまってるがっ!
そもそも、完全な素人料理、しかも趣味って言える程のレベルにもなって無い料理なんですがねぇっ!
そんな料理の調理にお宅の総料理長を補助に回すって…有得んでしょっ!」
思わず引いて告げてしまったぜぇぃ!
「いえいえ、ご謙遜なさらなくとも結構で御座いますよ。
何せ、あのっ、神の舌を持つと言われる大林 真様より特別にとご指示を承る程の方…
総料理長含め、当ホテルの料理人全てが遣る気になっておりますので」
い、いや…殺る気、じぁ…ねぇよ、ねぇ…
戸惑いながら総支配人に、ドナドナされて行く俺である。
そして、先ずは宿泊する部屋へと…って、をいっ!
な、なんて…VIPルーム!?
こんな部屋、個人で泊まったら…下手したら年収が飛んじまわっ!
かえって落ち着かねぇぞっ、コレ。
着替えるだけで気疲れしつつラフな服装へと着替える。
流石にスーツ姿で料理なんざぁ作れねぇよっ!
それに、コックコートなんざぁ…そう思いながら脱いだスーツを備え付けクローゼットへ入れようとしたら…入ってやしたよ、コックコート。
いや、マジでぇ!?
用意されているのを無視も出来めぇ。
だから着やしたよ、コックコート…人生初ってぇヤツだねぇ。
うん…似合ってねぇぇぇぇっ!!!