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そんなのありか03

部長と彩香嬢、後輩にカレーを振舞った翌日は何事もなく日常が過ぎて行ったのだが…

変化が現れ始めたのは週の半ば、水曜の午後辺りからだっただろうか。

俺のメーラーへ付き合いの無い他部署の女子社員よりメールがな。

いや…行き成りだったから戸惑ったのだが…どうやら彩香嬢経由にて、俺が振舞ったカレーについて知ったらしい。

彼女は結構な食通…いや、料理趣味が高じて料理教室の助手らしきことも行なっている女性(ひと)らしいな。

そんな彼女からしたら以前に彩香嬢に振舞ったカレーを遥かに超えると言い切られた俺のカレーに多大なる興味をだな。


って…をぃいぃっ!

彩香嬢ぉっ!何を喧伝してくれとるんねぇんやぁっ!


っうことで、是非とも俺のカレーを食したいのだとか。

いや…うん、ま、なんと言うか…この件が呼び水っとなったのか…他の女子社員からもメールや直接の依頼がな。

いやいやいや、いやぁぁっ!俺、料理人ちゃうかんねっ!


調理時間も掛かるし材料費もバカにならんことを告げて、かわしていたのだが…

週末に部長から変な依頼が舞い込む事に…


「矢鷹君、少し良いかね」っと。

仕事の話かと思い「何か御用でしょうか?」って軽く応えた訳だが、まさか、あのような…なぁ…

「うむ、実はな。

 うちの社のクライアントが協賛しているテレビ局にて素人のカレーコンクールが催されることとなってな。

 我が社にも協力依頼がなされておるのだよ」っとな。

俺は何気に…「そうなのですか…では、女子社員の何人かを応募させるので?」って応えた訳よ。

そら、テレビに映るってなればムサイ野郎よりは華麗なる女性ってヤツだろうさ。

そんな感じで軽く応えた俺の肩をガッシィッて感じで部長が掴んでな。

「何を言っておるのかねぇ、チミィ。

 君だよ、君ぃっ!

 矢鷹君が我が社の代表にてコンクール参加に決まっておるではないかねぇっ!」

い、いや…決まってんだ…って、をぉぃよぉっ!ちょっと待てぇぇぇぇっ!

「い、いやっ、む、無理ぃっ!

 無理、無理、無理、無理ぃぃぃぃっ!

 部長ぉぉぉっ、何を言ってるんでぇすかぁぁぁっ!

 こんなムサイ中年独身男を社の代表としてテレビの料理コンクールへ申し込ませるつもりなんですかぁっ!

 無茶言わんで下さいやぁぁぁっ!」

思わず悲鳴を上げちまったぜぇっ!


そんな俺に部長がな。

「はははははぁっ、何を言っておるのかね、矢鷹君。

 先週に私達に振舞ってくれたカレー、あれを提供する形で応募せずにどうするのかね?

 あれならばぁっ、絶対に勝つるに決まっておるではないかねっ!」


い、いや…協賛会社が関わるテレビ局の番組参加にて勝って良いものなのか…ねぇ?

そう戸惑う俺に部長が続ける。


「この話には社長や会長も乗り気でねぇ。

 それで、だ。

 役員の方々も含め、是非、一度、君のカレーを食したいとの話となっておるのだよ。

 来週の役員会までに是非とも用意してくれたまえ。

 準備するために、特別休暇が支給される。

 更に材料費は会社持ちで特別手当も支給だ。

 調理補助として社員食堂からの助っ人も用意される手筈となっておるのでな。

 よろしく頼むよ、チミィ」って、俺の肩をバンバンつてな。


いや…本当に…どうして、こうなったしぃ…

取り敢えずは来週の月曜から社員食堂の第2厨房を借りて作る事となった訳で。

必要な食材なども月曜に社食スタッフと一緒に調達へ赴く事にな。

いやいや、完全に畑違いなんっすがねぇ。

どうして、こうなったしぃ、とほほほほほぉっ。


そんなことがあり、沈んだ気分で迎えた週末。

自宅にて気落ちした俺が現実逃避気味にテレビを見ていると…ピィンポォーンってチャイムがな。

今日は誰も尋ねて来る予定は無かった筈だ、どうせ宗教関係か新聞勧誘辺りだろう。

そう思いつつも玄関へな。


「どなたですかぁ~」って気怠(けだる)く尋ねると…「せんぱぁ~いっ、俺、俺っすぅ」ってかぁ。

一挙に脱力致しやした。


「俺?俺俺詐欺は間に合ってまっすぅ」って、思わず応じてしまったぜぇぃ。

「先輩ぃ、酷いっすぅぅっ、可愛い後輩っすよぉぉぉっ!」

何処が可愛いんじゃぃ、ボォッケェェェェっ!

俺に劣らずムサイ野郎を、どう見たら可愛いって…意味が違うか…ま、良かろう。


「来る時は連絡しろっただろーがぁっ」って頭をガリガリと掻きながらもドアを開けてやると…

「それどころじゃ無いんっすよぉぉぉっ!

 一大事なんっす、一大事ぃぃっ!」

なんて事を言いながら家へと入って来る。


「何が一大事なんだ?

 もしかして、料理コンテストのことか?」って言ってやったら…キョトンととやがったよ、コイツ。

あ、そうか…昨日、有給取って休んでやがったか、コイツ。

ならば、料理コンテストへ俺が参加することになったことを知らんな、コヤツ…では、何が大変だって言うんだ?


「ふぅ、いや、何でも無い。

 で、お前の言う一大事って何だ?」

面倒臭そうに告げてやると傷付いたように後輩がな。

「先輩…何だか対応が御座なりっすぅ…っか、それどころじゃなかったっすぅ!」

気を取り直したように告げ始めるとだ。

「先輩っ!グル神っよ、グル神ぃっ!」

なんてことを言い始めた、って、グル神ぃ?んだぁ、そりゃぁっ?


俺がキョトンとした顔で後輩の顔をマジマジと見ていると…

「あ、あれ?反応が薄いっすねぇ…先輩…もしかして…グル神、御存知ない?」

ご存知無いって…知らんぞぃ、そんなモン。

「ああ、記憶に無いが…何だぁソレ?

 宗教関係か?」

宗教は間に合ってますってか。


「違うっすよぉっ!俺も宗教は関わんないっすぅっ!じゃ無くてですねっ、グルマンのグル神っすよぉっ!本当に知らないんすっぅかぁぁぁっ!」

一気に捲くし立てて来た訳だが…グルマン?グル神?何だぁっそりぁっ?

俺がキョトンっとして後輩の顔をマジマジと見ていると、後輩が説明して来る。


後輩の話によるとだ、Webサイトにて結構有名どころであるグルメサイトがグルマンらしいな。

グル神ってぇ野郎はだ、そのサイトの管理人でグルマンを立ち上げたらしいのだが…結構な美食家でな、コヤツの評論で飲食店の経営が左右される程なのだとか。

ほぉっ、そんな凄いヤツも居るんだなぁ。

そんな風に思っていたのだが…


「先輩ぃっ、何を他人事のようにしているんっすかぁっ!」

そんなことを後輩が曰い始めた、っか…他人事、だよ、な…うん。

「何を言ってるんだ、お前?

 グルマンだろーが、グル神だったけか?俺には関係あるまい」

だよな、うん。


そんな風に思っている俺に後輩が告げる。

「いやいやいや、いやっ!

 そのグル神が先輩に会いたいって…先輩のカレーを食いたいって言ってるんっすよぉっ!」

って、はんあっ!?


「ちょっと待てぇぇぇぇっ!

 どう言うことだぁぁぁっ、それわぁぁぁっ!」

思わず声を荒げちまったぜぇぃ。


後輩に詳しく話を聞いてみるとだ。

コヤツ…勝手にグルマンとか言うサイトへ俺のカレーのことを書き込んだらしい…何やってんだぁっ、コヤツぅっ!

語りや騙しって炎上したらしいが…この件にグル神が反応。

実際に俺のカレーを彼が食しジャッジすることになったらしい。

って…いやいや、俺に断りも無しに、何してくれとんね、コヤツぅっ!

っと思っているとだ。


「んっででっすねぇ。

 グル神から先輩に許可を頂くように依頼がっすねぇ。

 あぁっとぉ…これ、土産っす」

そう告げて俺が好きな銘柄のビール…ほぅ、プレミアムな限定品か…コヤツにしては、気が効くしゃねぇか。

玄関先にて応対していたが…まぁ、上げてやるのも吝かではないかな、うん。


後輩を招き居れ居間兼寝室へと移動。

布団は押入れへと仕舞っている現在は居間と化しているので座椅子へと収まることに。

そしてグル神のことを詳しく聞いてみると…


「ちょ、ちょっと…待て…

 グル神の本名…もう一度、言ってくれないか?」

思わず聞き返してしまったぜぇっ!

「え?大林(おおばやし) (しん)って名前ですけど?」

キョトンって顔で告げているが…大林って…まさか…大林財団の関係者じぁ…無い、よ、なぁ…


俺は嫌な予感がして、冷や汗、タラリってな。

慌てて自宅のPCを立ち上げる。


会社のホームページへ…いや、親会社のホームページの方が良いか…

親会社の情報を開き、会社オーナー情報ページへと。

親会社の顧問的な立ち位置に大林(おおばやし) (しん)の名前が。

メールアドレスも記載されており、一応は確認が可能となっているようだが…行き成りメールなんぞ恐ろしくてできるかぁぁぁっ!

ってことで、グルマンサイトを別タプにて起動。

此処にグル神こと大林(おおばやし) (しん)のメールアドレスが記載されていたので…両者を比較すると…一致しやがんのっ、コレガぁっ!


い、いやぁ、同じメールアドレスを使っとんのねぇ。

まさかとは思ったが…同一人物で、ほぼ間違いないだろう。


こ、これは…勝手に動かない方が良かろうな。

先ずは部長に…


「せんぱぁ~いっ、もっ、グル神にOKって連絡して良いっすかぁ~」っと間延びした声でな。

っかぁっ!

「こぉんのぉっ、ド阿っ呆ぉぉぉぉっ!

 大林(おおばやし) (しん)様はぁっ、我が社の親会社の顧問的な立ち位置の方だぁぁぁっ!

 粗相があったら大変なことになるからぁっ、勝手なことすんじゃねぇぇぇぇっ!」

思わす叫んじまったぜぇっ、ったくよぉぅ。


それから直ぐに部長へ連絡して報告。

俺と後輩も会社に召集となり…我が社は蜂の巣を突いたような大騒ぎになりましたとさ。

とほほほほほっ。

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