そんなのありか02
部屋の片付けは済んでいる。
そら出汁を取る間は暇なんでな、煮出している間にチョチョイってな。
男の独り暮らしなんてぃのは荷物も少ないかんよぉ。
塵は纏めてからベランダへ。
掃除機なんぞを掛けたら完了って感じか。
ハタキは掛けない。
料理に埃が入っちまわなぁ。
丁寧に雑巾で拭き掃除ってな。
久々に大掃除となっちまったぜぇぃ。
俺のネグラは3DKのコーポってヤツだな。
所詮は地方都市っぅヤツだから家賃が安い訳よ、これが。
そうでなければ、とてもではないが独り身で住まうことなど出来はしねぇだろうよ。
飯も炊けているし皿などの食器の準備もOKだ。
ペットボトルの水やワインにビールも冷蔵庫内にスタンバっている。
何時訪ねて来られても大丈夫ってな。
さてぇっとぉ、来るまで一休みしますかねぇ。
なんて思って椅子に腰掛けたタイミングで…ピィンポォ~ンってな。
いや、タイミングいーねぇ、チミ達ぃ。
思わず溜息を吐いて席を立つ。
「は~い、何方ですかぁ~」
一応は確認な。
なにせ、カレー作っている最中に宗教勧誘や新聞勧誘などがなぁ。
ヤツらってぇ可能性は捨てきれないんでな、って思ってっとぉ。
「せんぱぁ~いっ!俺、俺っすぅ!
只今、到着しやしたぁ~」っう、後輩の声がな。
「分かった、分かったから大声出すなっ!
近所迷惑だろうがっ!」
そう告げながら玄関のドアの鍵を開けて扉を開く。
そこには後輩に案内されて家へと遣って来た部長と彩香嬢の姿も。
まぁ、俺の家を知っている後輩に駅まで2人を迎えに行かせたからでもあるのだが…
「ようこそ、いらっしゃいました」
そう告げて、部長と彩香嬢を招き入れることに。
当然のように後輩も入って来る訳で…ま、良いけどさ。
部長と彩香嬢は玄関へと入ると辺りを見回している。
そんなに珍しいかねぇ?
「ほぉっ、結構、良い所へ住んでいるじゃないかね」っと部長が感心したようにな。
「本当ですね、さり気無く玄関に飾り物がされていて…思っていたのと違う感じです」
そう2人が感心したようにな。
「ああ、建屋が古いし駅から結構離れているから家賃は安いんですよ」
「いや、離れていると言っても15分程度じゃないかね。
それで、この規模なら結構するのではないのかい?」
そんなことを尋ねて来るので家賃を告げると…
「そ、そんなに安いのかねっ!」
驚かれちまったぜぇぃ。
いやな、理由は分からんが…この近辺の家賃は異様に安いんだよなぁ。
賃貸サイトにて探して、この地域の安さに驚いたモンよ。
最初は引き当てた物件が不良債権なのかと思ったが…この地域でヒットする物件が軒並みな。
ま、理由は分からんが、お安く住めるなら良いってな。
彩香嬢も驚いていたが、ま、男独り身には、ちと贅沢ではあるが…
ワンルームのボロアパートにて10年我慢した経験から住む所に妥協はなぁ。
なにせ、隣の目覚まし時計で目が覚めるはテレビの音は響くは…挙句に電話で喋っている内容も筒抜けってか。
プライバシー何それ、美味しいのな世界だったからなぁ~
あれを考えたならば、余り妥協はなぁ。
それを説明したら部長と彩香嬢が納得ってな。
え、後輩?後輩は欠伸しながら部屋を漁ろうとしたから引っ叩いておいたよ。
それから玄関から上がって扉を開きダイニングへな。
サラダは小分けした皿にいれて配膳済みだ。
スプーンや箸もな。
福神漬やラッキョは市販の物を添えてある。
それを見た2人が、ちと恐縮しながら席へと。
後輩は座らずに鍋の方へとフラフラぁ~ってな。
引っ叩いて席へと座らせたがな。
「せんぱぁ~いっ、良い匂いっすぅ。
我慢できないっすよぉ~」
テメェは駄々っ子かぁっ!
彩香嬢も思わず「クスッ」ってな。
部長は呆れ顔で後輩を見ながら…
「今日は無理言って済まんな。
これは手土産だ」
って赤ワインを。
って…おほっ!これって良いヤツじゃん。
これって万までは行かないが…近いレベルのヤツだった筈。
マジっすか!
「矢鷹さん、私はケーキを持って来ましたので、食後に如何でしょう?」
そう告げながら彩香嬢はスイーツをな。
まぁ、催促する訳では無いが…「で、お前は?」ってな。
告げると後輩はキョトンとして…「俺っすかぁ?」だとよ。
まぁ、期待はしとらんがな。
「まぁ良いさ、それより食べますか」
俺は、そう告げて皿に銀斜里をよそいカレーを注ぐ。
「おほっ、良い匂いっすぅ」って手を出すから手を引っ叩いておく。
「先輩、酷いっすぅ」
「あ、ほぉうっ、部長が先だっつぅのっ!」
本当に困ったヤツちゃなぁ。
呆れながら部長へとカレーを配膳し、次に彩香嬢へな。
そして後輩へと渡し、俺へと。
水とジュース、ワインも冷蔵庫から取り出し配膳…
「へ、せんぱぁ~い…これ…カレーっすよねぇ?」
コヤツ…もう食ってやがる…待てんのかねぇ…ふぅ。
取り敢えず無視して…「さて、食べましょう」って2人へ告げるが…
2人は後輩の様子を興味深げに伺っている。
そして後輩はと言うと…
「うへっ!行き成り旨味が!って、辛っ!、けど…美味っ!
なんっすかぁっ、コレッ!
味がぁっ、味が変化するっすよぉっ!」
って言いながらガツガツと…
そんな後輩を見ていた2人は顔を見合わせ…徐にカレーをスプーンで掬い口へと。
口内へと含んだ途端に2人が俺へと視線を向ける。
驚いたように口を開き…
「甘い、の、だが…ね」
「フルーティな…スィティな風味が…」
困惑顔の2人の顔が更に驚愕顔に。
「なっ!なんだねっ、この奥深い旨味はっ!」
「様々な美味しさが口の中に溢れますぅ」
っと、その後に、更に驚愕顔に。
「辛い、辛いが…土台、下地がシッカリしているので辛味が引き立つ…な」
「辛いですけど…旨味に包まれて辛過ぎることは無いですわぁ。
むしろ…とっても美味しいですぅ」
2人が味わうように匙を進めて行くのを見て、俺も食べようと…
「先輩っ!お代わりっすぅ!」
テメッ、このヤロっ!
俺はスプーンを置くと呆れたように後輩を見た後でカレーを注いでやる。
その後は、ワインを嗜みつつカレーを頂くことに。
流石に部長の土産では無く、俺が用意した方のワインだがな。
彩香嬢は1杯で足りたようだが、部長と俺はお代わりした。
が、後輩は3杯も食べやがったよ。
ま、お陰で、彩香嬢のお土産スイーツは食えなくなっていたが…
自業自得だ、バカめがっ!