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そんなのありか01

猛暑が続いた夏が終わり…漸く残暑も癒えた秋の休日。

この夏は一大プロジェクトの佳境にて残業続き。

休日出勤も当然のように行なうこととなった訳だが…猛暑に遣られ体調を崩す者が多数。

当然、その皺寄せは倒れなかった者へと襲い掛かる訳で…

そんなデスマーチを潜り抜けて得られた久々の3連休である。


とは、言え…独り者の俺には予定など…な。

恋人も居ない俺は特定の趣味も無い訳で…ま、侘しい独り身ってヤツだな。


そんな俺だが食べるのは大好きで食べ歩きなどを行なったりもする訳だが…

この度は時たま気紛れで作る男の手料理ってぇヤツにチャレンジしてみることに。


いやな、今までも時々は自炊ってぇヤツを行なってはいたんだよ、うん。


そんでカレーっうヤツが一番のレパートリーっう感じなんだが…打ち上げの席で後輩に飲んだ勢いでなぁ。


「ん、俺の作るカレーも中々のモンだぞ。

 これだけは人に食わしても自慢できる一品ってヤツだな」


なんて事を…


いや、な、宴席での酔った勢いっうヤツだったんだが…


「ほぉぅ…矢鷹君には、そんな趣味があったのかね。

 それは一度、御相伴にあやかりたいものだな」


っう合いの手が、行き成り割り込んで来て…


「って!ぶ、部長ぉぅ!」


後輩が驚いて声を上げた訳よ。

っか、俺も驚いたがな。


いやな、この度のプロジェクトは会社としても業績を左右すると言われる程の一大プロジェクトで全社注目だった訳で…

そんな大プロジェクトの成功にて設けられた宴席には係長、課長どころか部長まで出席していたんだよな、これが。


まぁ…上司勢からの宴会費援助が得られたこともあり、俺達も不満は無かった訳だが…

まさか、行き成り話に割り込んで来られるとは…流石に思っていなかった訳で…


俺は戸惑いながらも部長に応えることにな。

流石に宴席の場とはいえ、上司を無視する訳にもいかねぇさ。


「ええ、手慰(てなぐさ)み程度の男の手料理って感じですが…」


そう応えると部長が興味深げに告げて来る。


「ふぅむ、だが…社内でも食通として噂される君が作る料理には、ちょっと興味があるねぇ」

なんてことを顎先を擦りながら告げて来る。


「ははは、いやいや、食べる方は色々と店を廻るなんて感じで誰でもですねぇ」

「ふむ、そんな物かね?

 だが…舌の肥えた君が人に食べさせられるレベルっと言うのは…ちと、興味があるねぇ」

「そっすよ、先輩ぃっ!

 俺も食べてみたいっすっ!」


えーいっ!、テメェは黙ってろぉぃっ!

要らぬことを曰う後輩をチト睨め付つつ…


「いやいや、とても部長が興味をですねぇ…」っていると…


「あらぁっ、矢鷹先輩って料理されるんですかぁ?」

入社2年目の後輩である彩香嬢がな。


結構な美貌の持ち主で受付嬢で通る程だが…中々に即戦力でもある有能な後輩でもある。

若手連中からの注目№1っう感じだな。


そんな彩香嬢からお声が掛かれば、中年独身男である俺でもドキってなぁ。


「い、いや…ま、遊び程度っうか…勝手気儘な男の適当手料理ってぇ感じの料理くらいしか作れねぇがよ」


戸惑いつつ告げると…


「へぇ~…意外です…、私ぃ、食べてみたいかも…」


いや、酔っ払ってる?チミィ。


「うむ、私も大変興味あるな、それは」

「先輩ぃっ、俺も、俺もっすぅ!」


テメェはぁっダァとれぇぃっ!


って、ま、こんなことがあってなぁ…結局ね部長と彩香嬢に押し負けて、俺の手料理を振舞う嵌めにな。

ついでに後輩も参加ってな。

はいはい、わーった、わぁーったて感じで…くそっ!


まぁ…そんな訳で…久々の連休を調理で過す嵌めになった訳よ、これが。


いや、な。

カレー程度は適当に作ってタッタと食わせば良いんだろーが…それでは俺の矜持がなぁ。

いやっ、矜持も何も完全な素人料理ではあるんだが…俺は自分の作るカレーには拘りがあるんだよ、うん。

ってもな、市販のルーを使用する程度の拘りではあるんだが…

俺はカレーっうのは出汁が命って思ってるんだよ。

そう、カレーは汁物ってな。

だからな、念入りに出汁を取ることから始めなければならないって思ってんだなぁ、うん。


先ずは河童橋にて購入して来た小型の寸胴へタップリの水を張る。

この際の水は2ℓペットボトルを使用だな。

水にも拘らねぇとなぁ。


そして、鶏ガラ、豚骨、豚足、牛骨、牛テール、牛筋、ベーコンなどを処理して鍋へ。

これを一日掛けてジックリと煮出す。


まぁ、骨類などは投入前に圧力鍋にて煮込んだ後で投入だがな。

これで骨の髄までトロトロに煮出すことができるってぇ訳だ。


この煮込んだ汁から形の残った肉類を取り出しタッパーへ入れて冷蔵庫に保存。

後で鍋へと戻し具材とする訳だが…この煮込んだトロントロッな肉が、くぅぅぅっ~


そして骨は捨てる訳だが、砕けた骨などは濾さないと出汁に残って味を落としちまう。

だから丁寧に濾して取り除く手間は惜しんではならない。


そしてな、次に投入するのはタップリの鰹節と昆布、干し海老に干し貝柱ってな。

以前に鯖節を入れたことがあるが…うん、あれは、大失敗だった。

入れるなら鰹節だな、うん。


今回は鯛の半身が骨付きで売っていたのがゲット出来た。

コイツを塩して灰汁抜きした後でお湯でサッと湯がきお湯を捨てた後でジックリと煮出した煮汁も投入してやる。

身?身は今晩のオカズとして刺身だな。

吸い物にも少々化けてはいるんだが…美味しゅう御座いましたってか。


肉、魚介って来たら、次は野菜ってな。

ただな、今は具を投入する段階では無い訳よ、これが。

つまり、何が言いたいのかってぇと、野菜出汁を取るって言いたい訳なんさ。


良く二日目のカレーって言うが…具材が溶けて馴染んで美味いってか?

ならば、初めからそれを目指せば良くね?ってな。

ってぇ訳でぇ、人参、ジャガイモ、玉葱、大蒜、生姜、キャベツをジューサーにて野菜ジュース状にしてから出汁へと。

この時にモアモアと上部へと青臭い灰汁が浮き上がって来るから、これを取り去ることが必須となる。

そうしないと青臭い出汁となり台無しだからなぁ。

以前の失敗談ってな。

あれは…酷かったぁ。


そんな失敗は犯さないように気を付けながら出汁を取る。


お次は秋の果物である梨と林檎、更に干しマンゴーと干し葡萄をジューサーに掛けてから出汁へと投入。

無論、浮き上がる灰汁は逃さない。


此処まで行って、漸くベースとなる出汁が出来上がる訳だな、うん。


此処からが、いよいよカレーとしての作成と相成る訳で…

具材となるカレー用の牛肉、豚肉、鶏肉とミンチ等を香草などで軽く味付けしながら焼いて行く。

ジックリと飴色になるまで炒めた玉葱。

ジャガイモ、人参、玉葱、各種茸にズッキーニと茄子などの野菜。

トマトの微塵切りも投入。

ボイルされた海老や貝も投入だな。


牛乳、生クリーム、バター、ヨーグルト、蜂蜜、白と赤のワインを赤を多めに、ブランデーもな。

まぁ、バターやヨーグルト、生クリームなんてぇのは出汁の量からしたら微々たるものだが…本当の隠し味程度ってなぁ。

梅干と珈琲にチョコも入れたが…全体の1%未満に過ぎない感じかねぇ。

ただ…この隠し味程度が、何気に味へと深みをなぁ。

ココナッツミルクの缶なんてぇのもあったので投入してみたが…どうなるやら。

無論、灰汁を掬うのは忘れんぜぇってな。


具の投入も終わり仕上げの段階となる訳だが…以前にスパイスキットなる物を購入してチャレンジしたが…泉に砂を投げ入れたが如くってな。

全く味が付かないんでやんの。

アレには、ほとほと参ったねぇ、まったくなぁ…ふぅ。


故に市販のカレールーって訳だ。

辛口のカレールーを5個ほど各種メーカーより抜粋して購入。

寸胴へ大量に造られた汁がカレーへとクラスチェンジして行く訳で…

ふぅ、漸く出来たってな。

丸々3日掛かって一万以上の金が飛んで行った訳だが…うん、男の道楽料理ってヤツだな。

主婦が聞いたら激怒しそうな遊び心溢れる料理である。


今日の夕方に家へ招待してあるのだが…

そろそろ来る頃かねぇ。

まぁ、間に合ったようで良かったってぇところか。

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