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(4)回想

 カナッペと愛称があるから親しくしていたように思えるが、、僕の記憶の中の彼女の印象は女とみていなかったようだ。よく遊んだのは低学年までだし、そのあとは同級生のその他大勢の一人しか認識していた。だから大人しいなどと言ってしまった。


 しかし、目の前にいるラバースーツを着た彼女は女の色香が漂っていた。しかも黒光りするラバーに包まれたボディラインはセクシーだった。一体彼女になにがあったというのだろうか?


 「まあ私のあだ名を覚えてくれたわけなの? でも、あの時の私から変わったといえば農家の仕事をしていることかな。ほら、父を亡くしたし他に家業を就く家族がいなかったからね。だから、こうして鬱憤を晴らしているわけなのよ」


 鬱憤? その言葉を聞いて僕はなぜラバーになるのか不思議でならなかった。まあ、田舎でこんな格好が出来るのは夜中しかないのかもしれなかった。もっともラバーなんて暑苦しいそうな服を着て街中を歩くのも存在しそうになかったけど。


 「それって、やっぱりドロボー対策なの?」


 「そうよ! そうでしょ、若い女が夜中に一人で歩くのは結構恐ろしいのよ。こうして人間じゃなくなったような格好をすれば全然平気なのよ。それに私の性癖を発露できるしね」


 発露? やっぱりカナッペは変態なんかじゃないかと思ってしまった。そんな人であって人でないような服装をするのが気持ちいいなんていう神経がよくわからなかった。それにしてもなんで気持ちいいんだろうか、ラバーは?


 そんなことを思っていると彼女が変な事を言い出した。


 「そうだ! 鴨下くんも着てみない?」


 「着るって、そのラバーの?」


 「そうよ! いいでしょ! あなた中学校の時メタリックヒーローに憧れていなかった? いまこそ実現できるわよ!」


 そう言われ中学校の時に僕が言った事を思い出した。たしかタイトルを忘れたけどなんとかという特撮ヒーローものの話題をしたことがたびたびあったんだ。でもカナッペとした話ではないし・・・なんで覚えているんだ彼女は?


 「そうだけど・・・よく覚えていたな、それを」


 「そうよ! わたしも好きだったから! だから話に入りたかったけど、ほら中学校の時って女の子からそんな話をするなんて憚られるような雰囲気だったじゃないの? もどかしかったわよ、あのヒーローって黒光りの衣装ってよかったじゃないのよ」


 カナッペの言葉にあることを思い出した。そのヒーローには女がいたことを。その女が主人公が窮地に陥った時に助けに来た時の格好は・・・ラバースーツだった!


 「もしかして、僕も君と同じような格好をしろと?」


 「ええ、そうよ。わたしも男の人のラバー姿をみたかったところだから」


 目の前のガスマスクをしたラバー女は幼さが残る記憶にある声で話していたが、僕からすれば異星人のようにしか思えなかった。

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