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俺と彼女と宇宙輸送艦セドナ  作者: 川越トーマ
9/42

泥酔

「飲んでるか?ジェームス。酒が進んでないみたいじゃないか」

「いや、楽しくやってるよ」

『そうだろうとも』

「まったく、うらやましいぜ、この野郎」

「そのとーり」

 俺がジェームスに絡んでいると、なぜかマリオも同調してきた。

 マリオはすでに顔が真っ赤で酒臭かった。

 きっと、俺も顔が赤くて酒臭いんだろうなとぼんやりと思った。

「リラクゼーション・ルームに娯楽室まであるそうじゃないか」

 俺が本格的に絡み始める前に、マリオが航宙母艦ヴァルキュリアの艦内設備の話を始めた。

「えっ、やっぱりそっち?」

 俺はまたしても毒気を抜かれてしまった。

「何だ一体?」

 ジェームスは何を言われているのか、ちっともわからないようだった。

 恐らく彼のことだ、自分の乗る艦の武装や性能は把握していても福利厚生の設備は確認していないだろう。

「航宙母艦ヴァルキュリアの艦内設備の話だ」

「そうなのか?」

 マリオに詰め寄られたジェームスは助けを求めるように俺に視線を向けた。

「自分の艦のことぐらい把握しとけよ」

 マリオが偉そうに突っ込みを入れていたが、きっとこいつは普通の軍人なら把握している自分の乗艦の武装は把握していないに違いなかった。

「ところで勤務内容は内示されたのか?」

 俺は知りたかった話題をジェームスに振った。

 俺は携帯情報端末で知り合いの配属先まではチェックしていたが、担当職務までは確認していなかった。

 ジェームスは理解の範疇内の話題になったことにホッとした様子を見せた。

「無人戦闘機のオペレーターらしい」

『まったく俺のやりたかった仕事だ。どこまでもうらやましい奴!』

「いいよなぁ……まあ、飲め!」

 俺は半分に減っていたジェームスの水割りのグラスにウィスキーの原液を注ぎ込んだ。

「お前たちは?」

 ジェームスは目を白黒させながら聞いてきた。

 多分なんで絡まれているのか理解できないのだろう。

「輸送艦セドナで操艦担当だ」

 俺はそう言うと、また、ウィスキーの水割りをあおった。

「俺は同じ輸送艦で火器担当だ。文句あるか?」

 マリオもすっかり酔っている様だった。

「兵装も、しょぼいんだろうな」

 マリオが質問するような口調で俺に視線を向けてきた。

 案の定、ジェームスと違って、こいつはそっち方面をまるで調べていないらしい。

 火器担当のくせにとんでもない奴だ。

「ああ、迎撃ミサイルとパルスレーザー迎撃システムだけだ」

 俺は普通に軍人として、自分の乗艦の武装や性能はきちんとチェックしていた。

「電磁誘導砲は?」

「そんなものは装備されていない」

「だいたいミサイルとか撃つ機会あるのか?」

「知るもんか」

「乗組員何人だっけ?」

「二〇人以下だ」

「ええ? じゃあ、女性士官は? きれいなお姉さんは?」

「知らん、きっと、おっさんばかりだ」

 最初、ジェームスに絡んでいた俺たちだったが、気がつくと二人のぼやき漫才になっていた。

 そしていつの間にかジェームスは逃げていた。

 ジェームスだけではない、ビアンカもいなくなった。

 酔っぱらってくだを巻く俺たちの周りから同期たちは遠ざかっていった。

「地球人のくそったれ!」

「宇宙輸送艦セドナ万歳!」

「俺の青春を返しやがれ!」

 意味不明の悪態をマリオと一緒に大声で怒鳴っていた記憶はある。

 最後はウィスキーをラッパ飲みしていたような気もする。

 どうも記憶があいまいだが、俺は最後はジェームスに支えられて学生寮に帰ったらしい。

「だいじょうぶか? ダイスケ」

 ジェームスに声をかけられた記憶が断片的に残っている。

「だいじょぶ、だいじょぶ、じぇーむす、きいつけてかえれよ!」

 気をつけて帰るも何も、ジェームスの部屋は俺とマリオの部屋の斜め向かいだった。

「ダイスケくん、大丈夫? 水でも飲む?」

 どこかのタイミングで、ビアンカの優しい声を聴いたような気がしたが、夢なのか、現実なのか、ただの妄想だったのか、残念ながら記憶がはっきりしなかった。

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