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俺と彼女と宇宙輸送艦セドナ  作者: 川越トーマ
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エピローグ

 俺が意識を取り戻した時には、ウルジーナの内部はすっかり静かになっていた。

 地球艦隊による体当たり攻撃は終わったようだ。

 リサさんは、俺の腕の中で軽く目を閉じ童女のような表情を浮かべていた。

「リサさん」

 リサさんは俺の声に反応した。

「リサさん、怪我はありませんか?」

 リサさんは黒い大きな瞳を開き、ゆっくりと俺の方に視線を向けた。

「ダイスケくん……」

 リサさんはぼんやりとした表情でしばらく俺を見つめ、俺に抱きしめられていることに気付くと頬を染めた。

「地球艦隊は? ウルジーナはどうなったの?」

「体当たり攻撃は終わったみたいです。ここを出ましょう」

 俺はリサさんの手を引いて避難場所の倉庫を出た。


 気密が確保されていたため、俺たちはヘルメットを外し、宇宙服を脱いだ。

 中央制御室は何事もなかったかのように無傷だった。

 無重力下での運用を想定しているため、椅子などは床に固定してあるし、小物が机の上に置いてあるということもなかった。

 そのため、地球艦隊の体当たり攻撃による衝撃でも何かが散乱したりひっくり返ったりといったことはなかったようだ。

 先ほど地球艦隊を映し出していた正面の大型モニターも無事だった。

 今は地球艦隊を映しておらず、代わりに大きな青い星を映していた。

「これが地球……」

 俺は間近に迫っている美しい星を呆然と眺めた。

 火星もテラフォーミングの結果、青く美しい星になっていたが、正直、火星よりも美しいと思った。

「リサさん、ウルジーナの軌道はどうなっているかわかりますか?」

「確認するわ。ダイスケくんも天体観測のデータを確認して」

「わかりました」

 俺たちは天体観測による現在の位置と、ウルジーナの速度や進路から、ウルジーナの軌道予測を行った。

 ここまできて、結局、地球に衝突しますというのでは救われない。俺たちは何度も観測と計算をやり直した。

「奇跡だわ」

「そうですね」

 ウルジーナは、地球の周回軌道に乗っていた。

 月の軌道の内側だった。

 コンピューターシミュレーションの結果、少なくとも今後、数十年間、月や地球に衝突する心配はない。

「私たち助かったのね」

「リサさんのおかげです」

 リサさんは黒い瞳に涙をにじませながら、輝く笑顔を俺に向けた。

「いいえ、ダイスケくんのおかげよ」

 俺は心臓を締め付けられ、リサさんを抱きしめたい衝動にかられた。

「リサさん」

「はい?」

「さっき、もしこれで生き残れたらって、何か言いかけましたよね」

「えっ……」

「続きは自分に言わせてください」

 俺は軽く息を吸い込んで、リサさんの目をまっすぐに見つめた。

 今回の航海で俺は生きていく上で必要な勇気を何度も奮い起こした。

 だから、これくらいの勇気を奮い起こすことは何でもないはずだった。

 それでも俺は決死の思いだった。

 リサさんは期待と不安がないまぜになった目で黙って俺の目を見返していた。

「付き合ってください」

 リサさんは、黙って視線を下に向けると、ゆっくりと俺の胸にしがみついた。

「ばか」

 小さくつぶやくリサさんのことを俺は優しく抱きしめた。

最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。

次回作は、もっと面白いものをアップできるように頑張ります。

ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

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