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俺と彼女と宇宙輸送艦セドナ  作者: 川越トーマ
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敵ステルス艦

「宇宙巡航艦バステトの生存者捜索作業はこれにて打ち切りとする」

 イワノフ艦長の親友であるトゥエット艦長と思しき遺体は残念ながら発見できなかった。

 俺とマリオが見つけた三人分の遺体も含め合計五人分の遺体を小型艇に積んで、俺たちは、かつて宇宙巡航艦バステトだったものを後にした。

 次に俺たちは大破した敵のステルス艦に近づくと、やはり副長を小型艇に残して電磁誘導砲の砲弾が穿った穴からステルス艦の残骸の中に入っていった。

「こっちは、あまり焼けただれてはいないな」

 敵のステルス艦の損害状況はバステトとはだいぶ異なっていた。

「弾薬庫が誘爆しなかったのかな?」

「積んでいたミサイルをほとんど吐き出した後だったのかもな」

 ここでも俺とマリオがペアになり、艦内を捜索していた。

「でも、こっちは電磁誘導砲の砲弾が中央制御室を直撃している。絶望だな。これは……」

 俺は生存者はおろか遺体さえ見つからないだろうと思った。

「ダイスケ、あそこ」

 ステルス艦の中央制御室は大半が砲弾の貫通した空洞になっていたが、ごく一部破壊を免れている場所があった。

 そこに白い簡易宇宙服の後姿が見えた。

 しかし、背中に大きな金属片が刺さっており、明らかに気密は破られていた。

 生きているわけがない。

「敵の遺体も収容すべきだろうか……」

 俺は思わずつぶやいた。

「敵の遺体など回収する必要はない」

 通信機のスイッチを切っていなかったので、クラウゼン副長が聞きとがめ、冷たい声を投げかけてきた。

「ダイスケ、あれ、今、動いた」

「えっ?」

 見ると簡易宇宙服がかすかに動いていた。

「確認しよう」

「ダイスケ、宇宙ゾンビかもしれない。気を付けろ」

「どんなB級映画だ」

 近寄ると、背中に金属片の刺さった簡易宇宙服の下に、もう一つの簡易宇宙服があった。

 ふたりが折り重なるように倒れていたのだ。

 上の方が下になった方を庇っているようにも見えた。

 微かに動いているのは下になった方だった。

「マリオ、生きてるぞ……女だ」

 上になった方を引きはがすと、下になった方の簡易宇宙服に包まれた豊かな胸が微かに上下しているのが分かった。

 ヘルメットの中の顔は、目を閉じていたが色白できれいな卵型の輪郭、髪の毛は色の薄い金髪だった。

「きれいな人だ」

 マリオが思わずうっとりとした口調でつぶやいた。

「こちら、ダテ。生存者一名を発見しました。これより回収します」

 捜索活動の結果、生存者は敵ステルス艦で発見されたこの一名だけだった。

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