別れのメール
「最悪だな」
翌朝、眼を覚ますことができたのは、普段の規則正しい生活の賜物というよりも、単に二日酔いで気持ちが悪く、寝ていられなかったからだった。
「ああ、頭が痛い」
「きれいにお別れをしたかったのに」
俺は罪悪感に囚われていた。
「『立つ鳥跡を濁しまくり』だな」
「そんなことわざはないけど。その通りだ」
俺とマリオが二日酔いでのたうっている間に、ジェームスは配属先に向かったらしい。
斜め向かいの部屋はもぬけのからだった。
俺は士官学校内部のネットワークを使って、ジェームスやビアンカたちに慌てておわびのメールを送った。
配属先の艦艇に乗ってしまうと連絡がつかなくなる。
洒落た文章を考えている暇はなかった。
『昨日は酔っぱらって御迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした! 帰ったら、この埋め合わせはきっとします。だから皆さんお元気で! 必ず、また会いましょう』
すぐにジェームスから返信があった。
『気にするな。お互いまた会う機会があったら、おごってくれ』
『喜んで』
俺は間髪を入れずに返事を返した。
『大丈夫。気にしてないよ。航海の土産話を楽しみにしています』
ビアンカからは彼女らしい、優しい返事があった。
もっとも彼女は誰に対しても優しい。
俺はビアンカに対しては必死であれこれ返事の文面を考えたが、結局一言だけこう返した。
『ありがとう』