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俺と彼女と宇宙輸送艦セドナ  作者: 川越トーマ
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過去の栄光

 漆黒の宇宙空間を回遊魚のようなフォルムの宇宙船が圧倒的な質量を感じさせながら航行していた。

 画面の下にテロップで『火星艦隊旗艦・超弩級宇宙戦艦ラクシュミー』と表示され、無音のはずの宇宙空間に勇ましい音楽が鳴り響いた。

「地球艦隊確認、数およそ七〇、相対接近中。艦隊戦に備えて減速しています」

「艦艇数は我が艦隊のおよそ三倍か」

「砲雷撃戦、用意!」

 緊迫したやり取りが聞こえてきた。

 映っているのは相変わらず艦隊旗艦のラクシュミーだけで声の主は登場しなかった。

 演出としてはいまひとつだが軍の広報部が製作した記録映画であり、フィクションではないので仕方なかった。

「敵旗艦の位置は?」

「旗艦と思われる敵大型航宙母艦は艦隊の中央です」

 正面遥か彼方に小さな光の点が横一列に展開していた。

「別動隊はいないだろうな」

「先行するステルス偵察艦によれば、別動隊はいない模様」

「敵の航宙母艦が無人攻撃機の展開を開始するまでの推定時間、約六〇〇秒」

「ロドリゲス提督は間に合うかな」


 視点が切り替わり、横一列に並ぶ地球艦隊を上から見下ろしていた。

 先ほどのカメラとはスピードが異なるらしく、小さな光の点がみるみる大きくなり、豆粒大に見えてきた。

「敵艦隊、射程に入ります。五、四、三、二……」

「撃て!」

 腹のそこに響くような若々しい号令にあわせて、こちら側から大量の光の矢が発射され敵艦隊の中央部へと吸い込まれていった。

 一瞬遅れて閃光が煌めき、暗黒の宇宙空間に爆発の花が開いた。

 地球艦隊はみるみる近づき、豆粒大だったものが巨大なサメのようなフォルムの戦闘艦艇へと一瞬のうちに変貌した。

 そして火星の艦艇は地球艦隊の中央付近を猛スピードで通り抜けた。


「別働隊による攻撃、成功です。敵航宙母艦、爆発! 無人攻撃機は発進していません。ロドリゲス提督率いる高速機動艦隊は無傷のまま反転、第二次の攻撃に移行します」

 火星艦隊の別働隊による一撃離脱戦法の前に地球艦隊はなす術もなかった。

「全艦全速! 航宙母艦ヴァルキュリアに告げる、無人攻撃機、急速展開、各艦は射程に入り次第、砲雷撃を開始せよ!」


 再び映像が切り替わり、火星艦隊の攻撃を受けて混乱する地球艦隊の姿が映し出された。

 鉄と鉛とプラスティックの破片を煙のようにまき散らしながら、ある艦ははらわたをえぐられ、また、ある艦はバラバラの残骸となり、航行の意思を失い慣性の法則に従って漂っていた。

 破壊を免れた艦も艦列を乱し、効率的な反撃を組織だって行ってはいなかった。


 それは今まで何度も各種メディアで公開され、我々火星人民が血をたぎらせた映像だった。

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