男とか女とか
物心つくまえから遊んでいた近所の幼馴染みとか、家族ぐるみで付き合いのある家の子どもとかが、たまたま軒並み男ばっかりだった。
自然と、子どもの頃はライダーごっことか戦隊ごっことか、あと野球とかサッカーとかして遊んでいた。
服を泥だらけにして遊んでくるから、親は可愛らしいヒラヒラ系の服を着せるのを諦めるようになり、自分でも木登りとかしやすい服を好んで着た。
髪の毛を結んでもらうより早く外に遊びにいきたいタイプだったので、そのうち髪型もショートで定着。
中学に上がるとき、ベリーショートの髪と自分の言動がセーラー服に似合わなすぎてちょっとどうしようかとは思ったが、だからといって今さらキャラ変えするのも照れ臭いっていうか、十年以上続けてきたキャラを変えるのは難しいって言うか... で、今に至る。
しかし、未来の自分はどこかでキャラ変えを達成したらしい。二十歳に設定した自分の容姿は、背中まで届く長い髪の女だった。
背はあんまり伸びなかったけど、第二次成長はそれなりに進み、胸とか腰回りとかに肉がついていて、なんだかしっかり女の人で、自分でもびっくりした。
自分でびっくりしたくらいだから、俺を男だと思っていたらしい勇と翔は、まぁびっくりして当然だろうなー。
「...な、」
しばらく固まっていた翔が、絞り出すように声を出した。
「な?」
「な、、、な、、、」
今までしれっとした顔でいろいろ仕切ってた翔がこれだけパニクってるのはちょっと面白い。
「七?」
「なんで言わなかった!?」
やっと言えたようだ。
「いやー、間違われるの慣れてたし、特に宣言する流れにもならなかったし。訊かれたら答えたよ?」
「訊かんやろ普通っ。お前やって俺らに性別確認せんかったやんか。」
そりゃそうだな。
勇に言われて納得するが、しかしこちらから自分の性別を宣言する機会ってあんまりないのも事実。
「まぁいいじゃん。別に男だろうが女だろうが大差ないだろ?」
「いや... まぁ、ええと...それにしても、印象変わりすぎやないか? 」
呆れる勇と、何かにハッと気がつく翔。
「あー! じゃあお前の中学行ったときのあのトイレ! あれってーー女子トイレか...」
言ってガックリと俯く。
「ーーあぁ、そう... デスネ... 」
「... 最悪... 」
思ってもみないところで男子の尊厳を傷つけてしまっていたらしい。
翔が再起動するまで10分ほどかかった。
なんとか気を取り直してもらって、宿に入った。
二部屋とって、それぞれ買ってきた物や着てきたジャージとかをアイテムボックスにしまったりして。
森の中を歩き、ギルド登録、買い物とこちらの世界に来て数時間か経ったわけで、ようやく日が暮れ始めた。
「じーさんは、日が暮れた頃にゲートからあっちに人が出てきたって言ってたよな。」
翔が言う。
男子部屋に集まって、今後の相談である。
「つまり、今くらいの時間か。」
俺は窓の外を見て言う。
「ああ。バリアを張ったのは今日だから、日暮れから動き出すとしたら相手はゲートが封鎖されたことにまだ気づいていないはずだ。張り込んでいれば現れるかもしれない。」
「せやけど、今から向かったらまた一時間はかかるで? 遅いんちゃう?」
「一回行った場所なら転移ができるから。今すぐ行けるか?」
翔に言われて、俺と勇はこくりと頷く。
防具はつけっぱなしだった。
「アイツはどうする?」
立ち上がった俺に、翔が訊ねた。
「クロちゃん? 寝てたから部屋に置いてきちゃったけど。」
「まぁいいか、いなくても。」
危険察知能力はだいぶ助かったが、クロちゃん連れているとまた俺が戦えない可能性が出てくる。いや、まぁ手に抱いてなくていいようにポーチ買ったんだけど。
「よし、出発だ。」