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初めての異世界へ

ここからやっと、前作と変わってきます。

どうぞ宜しくお願いします。

 俺達は、Y県のとある河川敷に来ていた。

 この辺りにゲートがあるはずだと言う。

 しかし...

「えーと。まずはそれを探すんだよな?」

 俺は途方に暮れながら言った。

「そんなん言われてもなぁ... 」

 ぐるりとあたりを見回して、勇がぼやく。

「な... 河川敷って、こんなだってわかってなかった...」

 ため息をつく翔。


 とにかくすげー広い。

 加えて、背丈より高い草が生えてるゾーンがいっぱい。

 さらに、うちらゲートってどんな感じか見たことない。

 あれ? 無理ゲーじゃない?

 

「座標ではこの辺なんだけどなぁ...ヘビとか出てきたら嫌だな... 」

 言いながら、翔は草をかき分けて進んでいきーー

「うわ!」

「どうした翔!?」

 ヘビか? ゲートか?

 声のした方へ走ると。


 ガサガサと邪魔な草が、唐突に手に当たらなくなった。

 同時に、うまく形容できないけど、微妙な違和感。

 空気の違い... みたいなものだろうか。

 走ってきた勢いで数歩進んで、立ち止まる。


 そこは、森の中だった。


 振り返っても森だ。

 そして。

「え... 」

「動物の骨... みたいだな。」

 翔が、嫌そうにそれらを避けながら近づいてきた。


 辺りには、小さな白いものが散乱していた。

 所々に鳥の羽とかも。

 最初の翔の悲鳴の理由はこれか。


「ゲートから迷い混んだ小動物が、何かにやられた... ?」

と、俺。

「何かって... モンスターとか、っちゅーことか。」

 後から追い付いてきた勇が言う。

「それはわかんねーけど。ここが... 異世界か。」

 翔はぐるりと辺りを見回した。

「どこが入り口だったんだ? 見当たらないけど、このまま帰れないとかないよな... ?」

 言いながら、俺は自分が来た方へ手を伸ばしながら数歩戻る。

「... わ。」

 あるところで、空中に手の先が消えた。

「見えへんだけってことか。ほな、これどないしよ?」

「空間干渉っつーのを練習したら、バリア?みたいのが張れるようになった。ゲートになってる空間の上からバリアを張れば、行き来できないようになると思う。ただ、その場に自分がついてないと持続時間は一日くらい、強度はよくわかんね。金づちで叩いたくらいなら壊れなかったけど。」

「それやってみるん?」

「失踪事件の方がよくわかんねーうちにやって、犯人に警戒されたらマズイかなとも思ってたんだけど... この様子だと、万が一人間が迷い混んだら危ないしな。」

 言いながら、翔はゲートのあたりを手で探った。

「出来そう?」

「おう。けど、ちょっと大きさ把握しないといけないから待ってて。」

 俺の問いに、ゲートのの方を見たまま翔が答える。

「わかった、俺らは敵が来んか周り見てるわ。」


 とは言ってもーー

 静かだ。

 動物の死骸が散乱しているのはゲートの周囲三メートルほど。

 死骸と言っても骨と羽やら毛やらで可食部は綺麗に無くなっているので、凄惨さはそれほどではない。

 ただ、静かさと相まって現実感がなく、中途半端な悪夢でも見ているような...

 とりあえず、モンスターとかの気配はないかなぁ、と少し歩いてみると。

「ん?」

 かさりと、小さな音が聞こえた気がして立ち止まった。

 低木の陰を覗き込む。と。


 凄惨さはないとか、中途半端とか考えちゃってた自分を恥じた。


 そこにいたのは、後ろ足が千切れかけた黒ウサギだった。

 いや、ウサギの死体、か。

 数秒見つめても、呼吸しているようには見えない。

 血も固まっているし、毛並みに生気も感じられない。

 けど、じゃあさっき音がしたのは?

 痛ましさに顔をしかめながら、恐る恐る更に覗き込む。

 すると。


 血で固まって動かない体の下に、ふるふると震える黒い毛玉。

 もう一匹いるのか。しかも生きてる。

 俺はそっと手を伸ばした。

「シャー... 」

 弱々しいながらもウサギらしからぬ威嚇をするその黒い毛玉は、片耳と前足に怪我を負っていた。

 怪我は膿んできている。

 治るかな... ?

 俺はそっと毛玉を左手に乗せ、右手をかざして力を込めた。

 治癒は練習済みだ。傷が治るようイメージすると、手のひらが温かくなって少し発光する。

「何してん?」

 呆れたような声が背後でして、俺はびくりと肩を震わせた。

「う、ウサギが怪我を... 」

「いやウサギとちゃうやろ。おかん、角生えてるやん。」

「やっぱり、お母さんかなぁ。子どもを守って死んじゃったのかなぁ...」

 俺は治癒を続けながら、動かないそちらを見る。


 小さい毛玉を体の下から拾い上げたとき、少し動かしてしまって、最初見えなかった頭部が見えるようになっていた。

 そしてその額には、やたら鋭利な角が生えていた。

 その白い角が血にまみれているのは、自分の血ではなくてきっと敵の血だ。そんな感じがする。

 

 ウサギに角は、ないよなぁ...


「話をそらすなや。それ、助けて大丈夫な生き物なんか?」

 う。

「だって、たぶん子どもだよ? そんで死にそうなんだよ? 可哀想じゃん... 」

「そーやって考えなしに行動しとると翔に怒られるで?」

 翔がお母さんか先生みたいな扱いになっている。

「俺がなんだって?」

 タイミングよく現れるし。

「あ、せんせー、葵くんが勝手にペット拾うてますー。」

 悪ノリな感じに勇が言いつける。

「ペットじゃねーし。」

 とりあえず反論するがーー

「そっちはそうは思ってないみたいだけど... 」

 呆れ果てた表情で言う翔の視線の先を負うと。


 どうやらすっかり回復したらしい黒い毛玉が、俺の左手の親指にスリスリしていた。


 何これ、すげー可愛い。


 

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