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裏切り者


 翌日、学校へ行く途中で、奈々に会わなかった。


 そして、机の中には、


「ウソつき。裏切り者。そんなヤツに居場所はない。 一同」


という紙が置いてあった。


 「居場所はない」…か。随分と嫌われちゃったな…。でも、もうこれで、クラブに縛られない!自分の思うように動ける!


 ひどいことを書かれたわりに、私は余裕の笑みを浮かべていた。

 このときは、まだよくわかっていなかった。「裏切り者」のレッテルが何を意味するのか…


 清々しい気分になったのもつかの間、すぐに異変に気付いた。


 まず、奈々に話しかけようとしても無視される。そして、元メンバーの人かられ違いざまに「嘘つき」「裏切り者」「バカ」と言われるようになった。


 最初はその程度だったけど、そのうち面倒くさいことを全部押し付けてくるようになった。しかもわざと妨害して、困っている私を見て喜び、さらにほかのグループまで便乗しくる。


 することがだんだんヒートアップしていった。


 ある時は、階段の最上段から突き落とされた。とっさに手すりをつかんだから助かったけど、あのまま落ちていたら…背筋がゾッとする。そして、あのとき私の背中を押した奈々の引きつった顔と、横で愉快そうに笑った真華の顔も―鮮明に覚えている。


 LINEの書き込みは、学校で言われること以上にひどかった。


「死ね」

「消えろ」

「うざい」

「自殺するんじゃない?」


 怖くて怖くて、愛用していたスマホも、ほとんど手を付けられなくなった。


 いじめが始まったときは、それこそ毎晩、布団の中で泣きじゃくっていた。学校をどうしたら休めるかも考えた。つらさから逃れようとするあまり、自分の髪の毛を抜く日々が続いた。



 でも、今。


 クラスの全員が私をいじめるターゲットとして見ていても、何も感じなくなっていた。「これが当たり前。なにもされない方が不思議。」というくらいだった。


 親には……言えなかった。先生にも言えなかった。どう言ったらいいかわからないし、こんなかっこ悪いこと言えるわけがない。第一、大人に言ったら、余計に大事になってしまう。私さえ我慢していれば、穏便に済ませられる。


 地域のボランティアのおばさんにも、「どうかしたの?」と、声をかけられた。幾分、沈んだ顔になっていることが見えたのだろう。でも、うつむいたまま「別に。」と素っ気ない態度をとってしまった。

 

 本当は、とてもうれしかったのに。私のことを気遣ってくれる人がいて、生きていていいんだと思わせてくれたのに。


 あんな態度をとったのは、人前で泣きたくないという、自分のプライドのせいだ。素直になれたら、どんなにいいか…



 こんな時、心愛ならどうするんだろう?考えても全く分からない。


 すぐに先生に言うとか?いや、そんなかっこ悪いことはしないだろう。


 自力で解決…とか?どうしたらいいか、それこそわからない。

 「わからないことは、質問しなさい。」っていうから、本人に訊くのが一番だろう。でも、私の質問になんて答えてくれるのかな?


この間までの行動を思い出しているうちに、ふと気が付いた。


心愛とはあまり話さないけど、態度は、変えていないような…?

いじめるでもなく、はやし立てるわけでもなく、当たらず触らずにもなっていない。


それなら、質問に答えてくれるかもしれない。


よし、明日訊いてみよう!



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