悩みと決断
あのことが頭から離れず、今日はろくに授業も聞けなかった。家に帰ってもまだ部屋で悶々と悩んでいる。
-予想外だった。いや、あると思っていた方がよかったかもしれない。ファンクラブに入るってことは、それなりの出費を覚悟するべきだったんだ。
私の寂しい経済状態じゃ、ストラップがやっとだし、親にはファンクラブに入っていることを一言も言ってないし…何より、大っ嫌いなドレス浴衣を着なくちゃいけないことが、屈辱的だ。
悩んでいると、ふと誰かの顔が浮かんできた。誰だろう?
ショートボブの髪に、薄ピンクのメガネの同級生。
心愛、本田心愛だ。どこのグループにも入っていないし、グループの勧誘がきても、「よくわからない」の一言で払いのけていた。
しかも、あのリーダーの勧誘も払いのけていた。かなりマイペースで、絶対人に流されない。そういう人。
私とのつながりも薄いのに、なんで、今思い出したのかな?
…うらやましい。初めて心愛に対してそう思った。どのグループにも属さないのは危険だと思っていたけど、実は違ったのかもしれない。好きでもないグループに無理やり付き合う方がもっと危ない。
それなら、一人でいる方が気楽だといえるかもしれない。
いろいろ悩んだ結果、私は週末にみんなと一緒に行かなかった。
正直、怖かった。リーダーや、凛などのメンバーの人に何かされるかもしれない。そして、奈々から「友達じゃない」と言われるかもしれない。
それでも…それでも、私はそうした。もう…疲れちゃったから。自分に対して嘘をつくことに…
この時、ちゃんと話してから辞めればよかった、と後から何度も思った。でも、この時はこれが精一杯だった。行かないという決定が、とても恐ろしかったから。




