後編
翌々日の登校日。車を出そうとする芽衣を断り、歩いて学校へ行く。芽衣は門まで付いてきた。全く過保護なんだから!
「鈴音様は少しの距離でも、歩けない―って仰るから、学校の遠足も、現地まで車でお送りしたんですよ」
うわ、鈴音最悪。
有紀の席には、花が飾られていた。改めてみると、ショックが大きい。
「鈴音ちゃん。もう体は大丈夫?」
いつも鈴音と一緒にいる、一条さんと二条さんが寄ってきた。
「ええ、もうすっかり大丈夫ですわ」
鈴音の口調をまねして答える。私は有紀の机を見る。
「無事だったのは、鈴音ちゃんでよかった」
一条さんがそういったのが、ひっかかってしまう。
「私が声をかけたから有紀は…」
これは鈴音の言葉。
朝の会では、有紀に黙とうをささげた。葬式は、有紀のお母さんの実家でひっそりと行われたと先生が言っていた。お母さんって兄弟いたよな。あまり話に出た事はないけれど。
学校は一時間で終わり、すぐに下校時刻となる。図書室にも行きたかったけれど、もう借りても返せないからね。転校の事は、敢えて皆には秘密。
「ねえ、一条さん、二条さん。今日放課後、お暇かしら?私の家に来ない?」
一条さんと二条さんは困ったように顔を見合わせる。
「今日はちょっと…」
「私も、これから習い事で」
二人がうそをついているようにも見える。実は鈴音って嫌われていたっけ。
私は招待状を二人に見せた。二人はまた顔を見合わせた。
「本当なの、それ?」
「なんでも、いいの?」
「ええ、もちろん」
「じゃ、行く!」
「私も」
「ねえ、クラスのみんなにこれ配るの手伝って下さらない?皆学校の近くにまだいるでしょう。他のクラスの友達に配ってもいいわ」
私と、一条さん、二条さんで、クラスメイト全員と、他のクラスの一部に招待状を配った。
「え、本当なの?」
「あの、ケチで金持ちな鈴音が?」
「騙されているのか」
「いや、騙すなら、クラス全員を招待しないでしょう」」
皆が口々に噂している。本人に聞こえていますよー。
招待状にはこう書いたの。
「うちにあるものみんな、あげる」
午後二時、招待状を持った人達が、どんどん集まってきた。私は門を開けて、皆を出迎えた。
「どうぞ、入って、そして、なんでも持って行って!」
「わ、お菓子の生る木だ!」
「うん、それももいじゃって、届かなかったら、そこの脚立を使ってね」
りんごやみかんや柿の木もあるから、全部もいじゃってと言いたい所だけど、あいにく今は夏でまだ実がならない。あ、おくらならあるな。無農薬なんだから!
家の中にも入って。タンスの中のお洋服も、本棚の本も、冷蔵庫の食材も、キッチン用品も、テレビもパソコンも。小さな弟妹には、小さい頃遊んでいたおもちゃもあるわよ。
押さないで、物はたくさんあるわ。
おやつの時間よね。ピザを焼こうか、クッキーやケーキもあるのよ。皆で食べましょう。
ゲームもしましょう。テレビゲームもいいけれど、家じゅう全部を使って、かくれんぼなんかも楽しいわ。ボールも投げ放題よ。
だって、明日には全てがなくなる。今日くらいは好き放題に、皆で騒ぎましょう。近所から苦情が来たら、近所の人にも何でも差し上げればいいんだわ。
私の家の物、みんな持って行って頂戴。理由は後で話すわ。
文字数よりも内容で切りました。
読んでくださってありがとうございました。




