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前編

曲をイメージした短編だったはずがだいぶ長いです。

 「オーホホホホ」

廊下まで聞こえる高笑いの声。

(また、鈴音あいつか)

私はため息をつきながら、4年3組の教室のドアを開けた。

「私、夏休みに世界一周のクルージングに行ってきますのよ。私と一緒に行かれる方は、半額でご招待しますわ。あら、梁瀬やなせさんも一緒にどうかしら?」

「え、私は…」

半額でもあり得ない値段だ。誰が払えるか。

「あら、ごめんなさいね。梁瀬さんはお母さましかいらっしゃらないものね。半額でも大変ですわね。オーホホホ」

私は鈴音を無視して、席に着いた。

「いいなあ、鈴音さん、素敵ね」

「あら、一条さん、二条さんもどうかしら」

いつも鈴音と一緒にいる、一条さんと二条さん。仲良さそうだけど、学校外ではあまり付き合わないという話を聞いた事がある。

「ちょっとお母さんに聞いてみる」

「ええ、是非」

鈴音は自慢の縦ロールヘアを揺らしながら、ニヤリと笑った。


 綾小路鈴音あやのこうじすずね、私のお父さんは、綾小路が経営する会社に殺された。お父さんは、綾小路の会社の一つを任されていた。しかし仕事のミスをきっかけに、お父さんにあり得ない量の仕事を振って、過労死に追い込んだ。綾小路は過労死とは無関係だと私達を無視している。許せない、綾小路。


 私は、放課後はよく図書室へ行っている。うちの学校の図書室は、他の小学校に比べてとても大きいらしい。地域の人にも開放されていて、放課後は色んな年齢の人が図書室を利用している。

 先ずは新刊コーナと。最近はまっている本は、「異世界小学生」というライトノベル。普通の男子小学生が、異世界に転生して大活躍する話。いいな転生、私も異世界に行ってみたいと思いながら、新刊を楽しみにしている。

「あ、新刊出ている」

手に取ろうとした瞬間、他の人の手が新刊をつかんでいた。しわのあるぷっくりとした手、私のおばあちゃんはだいぶ前に亡くなっているけれど、生きていたらそのくらいの年齢のおばちゃんだ。へえ、大人でもこういうの読むんだ。おばちゃんとは思えない動きで、貸出手続きをされてしまった。なんかあのおばちゃん、見た事ある。ああ、鈴音のお手伝いさんだったかな。まあいいか、他の本を読もう。


 明日から夏休み。と言ってもお母さんはずっと仕事だから、一人で留守番も飽きるよね。まあ、お母さん一生懸命働いてくれるのだから、仕方ないか。

 今日は、仕事が終わったお母さんと待ち合わせて、買い物。その帰り道に、

プップー

黒塗りの外車が、クラクションを鳴らして近づいてきた。

「あら、梁瀬さん、お買い物?私これからクルージングですのよ」

後部座席の窓が開いて、鈴音が話しかけてきた。

「わざわざ、自慢しに来たの?」

「お嬢様、そろそろ出発の時間です」

夏なのに黒いスーツを着た運転手が言った。

「そうね、では楽しい夏休みを。オーホホホ」

外車が発進ししようとした時、後ろのトラックが突っ込んできた。トラックは変な方向に曲がってきて、歩道にいる私達までくる・・・・・


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