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とある旅人の話 -洋-

作者: てっしーー

冬の夜、とある村の屋敷に一人の旅人が訪れました。

吹雪で往生して困っていたのです。旅人は泊めてもらおうと戸を叩きますが、いっこうに反応がありません。どうしたものかいよいよ困り果てていると戸は開き、夜遅いのに出てきたのは二人の幼い姉妹でした。

「この吹雪でまいってます。しのぎに一晩よろしいでしょうか」

「いいよ!ね?」「うん」

「他の家の方は…?」

「いいからいいから♪」

家の人が他に出てこないのに気が引けながらも外にいることもできず、旅人は中に入ることにしました。

「何かお話して」暖炉をつけてお姉さんが言います。

「何かお詩して」パンとスープをぐらつきながら持ってきた妹が言います。

旅をしていればいろいろな体験をします。旅人は二人にいろいろなお話をしてあげました。各地で吟われ聞いた詩を唄いました。

外はビュービューと吹雪が舞い、窓がカタカタ鳴ります。けれど暖炉のパチパチと燃える暖かい前で話す合間に食べ物をかじりながら、旅人は二人にお話とお歌を聞かせてあげます。



ついつい話込んでしまい、外は明るくなりはじめていました。

旅人はついつい話すのに夢中になってしまい、朝を迎えてしまったのです。

子供たちに夜なべさせてしまった、こりゃいけないと思い、「すまないねぇ」と謝ると、

「いいよ、楽しかったから」

「面白くてずっと聞いてちゃった」

「はは、そうかい」

「ありがとう」「ありがとう」

「いえいえ…」


ガチャ…


扉が開き、部屋に誰かが入ってきました。

少し歳のある夫婦でした。

「あんた、いったい…」

「これはどうも失礼しています。娘さん方には断ったのですが…吹雪で昨夜は泊めさせていただきました。暖かい暖炉と食事をありがとうございます」

「泊まったって…」

「いけないわ、早く暖めないと!」

そう言って奥さまは'暖炉に火をつけました'。

おや?

旅人は不思議に思いました。身体がとても冷えています。

食事は自分が持っていた水と携帯食糧でした。

優しい夫婦のおかげで旅人は改めて暖かい暖炉と食事をいただきました。


夫婦は旅人に自分たちの娘の話をしました。少し前までここには二人の姉妹がいたそうです。

けれど流行り病で亡くなっていました。

「活発で、外で遊ぶのが好きな娘たちだったよ…」

「そうですか…」

「ありがとうね…」

「いえ…」

旅人は気づいていました。もし、話を朝までせずに眠ってしまったりしていたら…と。

この家の暖炉は少しクセがあり、この家の人でないとつけられなかったそうです。


「こちらこそ…ありがとう」


それは、冬の暖かい出来事でした。

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