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7/15

-黄金の月ー 7

それから父の体の回復は目に見えてしてきた、強い薬を投与している分回復は著しい


その反面、薬の副作用が見えた・・・


父の髪は抜け始め薄くなり始めた、それでも父が元気であれば髪の毛ぐらいは大した問題じゃない、


そう思った・・・・




だけど・・少しショックな事は・・・




父は人の認識が出来ていないようだった・・家族の事を思い出せない・・


私が娘である事すら覚えていない・・話は出来るようになったけど、私に対して




「いつも・・すみま・・せん」と敬語で話す・・・




とても、とても辛かった・・・でも、この世に父が存在しいつの日かこの症状も治るんだと信じた・・・




先生が言っていた薬の副作用とはこういう事だったのか・・・それでも家族の愛があればきっとお父さんはいつものお父さんに戻れるはず、「泣いてなんていられない・・・」そう思った




私は今迄通り、いつも通り学校の帰りには自分の受診を兼ねてお見舞いに行った、そこでいつも通り


話をしながら時間を過ごした、父はあまり語ることなく微笑んで話を聞いてくれた、だけど体が辛いのだろう直ぐに寝てしまう事も多かった




昏睡状態から、目があけれて片言でも言葉を言えて、認識が出来なくても私と居てくれる


父が愛おしい気持ちでいっぱいだった




数日後・・




ひとみは学校が終わると花屋に寄った、父の部屋の花を変えようと思っての事だった


花とかに興味のある父ではなかったけど、少しでも部屋も気持ちも明るい雰囲気にしたいと思ってた




「お父さん、早く良くなってね」




病室へ着くと父は眠っていた、ここ数日間、癌の痛みが激しくて薬を多めにしたと主治医から聞かされていた


次の日も次の日もお見舞いに行くと父は眠っていた、日中は何度か起きることもあるようだけど私が行くときは寝ていた、それでも父の顔を見れればそれで良かった




翌日・・




いつものように病室へ向かい父へただいまの挨拶をして花の水を変えようと花瓶を手に取った・・・




その日はとても穏やかな日で不思議と時間の流れがゆっくりと感じていた・・








『ひ・・とみ・・・』








『ぇっ・・?』






花瓶を持ったまま振り返った






『お父さん・・ひとみの事わかるの!?』







『あぁ・・わかるとも・・・』






慌てて花瓶を置いた






『お父さん、お父さん』





まともに話すことも出来なかった、娘の名前すら発する事の無かった父が・・・


我慢していた涙がとめどなく溢れ出た・・・・




父は良くなってきている、癌にも負けてない、神様・・本当に本当にありがとう・・・




痩せ細った手で縋りつくひとみの頭を弱弱しくなでる幸弘(父)







『今まで苦労かけたな・・・』






『全然苦労なんかじゃない、お父さんが元気になる事ばかり考えてた』






口から出る言葉は文章にならないほど沢山な想いが溢れ出た






『ひとみ・・・ちゃんと通院しているか・・・』





『うん、だって同じ病院なんだもん!大丈夫だよ!』





『そうか・・同じ病院なのか・・それなら・・安心だ・・』





『私の事よりお父さんは自分の身体の事を考えて』





『ひとみ・・父さん・・・もう無理そうだよ・・ごめんな・・』





『何言ってるの!お父さん!大丈夫だよ!これからもっと元気になるから そんなこと言わないで!』





『・・・父さんはお母さんと知り合えて、こんなに可愛い子供たちに出会えて幸せな人生だったよ・・・ひとみ、よく聞いて欲しい・・・』





『ぅん・・』





涙が止まらなかった・・・





『末っ子で甘えん坊なひとみ・・・体が弱くて・・それでも頑張るひとみ・・・父さんはひとみが大切で心配ならない・・・愛しているよ・・・ひとみ・・・家族を大事にな・・・』





『うん!うん!お父さんお願いだからそんな言葉言うの辞めて!最期じゃない無いんだから!』





父は言葉を発することなくにっこりと笑みを見せ、静かに目を閉じた・・・











『ぇっ・・・?お父さん・・ちょっと!お父さん!』









父の体を揺らしても頬を軽くたたいても無反応だった、急いでナースコール押した・・・





看護婦さんが急いで病室に来た・・父に縋る私を引き離し懸命な処置を始めた





『直ぐに先生を呼んで!』





『は・・はい・・』





慌ててナースステーションに行き伝えた・・




「先生が来たらきっと回復するはず・・絶対そうだ」




病室に戻ると直ぐに先生が来た、そして父の救命に入った・・・





『遠藤さん!分かりますか?娘さん!ひとみさんが待ってますよ!頑張れ!』





父は医者と看護婦に囲まれ声を掛けられていた








『お父さん!死んじゃ嫌だ------!』







無意識に大きな声を出していた・・・






『ほら!聞こえるか!遠藤さん!ひとみさんの声が聞こえるかい!』




















父は必死の救命が及ばず・・・息を引き取った・・・







『くそっ!・・・』







主治医は体を震わせながら拳を握りしていた・・・








『えっ・・・嘘でしょ・・・嘘よ・・・先生・・・お父さんはお父さんは大丈夫なんでしょ?寝ているだけだよね・・・』








『・・・』






『だって、さっき、ひとみって呼んだもん・・・話もしてたもん・・・』





『ねえ・・起きて、起きてお父さん・・・起きてよ・・お父さん・・・』






『すまん・・お父さんは・・・よく頑張ったと思うよ・・・』







『・・・先生・・お父さん治して・・、寝ているだけなの・・ひとみわかるもん・・お願いお願い先生』







主治医の白衣に縋りついた・・・






『お願い・・お願い・・せん・・せ・・ぃ・・・』








『・・・』








崩れ落ちるように体の力が抜け・・・意識が薄れていった・・・












































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