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-黄金の月ー 6

私は学校が終わると毎日父の病室へ足を運んだ・・・




幸弘(父)の意識が戻ったとはいえ、まだ安定することなく会話など出来る状態ではなかった


倒れた時に打った頭への衝撃も相当体に負担を掛けているとのことだった・・・




目を覚ました後の父は薄ら目を開けては何を追うように目だけを追うようなしぐさを見せた


父の会社の人達が来て事故の時の状況を聞かされた・・・


「何故そんなことになるまで無理をしていたのだろう・・・」そんな事だけが頭の中を駆け巡った・・・




幾ら話しかけても父の反応は薄く、私が誰なのかすら理解していないのではないか・・・と感じるほどだった




自分の受診日に主治医聞いた・・・




『先生、お父さんの意識が戻ったのは凄く感謝してます・・だけど・・お父さんは・・・全然元気じゃなくて・・私の事すら・・・』




『うん・・お父さんはただの怪我ではないんだ、今、体に負担を掛ける様な薬の投与も治療も良くないんだ・・私を信じてくれ出来る限りの努力はする』




先生は私の気持ちを工面していた・・・それが痛いほど理解できた・・・




でも、その時の私は気持ちを抑えることが出来なかった・・・




『前のお父さんに元に戻してお願い先生!お願い・・せんせぃ・・・お願いだから・・・うっ・・うっうっ・・・』




堪えていた涙が止まらなかった・・・




『頭の怪我を治して、そして体の病気をしっかり治すんだ。わかるね?君のお父さんも望んでこんな風になった訳じゃない、今、怪我や病気と一生懸命戦っているんだ、だから君の気持ちもわかるけどここはお父さんを信じて、私達医者を信じて欲しい』




『・・・はぃ・・・』




「はい」としか言いようがなかった・・・だって・・私には何もできることがない・・


先生が言う事は兄が言ったことと同じ・・・




「だけど・・だけど・・・お父さん・・・」





2週間後




父の怪我の状態が良くなりはじめ病魔との戦いが始まろうとしていた


状態は怪我が治りつつあっても状態は左程変わりなかった・・・





「ガラッ」





『ただいま!お父さんひとみだよ-!』




ひとみは父がいつ元気になってもいいようにいつも自分を崩さないように振る舞った


学校であった出来事や母、兄、姉の事沢山の話をした、そしていつも就寝時間になるまで病室に居た




そんなひとみの姿を見て、幸人(兄)は見舞いに行ったのにも関わらず声を掛けずに病室に背を向けたことが何度もあった・・・




「お父さん・・お父さん・・・」




元気に振る舞ってるとはいえ、まだ中学生・・・ひとみのすすり泣く声が聞こえた・・・


まだまだ父親に甘えたいのだろう・・・


絶対的な存在なのだろう・・・最近のひとみは家でも元気に振る舞い涙を見せる事がなくなった・・・




「あいつ・・我慢してるんだな・・・」








父は強い薬の投与が始まった・・・


その薬は病気に対してはとても効果のある物だと聞いた、その分副作用が強くて色んな障害が起きる可能性があると先生は言った・・




父の状態は完全に良くなることはなかったが少しずつ声を出せるようになってきた・・


言葉としては分かりずらいものではあったけど、私は必死に父が何を伝えようとしているのか、何を欲しているのかをわかろうとした・・・




「病は気から」・・なんかのTVでそんな言葉を聞いたことがある、医療で出来ることをしてくれている以上家族が出来るのはこの「気」の想いしかない。そう思った・・




それから数日間が経つと父は首を動かし人影を追うようになった


指も少し動かす仕草を見せた、私はお父さんが回復している、そう思い嬉しくてしかなかった




『お父さん、ひとみだよ。わかる?』




「・・・・」




『まだ無理か(苦笑)・・・お父さんあのね、今日学校でさ・・・』




ひとみはいつも通り学校の出来事を父に伝えながら鞄を置いた




『ひとみ、小さな頃お父さんのお嫁さんになるのが夢だったの(笑))覚えている?(笑)』




笑顔で話しかけるひとみの顔に父の視線が向いていた




「お父さん聞こえているのかな?伝わっているかな・・」




視線を向ける父に対しひとみはそう思った・・




『だから、お父さん早く良くなって、ひとみをお嫁さんにしてね』




父と子供が結婚なんて出来ないのは知っている・・でも、そうしたいくらい私はお父さんが大事な存在だった・・





心なしか父の顔が笑みを浮かべているように感じた・・・




『お父さん--!』




私は甘えるように父の体に顔をくっつけた




「ガラッ」




病室のドアが急に開いた、私は慌てて父の体から離れた




『おっ今日も来ているね。お父さんもさぞかし嬉しいだろうね(笑)』




主治医の先生だった




『そうかな・・・でも今日は少し反応がありました!』




『どんな反応だい?』




『笑いました』




『本当かい?だとしら凄い事だよ』




『うん!お父さんは回復してます!』




『きっと、お父さんに家族の想いが伝わっているんだろうね。医者と家族が力を合わせれば医学を超えることもある、これからもお父さんのために応援してあげてね』




『はい』




『病気と戦っているお父さんには生きたいと言う気持が大事だ。だからお父さんに届くように接する事はとても良い事だしそれも家族からの治療でもあるんだよ』




『家族で父を支えます!』




『頼むね。それとこれ・・』




主治医は薬を手渡してきた




『うん?』




『これは君の薬だよ、薬局で困っていたぞ(笑)』




『あ-・・処方箋出してそのままここに来ちゃった(苦笑)』




『薬局でも君が常連さんだから分かっていて僕に連絡をよこしてね(笑)』




『ごめんなさい(笑)』




『お父さんの体も大事だけど、君は自分の体の事もちゃんと考えないとダメだよ・・お父さん・・いつも君を大事にしていただろう・・だから、君はそこも考えないとダメだよ』




『・・・はぃ・・』




『お父さん元気になったら怒られるんだからな(笑)』




『はい(#^.^#)』




『ほら、もう消灯だよ』




『本当だ、じゃあお父さんまた明日ね!』





ひとみは少し和やかな気持ちになっていた




回復の兆しを見せる父、一生懸命に治療してくれる先生・・・





「へこんでる場合じゃないね・・・頑張らないと!」






ひとみは自宅へ向かった・・・


















































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